薄井シンシアさんインタビュー 第2回

両立はあえて「しない」 17年の専業主婦時代に考えていたこと

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両立はあえて「しない」 17年の専業主婦時代に考えていたこと

さまざまな選択肢が目の前にある昨今、キャリアの途中で「仕事を休む」という選択があってもいいはず。

「今キャリアを中断したら、やりがいのある仕事やポジションにいられなくなるから」という不安は捨ててもいいのかもしれません。

17年の専業主婦生活を経て、“給食のおばちゃん”として復職。そこから外資系一流ホテルの営業開発担当副支配人、五つ星のラグジュアリーホテルに勤務したのち、現在は起業家を持つという異色の経歴を持つ、薄井シンシア(うすい・しんしあ)さん。

薄井さんに、「キャリアの小休止」が本当に人生のデメリットになってしまうのかという疑問をぶつけたインタビューシリーズ、第2回です。

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第1回:専業主婦を選んだけど、働く友人に嫉妬…

家事を「その日の気分」で変えない

——育児に専念すると決めてから、生活はどのように変わりましたか?

薄井シンシアさん(以下、薄井):専業主婦を「キャリア」にするのだから、いい加減な仕事はできないと家事と育児に全力を注ぎました。漫然とこなすのではなく、真剣に。

——全力で、とは? 心構えのことでしょうか?

薄井:ミッションとして遂行するということです。たとえば仕事には目標がありますよね。そして、目標を達成するためのプロセスや、タイムスケジュールがある。私は、家事育児にもこの考え方を用いました。1日の家事仕事の手順を決めたり、あらかじめ1ヶ月分の献立を決めたりとか。

——習慣化ですね。

薄井:はい。費用対効果を考えながら家計を回すこともね。あと、仕事なので「その日の気分」でやったりやらなかったりしないと決めました。

専業主婦の「仕事」とはいえ、家事育児は無償です。ビジネスやサービスとしての対価を得ているわけではないので、やろうと思えばいくらでも手抜きできます。手抜きが悪いこととは言いませんが、自分は手を抜いていると思えばどこか後ろめたさを感じますよね。

——専業主婦の仕事を「キャリア」にするための意識。新鮮な発想です。

薄井:できることを全力でやるためには、できないことをしないと決めることも大事です。私は、専業主婦になると決めてから、パートタイムの仕事すらしないと決めました。

娘が大学に行くまで両立は「しない」

——パートもですか?

薄井:はい。娘が小学3年生の時、彼女の同級生の母親たちはパートを始める人も多かった。それを見て、私もちょっと働いてみようかなと思ったんです。ちょうど娘の学校で臨時のサブティーチャーの募集があったので、そこに登録しました。けれど、数回行ってみて私に両立は無理だと理解しました。

——なぜですか?

薄井:仕事から帰宅した時にベッドがそのままで、シンクには朝食のお皿が残っていて、というのが耐えられなかったんです。しかも、娘が学校から帰って、私と話をしたくても、家事で手一杯で片手間にしか聞いてあげられない。私が専業主婦になる時に決めた、「娘にとっての安定」が守られていないと感じたんです。

——もっと頑張ればできるんじゃないか、とは思いませんでしたか?

薄井:そんなふうには考えませんでした。それが自分の限界だとわかったから。どんなに夢があったとしても、自分の限界を知らなければ、時間と労力のムダです。だからその時点で、私は娘が大学に行くまで家のことに専念すると決めました。

自分の限界と折り合いをつける

——気持ちがいいくらい潔いですね。私思うんですけど、今は職業選択も自由だし、何か勉強したいと思った時に学ぶ場所も豊富にある。だからつい、頑張ればあれもこれも手にできるんじゃないかと焦ってしまうというか……。

薄井:良いか悪いかは別として、オプション(選択肢)を持たない人はラクですよね。それしかないから。反面、オプションが増えれば増えるほど、決断する必要がでてくる。

おっしゃるように、頭の中にはたくさんのオプションがあるかもしれない。でも、みなさんそこばかり見て、自分の限界を見ていないんじゃないですか? どの選択肢も回収しようとすれば収拾がつかなくなります。

——確かに、理想ばかり見ているかもしれません。今何を選択するべきかって視点を忘れがちというか……。

薄井:これは娘にも教えたことですが、私は、自分に対してSWOT(スウォット)分析というのをやっています。

——それは何ですか?

薄井:企業や事業の戦略策定などで行われるフレームワークです。外部環境や内部環境を4つのカテゴリーに分けて分析するもので、強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の頭文字をとってSWOT。これを行うことで、自分の目の前にある選択肢と自分の置かれた環境を客観視することができます。

私の場合は、夫がほぼ家にいなくて、彼に娘の勉強を見てくださいと言っても無理でした。それは夫の会社の体制がそうなっているのだから仕方がない。それが嫌なら離婚という選択肢があるけど、私は離婚したくない。なら、受け止めるしかない。他人と環境は変えるのがすごく難しいし。

——環境が変われば自分がラクになると考えている人も多いように感じます。

薄井:自分を変えるのは、自分のコントロールで済むから、そちらがラクだと思うけど……。歳をとるにつれて身につく感覚なのかもしれませんね。あなたは変えられないから、そのままでOKですよ。じゃあ自分が変わろうって。

——そうなれたらいいな……。次回は、私たちが漠然と感じてしまう未来への不安について話を伺います。

【薄井シンシアさんの著書はこちら】

専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと(KADOKAWA)

(取材・文:安次富陽子、写真:青木勇太)

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