年を重ねるにつれて、「ダイエットをしてもなかなか痩せない」「毎日1万歩歩いているのに体重が落ちない」とお悩みの方も多いのではないでしょうか? 実は、ダイエットのポイントになるのは、私たちの体に備わっている“体内時計”。脂肪がたまりやすい時間、筋肉がつきやすい時間を知ることで、効果的に肥満を防ぐことができます。
また、食事においても、これまでは「何を」「どう」食べるか? が注目されていましたが、「いつ」食べるか? という視点がとっても大切。
そこで、『脂肪を落としたければ、食べる時間を変えなさい』(講談社+α新書)などの著書があり、現在は広島大学大学院医系科学研究科で特任教授を務める柴田重信(しばた・しげのぶ)さんに、時間栄養学を生かしたダイエットのポイントについて、お話を伺いました。
最終回のテーマは「運動と体内時計の関係は?」です。

『脂肪を落としたければ、食べる時間を変えなさい』の著者・柴田重信さん
夕方の運動が適しているワケ
——運動についてもお聞きしたいです。運動も体内時計と関係があるそうですね。
柴田重信さん(以下、柴田):マウスやヒトの実験から分かったのは、「朝から昼ごろまでの運動は体内時計を前進させ、夜遅い時間の運動は後退させる」ということです。時間運動学では、いつ運動すると効果が高いかが明らかになりつつあります。
——運動は、夕方に行ったほうがいいのでしょうか?
柴田:そうですね。筋肉維持や体重を落とす、高血圧予防のためにも夕方の運動はおすすめです。コレステロール値が高い人や中性脂肪が多い人は、運動をすすめられると思いますが、そういう人は夕方の運動がいいですね。夕方は交感神経の働きが朝よりもいいので、体温も高いために脂肪を分解するリパーゼの働きがよくなり、脂肪燃焼も引き起こしやすいためと考えられています。
ただ、朝に運動をする人もいると思います。そこで、「朝の運動は役に立たないのか?」というと、そんなことは決してありません。例えば、朝食をとって、走って会社に行く。それだけで運動になりますし、朝型を維持しやすいですよね。
——朝食後に運動という順番がいいのでしょうか?
柴田:人によると思います。私の場合は、朝に40分ほど運動をして、それから朝食をとっています。なぜかというと、空腹で軽く運動すると、脂肪が燃えやすいんですよ。ご飯を食べてから運動をすると、その栄養素を使って運動のエネルギーを作ろうとする。ご飯の中のでんぷん質がブドウ糖になりそれを運動のエネルギーにするので、脂肪をなかなか使ってくれません。一方で、ご飯を食べていないとグリコーゲンが枯渇しているので、仕方なく脂肪を燃やしてエネルギーにするんですね。そうは言っても、昼間に運動したり、仕事をしたりしていても、脂肪は使っていきます。ただ、順番としては、最初にブドウ糖を使おうという優先順位があります。
でも、朝の運動で一つ注意してほしいのは、真冬などの寒いとき。関節を傷めたり、心臓発作を起こしたりといったリスクが高まるので、準備運動をしっかり行って運動してください。
夜中のジムは避けたほうがいいワケ
——ライフスタイルに合わせて、運動する時間を決めてもいいんですね。
柴田:どちらのメリットを優先するかですよね。筋肉トレーニングは、筋肉を増やす目的であれば夕方のほうがいいですし。夕方は忙しくて運動できないという人や、脂肪を燃やしたい人、筋肉が痩せていくのを予防したい人は朝に運動をすればいいと思います。
ただ、最悪なのは、夜中の運動です。「お金をかけているからもったいない」と思って、夜中にジムで光を浴びながら激しい運動を一生懸命やると、ストレスと関わりの深い副腎皮質ホルモンのコルチゾールや、交感神経系のホルモンであるノルアドレナリンの分泌が盛んになって体内時計を夜型化させてしまいます。もちろん、軽いヨガやストレッチであれば、筋肉がほぐれて入眠しやすいといったいいこともありますが。
——24時間やっているジムに通っていたのですが、確かに体内時計という観点では考えものですね。ウオーキングやジョギングなどの有酸素運動も夕方がおすすめですか?
柴田:そうですね。有酸素運動をしたかったら、ときどき小走りしてみるとか、ちょっと階段を上がってみるとかもおすすめです。私も帰宅するときに、10段ぐらいを上がったり下がったり、段差がある場所をわざわざ通って帰っています。かつては20分以上続けないと脂肪は燃焼されないと言われていましたが、現在では30分の運動を1日1回行っても、10分の運動を3回行っても同じ効果が得られることが分かっています。なので、少しずつライフスタイルに取り入れるのがいいと思います。