女優・草笛光子さん(84)の私服の着こなしを紹介した『草笛光子のクローゼット』(主婦と生活社)が3月16日(金)に発売されました。
草笛さんといえば、1953年に映画『純潔革命』(松竹)でデビューして以来、数々の映画、舞台、テレビに出演。常に第一線で活躍し、新しいことに挑戦し続ける姿勢が多くの人々の支持を集めています。
『草笛光子のクローゼット』では、故・越路吹雪さんにすすめられて購入した思い出のコートやニナリッチのリメークしたドレス、ユニクロといったプチプラの服や小物を取り入れたコーディネートを披露しています。
今回のようなファッションをテーマにした本を出版するのは初めてという草笛さんにお話を伺いました。
どんな仕事も「まずは自分が楽しむ」
——前回は、死ぬまで「初めて」に挑戦し続けたい、というお話でした。今回のようなファッションをテーマにした本を出版するのも「初めて」だったそうですね。
草笛光子さん(以下、草笛):このお話をいただいたときはとても迷いました。洋服を着て写真を撮ってこれだけの枚数の本を作るというのは大変なことでしょう。
女優がファッションの本を出すというのもあまり聞いたことがありません。そういうこともあって「自分でよいのだろうか?」と常に思っておりました。
でも、どんな服でも着る人がうまく着ればよいのでは? と思うようになったんです。それをできるかできないかを試すのが今回の私の仕事だと。
年齢に関係なく、どんな服を着ても「ほら、私はこんなにうまく着こなしちゃった。きれいでしょ?」というように、まずは自分が楽しむことが大事だと思います。
だから「恥ずかしい」なんて言っていないで度胸でやってしまう。洋服に着られるのではなくて、自分から洋服を着てしまえばいいと思うようになりました。
——派手な色の洋服も素敵に着こなしていらっしゃいます。20代、30代のころはどんなファッションがお好きだったのでしょうか?
草笛:若いころは地味な色ばかり着ていましたね。
——意外です。
草笛:きっとお利口に見えたかったのね。背伸びをしていたんでしょうね、人間として。
髪を染めるのをやめて自由になった
——エッセイの部分では「髪を染めるのをやめたら自由になった」と書かれていました。
草笛:それまでは「(髪を)染めなければいけない」と思っていたんです。白髪が出てしまったら大変と。でも、髪を染めるのをやめたらそういう“とらわれ”からも解放されました。“生まれたまんま”になったわけですね。
そうしたら、今まで着なかった黄色や紫といった、派手な色使いの服も平気で着られるようになりました。「これも似合うわ」「これも着たいわ」と、いろいろな洋服を着るのが楽しくなりました。
——自由になったんですね。「若いときから白い髪に憧れていた」と書かれてましたが、年をとることに“怖れ”はなかったのでしょうか?
草笛:若いころに街で40歳過ぎくらいのおばさまとすれ違ったときに、その方の髪に白い髪がパラっと入っていらっしゃる様子がとても格好よかったんです。
そういう女の人とすれ違うたびに「ああなりたいな」と思っていました。なんだかすごく頭がよい人に見えたんです。「白髪があっても平気」という自信がにじみでていました。
「この方は何をしてらっしゃる人だろう? 奥さんかな? それともどこかにお勤めなのかな? どういう生活していらっしゃるのかな?」と想像を膨らませていました。
そういう方の、おそらく「染めてまで生きよう」というのではない姿勢に惹かれたのだと思います。そのままでいられる、というところがうらやましく感じていました。
自由に、元気に生きるのが「一番幸せ」
——ウートピは働く女性をターゲットとしたニュースサイトなんですが、草笛さんは“壁”にぶつかったときはどう乗り越えますか?
草笛:壁というのはあまり感じません。あとになって「あれは壁だったな」と思うくらいで。
——そうなんですね。
草笛:いい仕事で、自分がそれをやっていることがとても誇らしい仕事は苦にならないんです。だから、いい仕事を二つ掛け持ちしていた時期もありました。
必殺シリーズと名古屋の舞台とを掛け持ちして、東京と名古屋を行ったり来たり……。でも、両方ともいい作品だったので全然苦ではなかったですね。だから、いい作品をやりたいなと思います。いい作品をやっていれば元気です。
——そうなのですね。草笛さんが日々を生きる上で大事にしていらっしゃることは何ですか?
草笛:女優人生がいつなくなるかわからないので、今はとにかく毎日を、時間を大事にしようと思います。毎日起きると「今日も1日よく生きよう。無駄なことはしたくない。嫌な思いもしたくない」と思うんです。
でも、元気でなかったらよく生きられないでしょう? だから、「今日もどうぞ元気にいさせてください。(飼い犬の)マロもどうぞ元気でいさせてください」と犬の分も頼むんです。
「元気でいれば何でもできる」というのが私のモットーです。だから、「きれいである」とか「色が白い」ということは問題ではありません。自由に元気に生きるのが、一番の幸せだと思っています。そういう自分でいたいと思うけれど、この世の中ではなかなか難しいでしょうね。
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子)