サントリー 脇奈津子さんインタビュー 前編

「どうして私に?」降ってきた仕事を“自分ごと化”して育てる方法

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「どうして私に?」降ってきた仕事を“自分ごと化”して育てる方法

2005年「レッドブル」の日本上陸以来、出荷総数が右肩上がりのエナジードリンク。「南アルプスの天然水」などの主力商品を中心に水にこだわり続けてきたサントリーも、今年「サントリー 南アルプスPEAKER ビターエナジー」(以下、PEAKER)を発売しました。

その商品を企画したのは、「実は開発に携わるまでエナジードリンクをほとんど飲んだことがなかった」という脇奈津子(わき・なつこ)さん。入社4年目で予算比400%の売り上げを達成し、社長賞を2度獲得した実績などあり、今回のプロジェクトに抜擢されました。

けれど、これまでの脇さんにとってエナジードリンクは完全に「興味の対象外」だったそう。どのように気持ちを切り替え、新しいエナジードリンクの開発を実現させたのでしょうか。前後編にわたってお届けします。

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アップダウンからフラットに

——普段はオーガニック素材にこだわった食生活を送っているそうですね。人工的なエナジードリンクを任されると初めて知ったとき、どんな思いでしたか?

脇奈津子さん(以下、脇):正直「なんで私なの?」という疑問が最初に浮かびました。23歳のとき、母の死をきっかけに食生活を見直して自他ともに認める健康オタクになったので、化学的なイメージのあるエナジードリンクはほとんど飲んだことがなかったんです。

——「興味関心の範囲外の商品をヒットさせる」というミッションを与えられて、悩みも多かったのではないでしょうか?

脇:そうですね。でも、なぜいま世の中にエナジードリンクが必要なのか、と突き詰めて考えたら、答えが見えてきたんです。課題を“世の中の価値”に落とし込むと、興味関心の範囲外のものでも突破口が開けてくるんですよ。

——世の中の価値とは、具体的にどのようなものでしょうか? 何がブレイクスルーとなったのか教えてください。

脇:まず、友達20~30人にどんなときにエナジードリンクを飲むのか話を聞きました。すると、大量の仕事を短時間で済ませなくてはならないことに悩んでいる人が多いのがわかったんです。

仕事量はそのままで残業削減。なんとか仕事を終わらせて家に帰ると子どもが待っている。さらに寝る時間を削って勉強や趣味に打ち込む。もう限界ですよね。「ドーピング」や「健康の前借」という意味で、体に負荷をかけてエナジードリンクを飲んでいるという声が多くて、そこに商品が必要とされる芽を見つけました。既存のエナジードリンクと同じ効果がありながら身体への悪影響が少ない商品があればヒットするかもしれない、と。

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——たしかに既存のエナジードリンクは「もう限界!」と思った時に飲んでいます。

脇:クッと飲むと血糖値が上がるので瞬間的に集中状態をつくるのにはいいのですが……。ただ、私たちの働き方って、瞬間的にわーっと頑張るよりも、なるべく一定のペースを保って高いパフォーマンスをあげ続けることが大事だと思いませんか? 集中して仕事を頑張って、就業時間がきたら「はい、終わり」じゃなくて、家庭のことだってある。だから「PEAKER」では、体に負担がかかりにくい量のカフェインや糖質にこだわって、アップダウンの波が激しくならないように気をつけました。

——ペースを一定に保つという視点はこれまで持っていなかったかも。他にも何か新しい点はありますか?

脇:はい。「PEAKER」は、カフェインを含む独特な味わいの茶葉「グアユサ」を日本で初めて使用したドリンクでもあるんです。南米の狩猟民族は、今でもこの茶葉を煎じたお茶を朝3時に飲んで目を覚まし、狩りに出かけているそうですよ。

サントリー 南アルプスPEAKER ビターエナジー

サントリー 南アルプスPEAKER ビターエナジー

滋賀県のキャンプ場を地道に行脚

——南米の狩猟民族が狩りに行く前に……。そういえば、「PEAKER」はアウトドアブランドのスノーピークと共同開発する商品の第4弾ですね。関係者が増えると、自分と同じモチベーションで仕事をしてもらうにはどうしたらいいだろうと悩むことはありませんか? 特に、違う会社同士なので連携が難しそう……。

脇:私は地道に行脚しました。スノーピークの社員がいる滋賀県のキャンプ場を訪れ、「何か気になることがあればすぐに開発者の私に聞いてください」と言ってSNSでつながり、誰とでもメッセージを送りあえる環境を作ったんです。

そうしたら、社員の皆さんが当事者意識を持ってくださり、「シールを作ってみたら?」「ポスターを店に貼りたい」と連絡をくれるようになりました。店頭でお客様が商品を手に取るのを待つだけではなく、自分から動いていくことも大切だと思いますよ。

——とはいえ、他人が思い通りに動いてくれることはないし、会社から与えられたミッションがクリアできるという保証もありません。いろいろなプレッシャーにさらされている中で、頑張り続けるにはどうしたらいいでしょうか?

脇:そういうときは無理をして頑張るのではなく、自分らしく、自分のペースで進めてみるのはどうでしょうか。人のペースに合わせていると疲れてしまうから。

「エナジードリンクを開発して1年以内にブランドを立ち上げて」というミッションは課されましたが、私はやらされ仕事が嫌い。私にとっては、人の役に立っていると思えることが大事なんです。そのために自分が生きる中での課題として自分ごと化して、子どもを育てるのと同じくらい大事なことだと思えるようにする。だからあんまり「仕事」だと思っていないのかもしれません。

それでも乗り切れない時は、一人で抱え込むのではなく、周囲に頼るのが一番だと思いますよ。「PEAKER」のような飲み物もありますし、応援してくれる周囲の人もいるはず。私もいろいろな人に救われました。だからこそ働く現代人の支えとなる飲料を作り、自分なりのアイデアで世の中を変えることにこれからも注力したいですね。

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次回は10月12日(金)公開予定です。
(取材・編集:ウートピ編集部 安次富陽子、文:華井由利奈、撮影:大澤妹)

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