話題作に続々出演！中村ゆりに聞く、プレッシャーとの向き合い方

女優の中村ゆりさんが出演する映画『窓辺にて』（今泉力哉監督）が11月4日（金）に公開されます。

1998年にアイドル・デュオ“YURIMARI”のYURIとして歌手デビューし、YURIMARI解散後、2003年から女優としての活動をスタートした中村さん。これまで数々のドラマや映画、舞台、CMに出演し、女優としてのキャリアを積んできました。中村さんが出演する、2019年から放送中の日本生命のCMを目にするたびに思わず涙ぐんでしまう人も少なくないのでは？

そんな中村さんが『窓辺にて』で演じたのは、稲垣吾郎さん演じる主人公・市川茂巳の妻で編集者の紗衣。自身が担当する小説家と浮気しながらも苦悩する役を繊細に演じています。

同作を含め今秋だけで3本、年明けにも2本の映画公開が控える中村さんにお話を伺いました。前後編。

「なんで私の気持ちを知っているの？」今泉作品に思うこと

——『窓辺にて』は妻の浮気を知ったときに自身にわいたある感情に悩むフリーライターの茂巳と彼を取り巻く“完璧じゃない”大人の恋愛模様を描いています。まずは、オファーされたときの気持ちから伺いたいです。

中村ゆりさん（以下、中村）：今泉さんの作品は、これまで若者のお話が多かったと思うんですけど、今回は自分と年相応の大人のお話ということで……。この年齢で初めて、今泉さんの“大人の作品”に参加できるというのが、すごくいいタイミングだなと思ってうれしかったです。

——今泉監督のオリジナル脚本ですが、脚本を読んだときの感想を教えてください。

中村：すごく秀逸で、いい本だなと思いました。自分に響く言葉がいくつもありました。小説とかを読んでいても、「なんで私の気持ちを知ってるんだろう？」と思う瞬間がありますよね。そういうことが、今泉さんの映画や本には多いなと感じています。

——作品に臨むにあたり、今回どのような準備をされましたか？

中村：今泉さんの作品って、「芝居したらダメ」のような部分があると思うんです。だから何より、本の理解が一番大事だと思ったので、ちゃんと本を読み込んで「今泉さんが表現したいものを、現場で自分がどうナチュラルに出せるか」に集中しました。テレビドラマは、見せる芝居もあったりしますけど、それが出てこないようになるべく抑えることを意識しました。あとは、長回しも多いと聞いていたので、どこから長回しされても怖くないように、徹底的にセリフを入れ込みました。

プレッシャーの受け止め方

——劇中で「期待や理解はときに残酷だ」というセリフが登場します。特に女優という仕事は期待を寄せられることも多いのかなと想像しますが、中村さん自身は「期待」について思うことはありますか？

中村：やっぱり年齢を重ねて、自分の経験値が上がれば上がるほど、周囲からの期待というかプレッシャーを感じるようになるんです。でも、それは仕方がないことだし、大人になって仕事の重みをより感じているということだし……。回避もできないので、「受けなければいけないプレッシャーだ」と受け止めるしかないのかなって。だから、「ここまででいいや」ではなくて、「ここまでは絶対にもっていかなきゃ」という気持ちで毎回挑んでいます。

ただ、プレッシャーを少しでも軽減させるためには、準備が大事だと思っています。本当は怠けたいし、面倒くさいけど、とにかく自分のために準備をする。プレッシャーから救ってくれる方法って、それしかないんですよね。例えば、セリフが本当によどみなく出てくるまで、じっくり入れるとか……。若い頃よりも、そういう積み重ねをより意識するようになりました。

でも、私たちの仕事に限らず、どんな仕事でも必ずプレッシャーはあると思います。だから、準備プラス自分へのご褒美を必ず作る。自分が気持ちいいこととか、楽しいことを、定期的に作るようにしています。仕事から完璧に離れて、ただただ楽しい時間を作ることで自分にメリハリを持たせてあげる。そうすることで、より仕事に対しても「頑張ろう」という気持ちになれますし、厳しくするところと激甘にするところを、自分でちゃんと考えるんです。それは、他人がやってくれることじゃないから……。

たまに褒められたら「ラッキー」

——確かにそうですね。「期待」と同時に「評価」というのもつきものだと思うのですが……。

中村：毎回、評価されますよね。私もこのお仕事をして長いんですけど、自分が思ったとおりのことばかりは起きない。「これ、こんなに褒められるんだ」とか、「あれ？　私すごい頑張ったんだけど……」のようなことがすごくあります。

だから、どんな仕事も一生懸命やるけれど、過度に期待しないようにしています。なるようにしかならないし、一つの評価がものすごく何かを変えることもないので。ひとつひとつ、一生懸命にやって、たまに褒められたら「ラッキー！」みたいな感じですね。

——周りからの評価に過度にこだわったり、一喜一憂しすぎないということなのでしょうか。作品が完成して観客に届けるときは、どんな気持ちですか？

中村：みんなで一生懸命作ったものですから、一人でも多くの方に見ていただけることが一番なんですけれど……。見ていただいた方々に「救われた」とか「元気をもらった」とか、そんなことをたまに言ってもらえたら、それがおまけのご褒美みたいに感じています。私はひとつひとつ、一生懸命お仕事をするだけで、そのあとはもう、「何を思ってもらってもいいや」という感じですね。