髪の悩みについて、44歳・女性の読者から、「子どものときから髪が細くてべしゃっとしやすい猫毛でした。40歳を過ぎたころからさらにハリやコシがなくなり、朝にスタイリングをしてもすぐに崩れます。何とかする方法はありますか」というお尋ねがありました。
このお悩みは以前から複数の方から届いています。そこで、「Hair salon aruca」(福岡県北九州市)のオーナーで美髪を追求する三谷遥さんに、ハリ・コシをアップするためのセルフケアについて聞いてみました。
髪のハリとは強度、コシとは弾力性のこと
——「髪にハリがない」「コシがなくなってきた」とは、具体的にはどういう状態なのでしょうか。
三谷さん:髪のハリとは、「強度」のことをいいます。抜けた髪を左右のひとさし指に巻きつけて、左右にひっぱりあってみてください。ハリがないとプチっと切れます。
毛髪は、ブラッシングやヘアゴムでくくる際にも切れることがあるでしょう。それは「切れ毛」の状態で、切れた髪は強度が低かったと考えられます。しかし、ハリがあると容易に切れることはありません。強度が高いからです。
髪のコシとは、「髪の弾力性」「髪が跳ね戻る力」をいいます。ハリのチェックと同じように指に巻きつけて左右に少しひっぱると伸びますが、力をゆるめると元に戻ります。指に巻きつけた髪を指からはずしても、元の形に戻るでしょう。これが弾力がある、コシがある状態です。コシがないと、伸びたままや丸まったままで元に戻りません。
髪の健康やボリュームはハリとコシの両方が備わっていて成り立つため、ハリやコシは美髪の要因になります。
——さっそく自分の毛髪で何本か試してみると、すぐに全部プチっと切れました。ハリもコシもないようです。客観的に計測することはできるのでしょうか。
三谷さん:シャンプーやトリートメントなどのヘアケア製品、パーマやカラー、プリーチなどの薬剤のメーカーは、専門的に、ハリを計測するには「毛髪引張強度試験」を、コシには「毛髪曲げ特性測定試験」などを活用して、製品の使用前、使用後で実験することがあります。こうした試験を請け負う専門の企業があります。
髪の主成分のタンパク質が不足している
——髪のハリやコシが失われていく原因は何でしょうか。
三谷さん:髪の主成分は、「ケラチン」というタンパク質の一種です。また、髪は外側から、「キューティクル」「コルテックス」「メデュラ」の3層でできていて、それぞれの層は「細胞膜複合体」で接着しています。
つまり、これらの成分が不足すると髪が細くなって、いわゆる猫毛になり、ハリやコシは失われます。直接的な要因は、加齢、病気、疲労や睡眠不足が続く、食事の偏り、無理なダイエット、ストレスなどで体が栄養不足になること、また、頭皮の血流不良や毛穴の汚れの蓄積などのヘアケア不足、紫外線によるダメージ、くり返すブリーチやカラー、パーマによるダメージなどが考えられます。
年齢に関わらず、ケア次第で改善する
——髪の状態は、生活習慣の乱れやヘアケアをさぼっていることのサインともいえますね。これらを意識して整えていくと、ハリやコシは取り戻せるでしょうか。年齢によるものだとあきらめかけているのですが。
三谷さん:ハリやコシの回復は可能です。皮膚と同じで子どものときのような強度や弾力性は取り戻せませんが、意識をしてケアをすると、何歳になっても1~2ヶ月で目に見えて現状より改善します。
そのためには、ハリやコシを失う要因の、疲労や睡眠不足、ストレスを改善し、栄養のバランスがとれた食事を毎日3回、できるだけ規則正しい時間に食べること、また、適切なシャンプー、トリートメント、保湿剤、ヘアドライ、ブラッシングを毎日の習慣としてみてください。
ブリーチやカラー、パーマをくり返している場合は、美容院でハリやコシなどダメージについて相談して、頻度を調整するなど試みてください。
——ヘアケア製品の選び方にはコツはありますか。
三谷さん:シャンプー、トリートメント、アウトバス用のトリートメントやヘアオイル、スタイリング剤には、パッケージやウエブサイトなどで情報を得て、ハリやコシをうたうタイプを選びましょう。
髪の主成分はケラチンというタンパク質だといいましたが、最近、ケラチンと結合する成分の「ヘマチン」を配合したヘアケア製品が注目されています。ヘマチンとは牛や豚の血液を化学処理した成分で、血液中のヘモグロビンからヘマチンを分離して抽出しているとされます。
——ヘマチンを髪に塗布することでハリやコシが出るのでしょうか。
三谷さん:メーカーはそう伝えています。ヘマチン配合シャンプー、ヘマチン配合トリートメント、ヘマチンの原液の髪用美容液など、さまざまな種類の市販製品が増えてきました。私が実際に使ったときには、1週間ほどで髪全体がしっかりしたように感じました。こうした新しい製品は、自分の髪に合うかどうか、まずは1~2本、1~2ヶ月ほど試してみるのがいいでしょう。
聞き手によるまとめ
髪のハリやコシとは、強度や弾力性を示すこと、また、具体的にはケラチンという髪の主成分のありようによってハリやコシが失われることが理解できました。生活習慣やヘアケア法を見直し、また適切なヘアケア製品を選んだうえであきらめずに毎日それらを実践すると、数ヶ月で改善するということです。さっそく試みていきます。
(構成・取材・文 品川 緑/ユンブル)