「自分で白髪染めをしたら仕上がりの色が見本と違った」、「白髪染めでおしゃれは無理かも…」など、お悩みの声が届いています。そこで、「Hair salon aruca」(福岡県北九州市)のオーナーで美髪を追求する三谷遥さんに、白髪染めを美しく仕上げるポイントについて連載でお尋ねします。今回は色選びのコツについて聞きました。
白髪染めっぽくないカラーバリエがある
——白髪染めのカラーを選ぶとき、地毛の色をイメージしがちです。でも、黒髪のおしゃれ染めと同じように、流行の色やトーンを楽しむことはできますか。
三谷さん: 白髪だから地毛の黒やダークブラウンしか無理だろう、選ぶのが難しいし、というお客さんは多いです。ですがカラー剤の進化で、白髪染めのカラーバリエーションは豊富にあり、好み次第でさまざまな色、色合いが楽しめます。
市販品でも、黒やダークブラウンばかりではなく、アッシュ系ブラウンやレッド系ブラウンなども選べます。美容院では、さらに多くのバリエーションがあり、毛先だけおしゃれな色にするなども可能です。希望を伝えてみてください。
また、デザインや技術の進化によって、メッシュやハイライトといった、部分的にブリーチで明るくする「白髪ぼかし」というカラーデザインも流行しています。
——それは憂うつな白髪染め作業にも希望が持てますね。「白髪ぼかし」についてはのちの回でお尋ねします。
色見本とは違うカラーに仕上がった原因は?
——色を選ぶにあたり、市販品のパッケージに載っている色見本で選ぶと、仕上がりがまったく違った、ということがあります。どうしてでしょうか。
三谷さん: 原因はいくつか考えられます。白髪染めの場合、同じカラー剤で複数の人の髪を染めた場合でも、それぞれに違う色、違う色合いに染まります。
その理由は主に、「髪全体に占める白髪の量」、「地毛の色」、「髪の質」、「髪の状態(ダメージの具合)」などが人によって違うからという土台の面と、「カラー剤の塗りかた」、「使用量」、「塗ってから置く時間」など、技術の面があります。
前者の場合、黒髪用のおしゃれ染めと白髪染めではカラー剤の質が異なるので、白髪の量によって仕上がりかたは明らかに違ってきます。
また、同じテクニックで複数の人にメイクをした場合でも、人によってお顔の印象が違うように、ヘアスタイルによっても仕上げの印象は変わります。つまり、見本と違う色に仕上がるのは必然と言えます。
——それを前提に、できるだけ失敗しない白髪染めの色選びのコツはありますか。
三谷さん: まずはおしゃれ染めと同じように、「なりたい色」をイメージしましょう。迷う場合は、数種のメーカーがネット上やアプリで、「似合うカラーを診断するサービス」などを無料で公開しているので、試してみるといいでしょう。
ただし、先ほど話した要因で、仕上がりは違ってくると想定しておきましょう。
次に鏡を見て、白髪の量を確認してください。
「白髪の量」が全体の30%以下か、それ以上かでトーンを選ぶ
——白髪の量が多い場合と少ない場合では、仕上がりの色はどう違うのですか。
三谷さん: メーカーの白髪染めの色見本は、白髪の量が全体の30%ぐらいの人を目安に作られていることが多いのです。市販品でセルフカラーをする場合、まずはその点を理解しておき、パッケージにあるそうした注意書きの表示を確認しましょう。
白髪の量が全体の半分以上と多いケースと、全体の20~30%ぐらいの少ないケースで同じ色で染めて比較すると、白髪が多いケースのほうが明るく染まります。黒髪にはメラニン色素が多く白髪には少ないなどで、白髪はカラー剤が発色しづらいという特徴があります。
一方で、白髪が少ない人が全体に白髪染めをしたときには、色見本よりも色は濃く、暗めに仕上がります。
そのため、次のことを目安とすると、イメージに近くなると考えられます。
・白髪が全体の30%以下で少ない人が明るめの仕上がりを希望する場合は、見本より2トーン明るめを選ぶ。
・白髪が少ない人が暗め、ダーク系に仕上げたい場合は、想定通りの見本の色とトーンを選ぶ。
・白髪が多くて、もともと髪が硬い人が明るめを希望する場合は、希望の色よりワントーン暗めを選ぶ。「想像以上に明るく仕上がる」と想定しておく。
・白髪が多くて暗め、ダーク系に仕上げたい場合は、2トーン暗めを選ぶ。
——白髪染めでも、黒髪のおしゃれ染めのように、今月は明るめに、来月は暗めに、と自分で変えることはできますか。髪は傷みませんか。
三谷さん: 白髪染めの場合、明るめから暗めには染めやすいのです。しかしその逆の、黒髪やダークブラウンの暗めの人(メーカーが示す3や4トーン)が、ぱっと明るめ(同7や8トーン)にしたいときは、おしゃれ染め同様に、先にブリーチ(脱色)をしてからでないと不可能になります。セルフカラーだけを行っても理想の明るさにはならないでしょう。また、ブリーチをすると、髪はどうしても傷みやすくなります。
今後、トーンや色を大きく変えてイメージチェンジをしたい場合は、最初に明るめを選んでおいてください。そのほうが後々に髪を傷めずに染めやすいからです。
ツヤが映える白髪染めの色は?
——白髪染めでも、美髪に見える色はありますか。
三谷さん: やはり、地毛が美しいかどうかが第一条件ですが、カラーでツヤを出したい場合は、レッド系ブラウン、ピンク系ブラウン、紫系ブラウンがよいでしょう。
一方で、傷んでいる髪にオレンジ系ブラウン、ゴールド系ブラウンはダメージが目立ちやすくなります。
——髪の質では、染まりかたはどう違うのですか。
三谷さん: 白髪染めに関わらず、おしゃれ染めと同じで、細くて、やわらかい、ぺしゃんとなりやすい、地毛の色が真っ黒ではなく茶色い髪は染まりやすい傾向にあります。
一方で、太くて硬い、地毛が黒い髪は染まりにくいといえます。
その傾向を知って起き、「塗る量」や「置く時間」を調整してください。
——ダメージヘアの場合はどう選べばいいですか。
三谷さん: ダメージがある部分は染まりやすく、また色が落ちやすいので、全体にムラが出て美しくない状態に見えがちです。美容院では、ダメージの部分はそれ以外の髪より後で薬剤を塗るなど工夫をしますが、セルフカラーでは難しいと思われます。困ったり迷ったりした場合は、美容院で一度は施術して、悩みを相談してみてください。
——ありがとうございました。白髪染めの場合は、色そのものよりも、明るめか暗めかというトーンの選びかたが決め手になりそうです。まずは希望の色とトーン、髪の質、ダメージ状態を見つめてから取り組みたいですね。次回・第2回は、生え際のリタッチをうまくこなすコツについて尋ねます。
(取材・文 藤井 空 / ユンブル)