白髪のリタッチを美しく仕上げたいのに、うまく染まらない、色ムラや明るさで失敗…そんな悩みを少しでも改善したく、「Hair salon aruca」(福岡県北九州市)のオーナーで美髪を追求する三谷遥さんに連載でお話しを聞いています。前回(第1回)は白髪染めの色選びのコツを教えてもらいました。今回は、根元に伸びてきた白髪のリタッチを自分でうまくこなす方法について尋ねます。
白髪の生え際リタッチの色選びは
——少し白髪が伸びて生え際だけリタッチしたい場合、どれぐらいの長さのときにすればきれいに仕上がりますか。
三谷さん: 「白髪のリタッチカラー」とは、新しく生えてきた白髪の部分のみをカラーリングすることを言います。きれいに仕上がるかどうかは白髪の長さでは想定できませんが、まず、リタッチが可能なケースは一般に、根元が1~3センチ伸びてきたタイミングです。
それ以上伸びてからリタッチをした場合、白髪以外の髪の色が時間経過であせている可能性が高いので、色やトーン(明るさ)、ツヤにムラが出て全体としてきれいに仕上がりにくくなります。
例えば、4~5センチほど伸びているということは、以前の全体染め時から3~5ヵ月ほど経っているということです。そのため、それだけの時間経過による白髪以外の髪の色やトーン、ツヤの変化は避けられません。
——3センチ以内であれば、全体としてきれいに仕上がりやすいということですか。
三谷さん: そうです。ただし、3センチ以内というのもあくまで、自分でリタッチする場合のタイミングの目安です。
何センチであっても、「自分でリタッチをしたら、根元と毛先の色が違った」と悩む方は多いです。3センチ以内のときに、前回に染めた色・トーンと同じものを選んでも、髪質やダメージの具合、選んだ染料、染めかたなどで、色のムラや全体としての違和感が出る場合があることは知っておきましょう。
また、第1回で、白髪は黒髪に比べて明るく染まると話しました。そのため、以前に染めた色・トーンと同じものを選んでも、リタッチをした白髪部分だけが妙に明るく仕上がってしまうことがあります。
つまりは、3センチ以内であればその色ムラがまだ目立ちにくいだろうこと、また、全体染めによる髪のダメージを考え合わせると、根元が3センチ以内の間にリタッチをするのが得策だという選択になります。
生え際リタッチの際の色選びのコツ
——「白髪は明るく染まる」のであれば、リタッチの際の色選びはどうすればいいですか。
三谷さん: リタッチをしたい白髪の長さが1~2センチであれば、前回に選んだ色・トーンと同じでよいでしょう。2センチ以上であれば、褪色したほかの髪の色をよく見てそれに合わせる、また、前回に選んだトーンより「1トーン明るめ」を選ぶといい場合が多いです。
——前回と同じ色・トーンで染めればいいというわけではないのですね。前回に自分で全体染めをしたからか、髪がバサバサして傷んでいるという悩みもあります。
三谷さん: 髪のダメージが目立つならば、リタッチには「1日だけ持続する白髪隠しコンシーラー」を使って、先にカットやヘアケアをしたほうがいいでしょう。
リタッチをしようと思う機会に、白髪以外の部分の髪の色や、髪の状態を鏡でよく確認してみてください。
生え際リタッチを美しく仕上げるコツは
——自分で生え際をリタッチする際に、美しく染めるコツはありますか。
三谷さん: 生え際に関わらず、白髪が染まりにくい理由には、「カラー剤を塗る量が不足していた」「放置時間が短かった」「カラー剤がそこだけ塗れていなかった」「スタイリング剤の上から塗っていた」「傷んでいた」などです。
そのため、きれいに染めるためには、これらに注意するとよいわけです。生え際の白髪部分に、カラー剤を少し多めと感じる程度の量を、白髪部分プラス1~2センチほど先まで塗ります。白髪が根元から1センチであれば、カラー剤は根元から白髪部分を含めて2~3センチまで塗るということです。
そしてカラー剤に同封の説明書のとおりに時間を置いたあと、白髪以外の髪となじませるように、セミロングやロングなら髪の真ん中あたりまで、ショートなら毛先まで、製品に備え付けのブラシや、目が粗いコームでそっとといて、さらに5~7分ほど時間を置いてください。
あまり長く置くと髪が傷みます。ラップを巻いて放置時間を9割ぐらいに短縮してもよいでしょう。
——泡タイプ・クリームタイプなどから、どのタイプを選べばいいのかも迷います。
三谷さん: 好みによると思いますが、リタッチの際の扱いやすさの点では、しっかり染まる「1剤と2剤を混ぜて使うアルカリカラー」を選ぶ場合、クリームタイプが使いやすいでしょう。塗る量の調節が容易で、根元を狙って染めやすいからです。
泡タイプはクリームタイプに比べて根元が染まりにくく、ワンプッシュタイプは根元以外に付着しやすいです。
——ヘアマニキュアや一日だけの白髪隠しタイプもあります。使いかたのコツはありますか。
三谷さん: ヘアマニュキュアは表面をコーティングして染めるので、アルカリカラーに比べると色持ちは短いですが、毛髪のダメージが少ない、肌に付着したときは洗うと落ちやすいなどのメリットがあります。
また、次の洗髪まで染められる、1日だけ持続する白髪隠しのコンシーラーはさらにダメージが少なく、地肌に付着しにくいので手軽に使えます。「マスカラタイプ」「コーム型」「ブラシ型」「ファンデーションタイプ」などがあります。
いずれも、「ダメージが強いとき」や、「美容院で染めるまでのつなぎ」という用途で使うと便利でしょう。
3回に1回は全体染めを
——全体染めは髪が傷みそうなので、1年に1回だけ全体染めをして、あとはリタッチをくり返すという方法でもきれいにキープできるでしょうか。
三谷さん: リタッチを3回以上くり返すと、色ムラが激しくなり、ツヤもなくなり、また根元が傷みやすくなり、美髪のキープは難しくなります。できれば、3回に1回は美容院でカットと全体染めをして、その際に髪の傷み具合やムラについて、またケアについても相談するとよいでしょう。
聞き手によるまとめ
生え際の白髪リタッチは、どうしても色ムラやダメージは避けられない、できるだけそれらが少なくなるようにと意識し、教えてもらった方法で実践してみました。すると、適当にセルフリタッチしていたときよりも、なかなかに満足がいく仕上がりで、色ムラも目立たずに染めることができました。美容院で全体染めをするまでのつなぎと考えて、美白髪リタッチを目指しましょう。
次回・第3回は、ヘアカラートリートメントのメリット・デメリット、上手な使いかたについて尋ねます。
(取材・文 藤井 空 / ユンブル)