胃潰瘍ってどんな病気? /第4回・最終回

「ピロリ菌」Q&A…検査するべき年代は?【専門医が答える】

「ピロリ菌」Q&A…検査するべき年代は?【専門医が答える】

「胃潰瘍ってどんな病気?」と題し、症状や原因、病院での検査法や治療法について、『胃は歳をとらない』(集英社新書)の著者で消化器病専門医・指導医、内科指導医の三輪洋人(みわ・ひろと)医師に、連載にてお話しを聞いています。これまでの記事は文末のリンクを参照してください。

前回(第3回)の「ピロリ菌検査と除菌で胃潰瘍が予防できる」で、胃潰瘍の原因のひとつ、ピロリ菌の実態について紹介したところ、読者から複数の質問が寄せられました。ピロリ菌は、胃潰瘍や胃がんの原因になるとのことで、今回は読者の質問に三輪医師に答えていただきました。

Q1 48歳女性自営業 ピロリ菌検査を一度もしたことがないのですが、するべきですか? 何歳以上なら「必ずするべき」といった年代の指標はありますか?

A1 三輪医師:ピロリ菌がいるのといないのでは、胃の病気へのかかりやすさは非常に大きな差があることがわかっています。ピロリ菌がいると、慢性胃炎、胃潰瘍、胃がん、悪性リンパ腫、ポリープなど、あらゆる胃の病気にかかる確率が高くなります。

そのため、できれば若いうちにピロリ菌の有無を調べて、もしも陽性ならば除菌治療を受けましょう。除菌治療の方法については前回(第3回)に詳しくお話ししましたが、まずは抗生物質(抗菌薬)2種類と胃酸の分泌を抑える薬1種を7日間服用することです。それで除菌ができなかった場合は、抗生物質の1種類を別の薬に変えて、さらに7日間服用します。これで多くの人の治療が完了します。

「何歳ぐらいまでにするべきか」という点は、医師の間で、中学生の時に調べる、高校生の時に調べる、成人式のときに調べるなどの意見があります。そこで各自治体では試行錯誤をしながら、早期の診断、治療を目指しています。

ピロリの検査と除菌治療は早ければ早いほど、その後の胃の状態にとって有効といえます。一般的には、40歳までに除菌するとその後に胃がんが発生する可能性は激減することが知られています。

そしてやはり胃炎のダメージは少ないに越したことはないので、目安として20歳ぐらいまでに調べることを推奨しています。

ご質問者のご年齢では少し遅いのですが、それでも必ずピロリ菌の検査を受けてください。陽性であった場合、ご年齢からして除菌後に完全に胃がんにならないわけではないですが、ある程度のリスクは軽減できるでしょう。

Q2 45歳男性会社員:ピロリ菌検査を5年前に初めてして陰性でした。もうピロリ菌の検査はしなくていいですか?

A2:まず、これまでピロリ菌に「未感染の場合」は、もう検査をする必要はありません。胃潰瘍や胃がんにかかるリスクは相当に低いと考えられます。

ただし、過去に「ピロリ菌が陽性で除菌治療を受けて成功した場合」は、除菌までに胃の粘膜が長期的に荒らされた影響があるので、定期的な検査を受けることが推奨されます。

さらに、「以前に感染があり、治療しなくてもいなくなった場合(偶然の除菌、自然消失)」は、胃潰瘍ほか胃の病気にかかるリスクがとても高いため、毎年の検査が欠かせません。

Q3 47歳男性公務員:人間ドックでピロリ菌が見つかり、除菌しました。息子23歳、娘21歳も検査をさせたほうがいいでしょうか? 妻46歳は検査をしていないので不明です。

A3:質問者はピロリ菌陽性であったので、子どもさんが5歳未満の乳幼児期に親から口移しで食べ物を与えられたりした場合に感染している可能性はあります。

A1でお話ししたように、ピロリ菌の検査は20歳までに、遅くとも30歳までに検査をすることが推奨されます。その根拠は、「ピロリ菌の除菌による胃がんの予防率は、20~30歳代ではほぼ100%近く可能」という調査結果があるからです。40代でまだ検査を受けていないお母さんといっしょに、できるだけ早めに検査を受けましょう。

Q4 52歳女性会社経営:ピロリ菌が見つかって除菌治療し、陰性になりました。再感染することはありますか。胃潰瘍や胃がんの心配はないと考えていいのでしょうか?

A4:成人の場合、免疫機能が発達しているため、ピロリ菌の除菌後に再び感染することはほとんどないとされています。

また、ピロリ菌の除菌後に52歳での除菌治療の場合は、胃潰瘍になる確率はかなり少なくなったと思われます。胃がんの場合は、リスクから解放されるには少し除菌の年代が遅かったかもしれませんが、軽減はされたと考えられます。

Q5 36歳女性会社員:ピロリ菌の除菌には胃酸を抑える薬を服用するとのことですが、食べたものの消化が悪くはならないのですか?

A5:胃酸の分泌が増えると、胃食道逆流症や機能性ディスペプシアの引き金になるなど、胃の健康にとって悪い面が多くなります。一方で、胃酸の分泌が減少することによる健康面のデメリットはとくにありません。

実際に、ピロリ菌に感染している場合や胃を手術した場合など、胃酸が出にくくなることが多いのですが、食べものは問題なく消化できています。

聞き手によるまとめ

ピロリ菌は30歳代までに除菌しておくと、胃潰瘍や胃がんにかかる確率がほぼなくなるというのは朗報です。すべての回答を通して、胃潰瘍や、また胃がんの対策としても、ピロリ菌検査を早く受けて、陽性なら除菌治療をする必要があることがわかりました。近い将来の胃の健康のために、ぜひ試みたいものです。

(構成・文 品川 緑/ユンブル

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