『カルト宗教やめました。』たもさんインタビュー・第1回

幸せか不幸かは自分が決める。カルト2世だった私が気付いたこと

幸せか不幸かは自分が決める。カルト2世だった私が気付いたこと

10歳の頃に母親が「エホバの証人」に入信。2世として25年間エホバの証人の教えを信じてきたものの、ひとり息子が病気になったことで35歳の時に脱会を決意したマンガ家のたもさん(40)。前作の『カルト宗教信じてました。』(彩図社)に引き続き、脱退した“その後”を描いた『カルト宗教やめました。』(同)をこのほど上梓しました。

マンガを描こうと思った経緯や反響、家族との関係、信者以外の“一般の人たち”との距離の取り方について、たもさんに話を聞きました。全3回。

とにかくマンガを描きたかった

『カルト宗教やめました。』より=彩図社提供、以下同。

『カルト宗教やめました。』より=彩図社提供、以下同。

——前作も含めて、やめたとはいえ25年間、どっぷりと漬かっていた宗教のことを描くのは勇気がいったと思います。それでもマンガという作品にしようとしたのはなぜですか?

たもさん:やっぱり一番の理由はとにかくマンガを描きたかったんです。マンガだったら、フィクションでもファンタジーでも、自分が影響を受けた本や映画とか日常での気付きとか、いずれにしろ“自分の引き出し”から描かないといけないと思うのですが、宗教をやめてすぐの自分って、本当に何もなかったんです。ほかはすべて捨ててきてしまったから何もないわと思って。本当にカルトしかなかった。

確かに、子供も夫もいるし、家族のエッセイとかでもよかったんですけど、すでにいろいろな人が面白いものをいっぱい描いているから、あえて私が描くことはないかなと。それに、自分の生活をエッセイで描くにしても、どうしてもカルトは避けて通れないっていう気持ちもありました。

そうしたら、それを題材にして無駄にしたと思ってた25年間を取材させてもらったみたいな気持ちで、話題に変えて昇華させたほうがいいのかなと思いました。

『カルト宗教信じてました。』より(同)

『カルト宗教信じてました。』より

——反響はいかがでしたか? また、マンガを描くにあたり意識したことはありますか?

たもさん:前作のときは「私も元信者でした」とか「家族がそうでした」という感想がきたのですが、今回は「私はたもさんの宗教とは違いますが、入っていました」というような、宗教が違う人や宗教に入っていなくても親子関係で悩んでいる人からも感想がきました。前回と比べて読者層が広がったのかなと思いました。

身内のことも描いているのですが、母とかまだ在籍している人もいます。今さら彼女たちの居場所をなくしてしまうことは描けないのでそこは気を付けました。(宗教は)母の居場所だし、それを奪う気持ちはないので。

200313wotopi-0353

「やめたら滅ぼされる」の呪い

——「(エホバを)やめたら滅ぼされる」という描写がありました。その言葉が“呪い”になって、やめたくてもやめられない人もいるのではと思いました。宗教に限らず「こんなことをしたらバチが当たる」「不幸になったのは○○をしたせいだ」などという脅しや呪いの言葉は世の中にあふれていて、時には人の気持ちや行動を縛ってしまうことがある。たもさんは“呪い”にとらわれ続けたりはしなかったですか?

たもさん:宗教をやめたばかりの時はその言葉が枷(かせ)になってしまって「幸せにならなければ」「夫に愛されなきゃ」「子供を上手に育てなきゃ」と思ったり、普通に道で信者の人とすれ違うこともあるので「キレイにしなきゃ」「メイクもばっちりして幸せそうにしなきゃ」と変なプレッシャーがありました。

でも、ふと「幸せか不幸せかって人それぞれなんじゃないか」って思い始めたんです。

例えば、離婚したら不幸だとか子供がグレて家を出たら不幸だと思っている人はいるけれど、「離婚して自由になって幸せじゃん」っていう人もいる。「子供が家を出て連絡をよこさないのは自立してやってる証拠じゃない」という見方もあるし、自分がこれからどう生きようと誰かから不幸だって言われる筋合いはないと気付いたんです。

それからは、とにかくおいしいものを食べて、よく寝て、そこそこお金を貯めていればいいかなっていう感じに変わりました。

200313wotopi-0137

「いずれ死ぬだろうけど…」宗教をやめて変わったこと

『カルト宗教やめました。』より

『カルト宗教やめました。』より

——宗教に入っていたときは自由にファッションを楽しむこともできなかったので、いざ宗教をやめたらどんな服を着たらいいか分からないというエピソードがありました。あとがきで「私も含め脱カルト2世の多くは、普通の中学生が通るはずの道を今さら歩かなければならない事態に直面します」と書いてらっしゃって、大変な道のりだなと思うと同時に、“中学生”になったたもさんが楽しそうだなあと思いました。

たもさん:本当に宗教をやめたばかりの頃は、中学生のように最初はすべてがまぶしくてキラキラしていました。それまでは普通の人が当たり前のように楽しんでいる誕生日やクリスマス、ハロウィン、夏祭りをまったく経験できなかったので。私もみんなと同じように行事に参加できるのがただうれしくて、めっちゃ飾り付けしたり、出掛けたりがすごく楽しかったですね。

入信していた頃は、ずっと終末論の中で「この世はいずれ滅びるのだから」という考えが根底にあった。普通の人としゃべっていても、「でもどうせこの人も滅びるんだよな」「こんなすてきな建物もいずれは滅びるんだな」と思っていたから、心から楽しめなかったんです。

200313wotopi-0312

——私は1980年代生まれなのですが、ノストラダムスの大予言をどこかで信じていたり、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件が起こった1995年がまさに中学生に上がるタイミングだったので、たもさんが言わんとすることがなんとなく分かる気がします。「どうせ人類は滅びるんだから頑張っても意味ないよな」って心のどこかで思っていました。今考えれば完全に思考停止なのですが……。

たもさん:そんな時代でしたよね。資格を取ろうが勉強しようが、いずれこの世は滅びるしって思っちゃうと心から人生を楽しめなかったのが、宗教をやめたことでパッと取っ払われて「いずれ死ぬやろうけど、それまでめいっぱい楽しもう」のような感覚に変わったのは良かったです。人生を楽しめるようになったなって思います。

200313wotopi-0498

第2回は3月18日(水)公開です。

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子)

SHARE Facebook Twitter はてなブックマーク lineで送る

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

幸せか不幸かは自分が決める。カルト2世だった私が気付いたこと

関連する記事

編集部オススメ

仕事と恋愛、キャリアとプライベート、有能さと可愛げ……女性が日々求められる、あるいは自分に求めてしまうさまざまな両立。その両立って本当に必要?改めて問い直すキャンペーンが始まります。

後悔のない30代を過ごしたい。ありとあらゆる分野のプロフェッショナルに、40歳から自分史上最高の10年を送るために「30代でやっておくべきこと」を聞いていきます。

記事ランキング