女子のための「手に職」図鑑・華井由利奈さん 第1回 

万能薬みたいな資格や仕事なんてない。わかってるけどほしくなる「手に職」の正体

万能薬みたいな資格や仕事なんてない。わかってるけどほしくなる「手に職」の正体

出産後もどうやって仕事を続けるか、長く働き続けるにはどうしたらいいかなど、仕事に関する悩みはつきないもの。そんな女性の働き方をテーマにした書籍『一生困らない 女子のための「手に職」図鑑』(光文社)が、先月発売されました。

著者で、ライターの華井由利奈(はない・ゆりな)さんは、名古屋の印刷会社でデザイン業務に就いたのち、コピーライター職として働きながら、ライター業をスタートして独立。まさに「手に職」を得たひとりです。

華井さんのお話を、3回にわたってお届けします。

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万能薬みたいな資格や職種があるわけではない

——「手に職をつける」には、やっぱり資格をとるのが一番手っ取り早いんでしょうか?

華井由利奈さん(以下、華井):たしかに、昔から「手に職」といえば、資格職や職人的な専門職のことを言いますよね。かつて取材をした女性のなかには、「手に職をつけるため、看護師・教員・保育士のどれかになりなさい」と親に言われて育った人もいました。

でも、それらの職が自分に向いているとは限りません。たとえば難関の気象予報士の資格を取得しても、自分に向かない仕事だった場合は長く続けられることができませんし、長く続けることができなければ、結局、「手に職がついた」とは言えないと思うんです。

——長く続けられることが大前提ですもんね。

華井:そうなんです。最近では、SEもいわゆる「手に職」と言われる仕事なのですが、取材で話を聞いたある女性は、「それほど興味がなかったのに、手に職がつくと思ってSEになって、のちのち苦しくなった」と語っていました。それなりに仕事をこなしていたものの、SEの仕事に憧れて入社してきた熱意のある後輩にすぐに追い抜かれてしまって、劣等感や仕事への不一致感が苦しいと。

——それはキツイ。いわゆる「手に職」のイメージに惑わされ、焦って就職/転職しないためには、どうすればいいのでしょうか。

華井:ほかの誰のものでもない自分だけの経験を積んで、それを生かすという意味で「手に職」を考えてみてほしいです。お客さんに商品やサービスを売る、会社で事務作業をする、雑貨カフェの店員として接客するなど、あらゆる業種で自分だけの経験が積めると思います。経験を積んで、ある種の“筋力”を鍛えておくことで、チャレンジできる幅が広がったり、自分の働きやすい環境をつくったりすることができるようになります。この“筋力”こそが「手に職」の本質なのではないでしょうか。

——「この資格さえあれば/この仕事につきさえすれば、なんとかなる!」っていう、万能薬みたいな資格や職種があるわけじゃないんですね……。

華井:でも裏を返せば、資格の有無や職種にかかわらず、手に職はつけられるということですよ! 

好きなことを仕事にしないほうがいい人って?

——仕事の向き不向きを感じる要因のひとつに「やりがい」があるかと思います。たとえば、事務職など、自分以外の誰かのアシスタント業務をやっている人に聞いたのですが、自分で何かを生み出しているわけではないのでやりがいを感じられず、「本当に自分に向いてるのかな……」と不安になってしまったりするそうです。

華井:自分が会社や仕事相手にバリュー(価値)を返しているという感覚があるかないかで、仕事へのコミット感って、だいぶ違うそうです。振られた仕事を自分なりに工夫してこなして「ありがとう」と言われるようになって、やりがいを感じられるようになったという例も聞いたことがあります。

——先ほど例に出たSEの方は、「やりがいがない」というより「興味がない」というのが仕事への不一致感につながっていましたね。自分に合ってない環境でどんなに努力しても、伸びるどころか自分が苦しくなるだけだから、見切りをつけたほうがいいよという分岐点があれば教えてください。

華井:「仕事相手の要望に、自ら積極的に応えたいと思えるか否か」でしょうか。一口に仕事相手といっても、消費者、クライアント、社内の人など職種によってさまざまですし、興味の有無、やりがいの有無も人それぞれだと思います。でも、長く仕事を続けられる人に共通しているのは、そこなんだと感じます。もちろん、仕事相手が無茶な要望を出してきたり、搾取しようとしてきた場合は別ですよ(笑)。

——たしかに、誰かのために仕事をするという、ある種利他的なところがないと、仕事って成り立ちません。極論で言えば、最終的に他人の「ありがとう」を集めないとお金にはならないというか

華井:そうなんです。好きなことを仕事にしたほうがいい人、しないほうがいい人の分岐点もそこにあると思います。

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「自分がどう生きたいのか」を棚卸しする

——長く続けられる環境をつくるにあたって、女性にとって働きやすい環境とはいったいどういうものなのかを教えていただきたいです。 

華井:女性向けの転職サイトを見たところ、「育児と両立OK」「女性管理職有」「転勤なし」「土日祝休み」「ブランクOK」「育休あり」などの項目が見られます。一般的に、これらの項目がそろっていれば、女性が働きやすい職場だと思われます。

ただ、取材をしていて感じたのは、働きやすい環境というのは人によって違うということ。結婚したいか、子どもは欲しいか(何人ほしいか)、どれくらいのペースで働き続けたいか、どこに住みたいか……。それによって、長く続けるための環境づくりは変わってきますから、まずは、「自分がどう生きたいのか」を考えるのが大事なのではないでしょうか。そこが抜け落ちている方が、けっこう多いように感じます。

——「“女性”にとって働きやすい」と主語を大きくするのではなく、「“自分”にとって働きやすい」とは何かを考えるのが先決なんですね。

華井:バリバリ働き続けたいのか、子育てしながらペースを落として働きたいのか、人によって全然違いますもんね。

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女性活躍の第2フェーズ

——たしかに。今回、さまざまな職業の方を取材されたと思うのですが、女性の活躍って進んでると感じられましたか?

華井:企業による差や地方差が大きいですね。女性が活躍する会社BEST100(『日経WOMAN』と日本経済新聞社グループの「日経ウーマノミクス・プロジェクト」がまとめた2018年版「女性が活躍する会社BEST100」)の上位3社が登壇した講演会に行ってみたら、「女性が活躍するには」というところからさらに発展して、「男女ともに活躍するには」というフェーズに移行していたのが印象的でした。たとえば、男性が育児に参加するために、男性社員が早く帰れる仕組みをつくるとか。

——第2フェーズに入ってる! 第1フェーズにすら入れてない会社で悩んでいる女性もまだまだ多いのに。

華井:地域によるところもあるのかもしれませんが、来客には女性がお茶出しを、みたいなところもまだまだありますよね。私は愛知県出身なのですが、まだ、主役を張っているのはおじさんばかりという印象です。企業のパーティーでも、そこにいるのは100%スーツ姿の男性ということもざらにあります。

あと、女性の活躍って、世代によるグラデーションもありますよね。まず、男女雇用機会均等法のころに男性社員以上にバリバリ働いて生き残ってきた世代がいて、次の世代は、彼女たちを見て「あんなにバリバリ働けない」と離脱していった。でも、その世代の人たちは雇用人数が多かったので、離脱率を下げるために会社側が育休制度や産休制度を整えていったという背景があり、そのあとの世代、つまり私ぐらいの年齢の人たちは、先輩たちがいろいろな前例をつくってくれたので、離脱率がさらに低くなっているように思います。

(取材・文:須田奈津妃、撮影:大澤妹、編集:ウートピ編集部 安次富陽子)

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