朝のヘアセットとキープのコツ/前編

毎朝のヘアセットのポイント、タイミングは?【美髪プロに聞く】

毎朝のヘアセットのポイント、タイミングは?【美髪プロに聞く】

毎朝、時間をかけて髪のスタイリングをしても思いどおりにきまらない、外出先ですぐにくずれる……ということはありませんか。そこで、「Hair salon aruca」(福岡県北九州市)のオーナーで美髪を追求する三谷遥さんに、髪のスタイリングやセットのポイントを今回の前編で、またセットを少しでも長くキープする方法とそのコツを次回の後編で尋ねます。

髪の内部のタンパク質が結合して形がつく

——そもそも、髪を思いどおりに自分でセットするのは難しいですよね。

三谷さん:まず、毛髪の成分や、形がつくられる仕組み、またセットに適したタイミングを知っておきましょう。

毛髪の主成分はケラチンというタンパク質ですが、この分子が結合すると形が変わります。

その結合には、セット力が弱い順に、「水素結合」→「イオン結合(塩結合)」→「シスチン結合」→「ペプチド結合」があるといわれています。

そのうち、ヘアドライヤーやアイロンでセットをする場合は、水素結合を活用することになります。水素結合とはその名の通り、水素が仲立ちをして毛髪内部のタンパク質の分子を結合させることです。

水素結合では、水や熱が加わると分子の結びつきが切断されるために髪の形がくずれます。一方で、毛髪が乾燥したり冷えたりすると再結合をして形がつく、つまりスタイリングやセットができるという特性があります。

そうした特性があるがゆえに、自分で水やヘアドライヤー、ヘアアイロンの熱を利用して、スタイルをつくることができるわけです。

髪の根元から濡らしてブローする理由

——では日ごろから、髪を洗うと水素結合が切断され、乾かすとまた結合することをくり返しているのですね。

三谷さん:そうです。水分で濡れると水素結合が切れるので、毛髪はやわらかく、キューティクルが開いて不安定な状態になります。そして、乾くと再結合するので、乾く過程でブローとセットをするとスタイルができるわけです。

寝ぐせを例に考えてみましょう。髪が濡れたまま寝ると、水素結合が切れている毛髪を枕に押し付けることになります。やがて時間とともに毛髪は乾き、内部ではタンパク質が再結合するので、枕に押し付けた状態の形がついてしまうのです。

——その寝ぐせをなおすときには、「髪の根元から水で濡らし、ドライヤーでブローしよう」と言いますね。

三谷さん:寝ぐせがついた根元から水で濡らして、水素結合をいったん切断するわけです。その後、ドライヤーで乾かしながらブローをすると、根元から内部のタンパク質が再結合して新しい形をつくることができます。

このとき、毛先だけを水で濡らしてドライヤーとブラシでセットしても、根元は水素結合したままなので毛髪の形は変えられず、寝ぐせをすっきりとなおすことはできません。

それに、水素結合には温度も関係します。髪の形は、乾いた状態なら約90度の熱を加えたころから水素結合して形が変わります。つまり、髪が乾いた状態で90度以下のドライヤーをあてても、寝ぐせは元の形にもどらないのです。

ブロー時、髪に形がつくタイミングは?

——寝ぐせなおしについては思いあたります。そうした理屈を知っておくと、朝のセットがはかどりそうですね。

三谷さん:もうひとつ、髪を濡らしたあと、ドライヤーでブローするときに形がつきやすいタイミングを知っておきましょう。再び水素結合するタイミングはいつか、ということです。

それは、「毛髪が乾く直前」です。そのため、髪全体の8〜9割ほどドライヤーで乾かしたタイミングから、ヘアブラシやカーラー、ヘアアイロンを使って、ドライヤーで熱を時間的に多めに加えて形をつけましょう。髪を小束にしてセットするとやりやすいでしょう。

仕上げに、髪に形がついた状態でドライヤーを冷風に切り替えて数十秒あて、整えましょう。熱で不安定だった水素結合が再結合し、くずれるのを防ぎやすくします。

——髪が乾く直前に形がつくのですね。私は半渇きくらいのときから、ヘアアイロンを使っていますが、無駄な作業でしょうか。

三谷さん:はい、無駄なうえに、髪に激しいダメージを与えることになります。というのも、髪は濡れているときは表面を覆うキューティクルが開いているので、そこにヘアアイロンで高熱を与えたり、毛髪をはさんで引っぱったりすると、すぐにキューティクルがはがれるからです。

——びしゃびしゃに濡れているときから、ヘアブラシやヘアアイロンで乾かすのはダメージのもとなのですね。ついヘアアイロンに頼ってしまうのですが、設定温度が低いとなかなか形がつきません。

三谷さん:できるだけ低い温度設定のほうが髪にとっては安全です。ただ、ご指摘のとおり、低温だと形がつきにくいというデメリットもあります。それゆえに長時間使ったり、くり返し髪をはさんだりすると余計にダメージとなることもあるのでその点にも注意しましょう。目安として140〜160度ぐらいとし、ころあいの温度を探ってください。

朝のスタイリングの手順を整理しておきましょう。

霧吹きボトルに入れた水を髪の根元から全体に吹きかける。(スタイリング剤を使用する場合のコツは後編参照)

寝ぐせの部分には多めに吹きかける。

ドライヤーで髪全体を乾かし、8~9割ほど乾いたところでヘアアイロンやブラシ、カーラーを使い、熱を多めに加えて形をつくる。

冷風を数十秒あてて仕上げる。

聞き手によるまとめ

朝のスタイリング時や、寝ぐせをなおしたいとき、まずは根元から水で濡らすこと、それはいったん毛髪内部の水素結合を切断するための方法だと理解しました。それからドライヤーで髪全体を乾かし、8~9割ほど乾いたタイミングでスタイリングをしながら熱を加えると、再結合して形がつく、さらに冷風をあてるとくずれにくくなるということです。次回・後編は朝のセットをキープするためのスタイリング剤の選びかた、使いかたについて尋ねます。

(取材・文 藤井 空/ユンブル

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