「毎晩の寝つきが悪い」「夜中に目が覚めてしまう」「目覚めがスッキリしない」など、睡眠の悩みはつきもの……。特に、暑い夏の夜は、「蒸し暑くて寝苦しい」といった悩みもプラスされ、睡眠不足に陥っている方も多いのではないでしょうか。
医学博士で内科医、脳神経内科専門医、抗加齢医学専門医の山下あきこ医師による著書『こうすれば、夜中に目覚めずぐっすり眠れる―医師が教える、薬に頼らない3つの方法』(共栄書房)が7月11日に発売されました。同書では、不眠で悩む人に向けて、ぐっすり眠るためのコツや睡眠のしくみなどを紹介しています。
山下医師に3回にわたってお話を伺います。第2回は成長ホルモンや朝型習慣のメリットについて伺いました。

山下あきこ医師
寝過ぎは問題?
——「健康にとって睡眠不足は大敵」ということは分かったのですが、逆に寝過ぎることも問題ですか?
山下あきこ医師(以下、山下):健康的な睡眠は、7~9時間ぐらいが一般的です。もし、10時間ぐらいがデフォルトになっているのであれば、もしかすると活動時間が短くなってしまって、翌日の眠りを浅くしてしまっている可能性もあると思います。ただ、寝過ぎに関しては、深刻な問題になっている人を、私はあまり見たことがありません。
確かにデータで見ると、寝過ぎの方は寿命が短い傾向にあります。個人的な見解ですが、その理由として、具合が悪い人も入っているからだと思うんです。調子が悪いと、寝る時間がどうしても長くなってしまう。眠りが浅いと、もう一回寝直して長く寝てしまったり……。そういう意味で私はロングスリーパーが体に悪いとは思っていません。現代の日本で、「あなたは眠り過ぎてるから、もうちょっと短くしなさい」という人は、そんなにいないと思います。
——寝るのが深夜になってしまった場合でも、いつもと同じ時間に起きたほうがいいのでしょうか?
山下:そうですね。でも、1日くらいはちょっと寝過ごしてもいいんじゃないかな?って思いますけどね。「同じ時間に起きなきゃ!」と思って、睡眠時間が4時間ぐらいになってしまうと、日中にやる気も起きないし、パフォーマンスも落ちてしまってその日1日がつぶれちゃうと思うんですよね。もし、時間が許せるのであれば、ちゃんと睡眠をとることのほうが大切です。その代わり、日中の活動量をしっかり上げたり、夕飯を早めにとったりすれば、そこまで影響はないと思います。
「セロトニンをしっかり出す」朝型習慣のメリット
——では、しっかり睡眠時間がとれていれば、“朝型”と“夜型”は気にしなくても大丈夫ですか?
山下:確かに、“朝型”の体質、“夜型”の体質ってありますよね。例えば、仕事をする場合でも、夜のほうが外部から連絡がこないので集中しやすく仕事もはかどるという面はあると思います。ただ、人間を動物として考えると、夜に起きているということは、体内リズムはあまり自然とは言えません。もしできるのであれば、“朝型”の体質に移していったほうがいいと思います。
——朝起きて、日光を浴びるという意味でも“朝型”のほうがメリットがあるということでしょうか?
山下:そうですね。よく、「夜10時から朝の2時までが、睡眠のゴールデンタイム」だと言われていますが、成長ホルモンが出る時間は、眠ってから3時間後ぐらいがピークです。つまり、眠り始めた時間が関係してるんですね。とはいえ、「朝日が昇って、腸が動き出す」という体内リズムは、地球と太陽の関係が変わらない限りはずっと一定です。そういう意味で、夜型のスタイルは体内リズムとかみ合いません。
それに、日光を浴びる時間が遅くなると、“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンが出る時間も遅くなってしまいます。だから、できれば、太陽の動きに合わせた生活リズムが自然ですし、体にも負担がかからないと思います。
——成長ホルモンは、大人も出るんですね。
山下:大人にとっても、成長ホルモンはとても大事です。成長ホルモンが出ないと、脂肪の代謝がうまくいかず、太りやすくなります。あとは、筋肉をつくることにも関係しています。将来、筋力が弱って寝たきりにならないためにも、成長ホルモンを意識した生活習慣を心がけるといいと思います。