肌の乾燥ケアといえば秋と冬に意識が集中しがちで、夏には手を抜いていることはありませんか。
「肌は健康状態を表します」と言う臨床内科専門医で正木クリニック(大阪市生野区)の正木初美院長は、「夏こそ、気づきにくい『隠れ乾燥』をケアする必要があります。放置すると肌や粘膜の保護機能が弱くなり、秋にダメージを受けやすくなります」と話します。詳しいお話を聞いてみました。
紫外線、汗、エアコンの風が3大原因
正木医師はまず、「夏の乾燥の主な原因は、『紫外線』、『汗』、『エアコンの風』です」と言い、それぞれへの注意を次のように説明します。
(1)紫外線
紫外線の量は一年のうちに6~9月にピークを迎え、皮ふのバリア機能に大きなダメージを与えます。すると皮ふの内部の水分が蒸発しやすくなるため、より乾燥が進みます。
(2)汗
夏は気温と湿度が高いため、皮ふの乾燥が気にならないばかりか、潤っていると感じます。ですが、実は汗が蒸発するときに、水分や保湿成分が一緒に失われて皮ふの乾燥をまねいています。
(3)エアコンの風
エアコンから吹き出る風は乾燥しているので、室内の空気は乾いています。また、乾燥した風を受ける皮ふも水分を奪われています。
どれも思い当たります。こうした乾燥を放っておくと、皮ふはどう変化するのでしょうか。
「皮ふ細胞の再生のメカニズムがうまく働かず、シワやシミができやすくなる、外部からの異物の侵入をはばむ皮ふのバリア機能の低下で敏感肌になる、かゆみが出やすくなる、などになります。
また、のどの粘膜も乾燥します。すると、ウイルスや異物を付着して排除する粘膜の機能が弱まり、炎症を起こしやすくなります。腫れや痛みの原因になり、風邪や感染症にかかりやすくなります」と正木医師。
エアコンの風が吹く室内には汗を拭いてから入る
では、どのように隠れ乾燥対策をすればいいのでしょうか。正木医師はこうアドバイスをします。
「保湿剤を使ったケアをすることはもちろんですが、水分をこまめに補給して体内から潤うように心がけましょう。このとき、白湯(さゆ)か常温の飲料を取りましょう。冷たい飲料は、胃腸などの内臓を冷やして血液の流れを悪化させます。すると、全身に水分や栄養分が行き渡らない、代謝が悪化するなど、乾燥につながります。
また、外出時は、日焼け止めを塗る、紫外線カットのメガネ、帽子、日傘のすべてを着用しましょう。『帽子をかぶっているから日傘はささない』ということでは紫外線予防にはなりません。顔だけではなく、日光を浴びる部位はすべて紫外線対策をする必要があります。
さらに、汗対策も重要です。かいたという自覚がなくても、夏はじわっと汗は出ています。
汗を放置すると、塩分が皮ふに残ったままとなって潤いを奪います。また、湿気で皮ふの表面の雑菌が増殖し、においが発生するもとにもなります。さらに、汗をかいたままエアコンの風を受けると、皮ふの水分や保湿成分を失います。面倒に思ってつい怠りがちですが、室内に入る前には必ず汗を拭くようにしましょう。
日ごろのケア時にも、夏はベタベタするからと化粧水だけにして、乳液やクリームなどを塗るのを嫌がる人も多いようです。私は必ずクリームなどを重ねて乾燥を防ぐようにしています」
最後に、正木医師は乾燥対策の目安となる湿度について、次のアドバイスを加えます。
「生活する中で最適な湿度は、40~60%と言われています。これ以上高くなると、アレルギー症状や皮ふ疾患などの原因となるダニやカビなどが繁殖しやすく、またこれ以下でも、皮ふの乾燥や粘膜のバリア機能の低下などが起こります。保湿のケアには、毎日の湿度に注目して適切に行ってください」
夏避けられない紫外線や汗、暑さ対策のつもりのエアコンの風が、隠れ乾燥を引き起こすということです。皮ふや粘膜のダメージを防ぐためには、自分がいる環境の紫外線と湿度に注意し、紫外線カットと汗対策、エアコンの風の予防に手を抜くことなく、常に心がける必要がありそうです。
(取材・文 岩田なつき/ユンブル)