コロナ禍で変化したマインドと、心とからだに寄り添う下着のチカラ

コロナ禍で変化したマインドと、心とからだに寄り添う下着のチカラ

初めてwotopiをご覧になる方ははじめまして。以前wotopiをご覧になっていた方はお久しぶりです。ランジェリーライターの川原好恵です。

かれこれ25年ほど、国内外のランジェリーブランドや市場を取材し、新聞やwebに執筆したり、雑誌やテレビの取材を受けたり、服飾専門学校の講師を務めたりしています。モットーとしていることは「プチプラからラグジュアリーまで」。しまむらや量販店などの売り場も見に行きますし、ヨーロッパの百貨店やブランドの現地取材に行くこともあります。なぜなら、下着はファッションアイテムの一つであると同時に生活必需品だからです。

手頃な価格でおしゃれなランジェリーが揃う、パリの「エタム」

 

高級ブランドのバッグは持っていなくても日常生活に支障はありませんが、ブラジャーやショーツ、肌着は生活に欠かせないもの。でも、それにかけられるお金は収入や環境によって大きく異なります。「下着にかけられるお金は違っていても、その中で自身にベストのものを選んでほしい」との想いから、それぞれの予算に合った選択肢を提案できるように、幅広い価格帯の商品を見たり取材したりするように心掛けています。

2025年1月に開催された「パリ国際ランジェリー展」の様子

振り返ればwotopiに最後の原稿を書いたのは2023年9月のこと。新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行したのが同年5月ですから、コロナ禍からアフターコロナへと世の中が一気に変容していた頃でした。私も2024年は4年ぶりに海外に取材に行くなど、コロナ禍前の生活に戻りましたが、ふと気づくと、人々が下着に求めることは大きく変わっていました。今回はその話を中心にさせていただきたいと思います。

アフターコロナも快適性を求めるムードは継続

快適性を追求した「ユニクロ」のワイヤレスブラ

コロナ禍となって行動が制限され、リモートワークが浸透し、“おうち時間”が増えたことで下着業界ではリラックスできる着け心地のノンワイヤーブラジャーの売り上げが一気に伸びました。きっとこの記事を読んでくださっている方の中にも、オンラインショップでノンワイヤーブラを購入したという方もいらっしゃるかと思います。

そのリラックスできるブラジャーの人気は、アフターコロナも継続。今ではすっかり定着しています。例えば、スニーカーで出社する快適性に慣れてしまったら、ハイヒールに戻るのはハードルが高いと感じますよね。それと同じで、楽な着け心地のブラジャーに慣れたら、窮屈な思いや我慢をして着けるブラジャーに戻るのは難しいものです。

やめらかい素材のコンフォートワイヤーを使用して、きれいなシルエットをメイクするトリンプ・インターナショナル・ジャパンの“秘めわざ”ブラジャー

それに加え、各下着メーカーでは“ノンワイヤーでもきれいなバストラインをつくるブラジャー”や、“ワイヤー入りでも楽なブラジャー”など、ハイブリッド型とも言えるブラジャーの開発が加速。様々な形で快適性を追求した提案が進行形で続いています。

上質な素材・心地いい肌触りのインナーで心とからだに安らぎを

プレミアムインナーを展開する「アロマティック」のシルク100%の生地とリバーレースで作られたタンクトップ

快適性の追求は、上質な素材の肌着、心地いい肌触りのインナーの人気にも表れています。コロナ禍の生活では、必然的に自身の健康に向き合うこととなり、ストレスがかかる生活の中で、いかに快適に日々を過ごすかに気持ちが向いたかと思います。その中で、ルームフレグランスが人気となったり、シルクのパジャマを購入する方が増えたり、寝具を新調されたたりなど、自身の心とからだを労わるような消費が増えました。

スイス発老舗メーカー「ハンロ」から1985年に発売され、今年40周年を迎えた綿100%の“コットンシームレス”

百貨店の下着売り場などでは「価格は少し高くても、心地いいものを着たい」という声が聞かれるようになり、シルクやコットンなどの天然素材インナーの人気が上昇。ブラジャー同様に、その傾向はアフターコロナも継続しています。やはり、一度知ってしまった心地よさは手放せないものです。

エモーショナルな感性を満たすランジェリーの行方は?

国内外のブランドを揃え、下着と服の境界線を持たずに楽しめるスタイリングを提案する、中目黒のランジェリーセレクトショップ「ムール」

ラクで機能性のあるブラジャーや天然素材のインナーなど、日々の生活を快適に過ごすのに役立つ下着についてお話ししましたが、下着にはまた別のチカラがあります。それは、誰かに見せるものではないけれど、美しい下着を身に着けると気持ちが高揚したり、それを着けた自身のからだが素敵に見えたりなど、エモーショナルな感性を満たすチカラです。

私の場合、20年前、10年前はそれがヨーロッパのインポートランジェリーで、今ももちろん大好きですが、昨今は日本人によるデザイナーズブランド、しかもミレニアム世代、Z世代の女性達が手掛けるブランドが増え、大いに刺激を受けています。

2025年1月に開催されたパリ国際ランジェリー展にも出展した、2022年デビューの「ラ・シレーヌ」

日本は、大手下着メーカーが市場をリードしてきた時代が長かったのですが、現在はこういった若い世代によるデザイナーズブランド、優美な欧米のインポートブランド、かわいくてお手頃なプチプラブランド、オンラインショップで買えるECブランドなど選択肢がたくさんあります。これからwotopiでは、テーマに合わせて快適に過ごしたり心を満たしたりする様々なタイプの下着をたくさん紹介したいと思います。

それぞれのバストと好みに合ったブラジャーを選択できるよう、幅広いデザインを提案するフランスブランド「シャンテル」

たかが下着、されど下着。私は、肌に直接身に着ける下着を丁寧に、自分の意思で選ぶことは、自分を大切にする事に繋がると信じています。それは、高価な下着を選ぶ事、トレンド最先端の下着を選ぶ事ではありません。それぞれの心とからだに寄り添った下着を選ぶきっかけとなる記事を、wotopiで伝えられたら嬉しいです。

(川原好恵)

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