『私だってするんです』小谷真倫さん 第2回

「私は障がい者である前に、女なの」友人の言葉に思ったこと

「私は障がい者である前に、女なの」友人の言葉に思ったこと

他人のオカズを調査し、「オカズ大辞典」の完成を目指す高校生男女のキャラクターを通し、これまであまり大っぴらに語られることのなかった女性の性事情について、ギャグを交えつつも骨太な漫画に落とし込んだ『私だってするんです』(新潮社)。

元SKE48の加藤智子さん主演の実写化も決まった今、作者である小谷真倫さんに女性のマスターベーションにまつわるお話をうかがいました。

主人公(左)と、作中に登場する女性たち

主人公(左)と、作中に登場する女性たち

セックスの話はするのに、なんで?

——他の女性もオナニーしてるんだ、って気づいたのはどんなタイミングでしたか?

小谷真倫さん(以下、小谷):姫野カオルコ先生の作品を読んだときと、山田詠美先生の『ひざまずいて足をお舐め』(新潮社)を読んだときです。

——どう感じました?

小谷:あ、1人じゃないんだ、ほかの女性もやっぱやるんだと思いました。仲間! 仲間! みたいな(笑)。

——それを知った後、友達とそういう話をしましたか?

小谷:やっぱりしにくいですよねぇ・・・・・・。でも、若干気になったから「(マスターベーション)してる?」みたいに聞いたりもしたんですが、「やらないよ」って返されて終わり。

——恋バナとかは事細かにするんですけどね。どこそこの誰とチューしたとか。

小谷:そういう話ってけっこう自己顕示欲というか、「自分がこんなにも好かれている、大切にされている」という主張だったりもするじゃないですか。でも、マスターベーションしてます、と言うと、「え……ひとりで?」みたいな反応が返ってくるだけで、承認欲求は満たされない。だからしないのかなと。

——「彼氏がいない=セックスできないからオナニーしている」みたいな偏見もありますし、そう思われるのが嫌で言えないというのもあるかもしれません。

小谷:そうですね、それで口を閉ざす人は少なくないと思います。

ちまたにあふれる性に対する誤解

——こういう偏見というか思い込み……直に経験したことありますか?

小谷:あります、あります。20代のころ、バーで飲んでたんですよ。そしたら中年のおっさんが「よう、姉ちゃん」みたいな感じでナンパしてきて、ラブホテルみたいなところに誘ってきたんですけど、「今日はマスターベーションする日と決めているので、申し訳ない!」と言って帰ろうとしたんです。そしたら「そんな寂しいことすんなよ、だったら俺としろよ」と!

——うわあ……。

小谷:「パイプカットしてるから大丈夫だぜ、俺は。イカせられるぜ」……そんなこと言ってましたね。

——ドン引きですね。仮にその人とのセックスが気持ち良かったとしても、それとオナニーの気持ち良さは天秤にかけられるものじゃないし。

小谷:全然違うし! でも、世間ではけっこう、彼のみならず、そういう考え方をされている方がいるんじゃないかと思うんです。実際、「1人でやるなら俺とやろうぜ」「やってやるよ」みたいなスタンスの男性にけっこう出くわしてきました。

——そういう、性に関する誤解って、ほかに感じたことありますか?

小谷:この間読んだ本に、女性が実際に自分でしてる率っていうのは、全体の30%にも満たないんじゃないか? みたいなことが書かれてましたね。

——え……そんなことあります?

小谷:年齢によるのかもしれませんけどね。60歳以上の女性を全員母数に入れていたら、そんな数字も出るのかもしれない。この間、若い青年が「女性も(マスターベーション)するの??」「30人中3人くらいしかしないかと思ってた」って言ってたんですよ。それはないと思うって答えましたけど。

——もしかすると、女性が自分のしていることをオナニーだと思ってないケースもあるかもしれないですね。ちょこちょこっと触るくらいだから、「オナニーしてますか?」のアンケートで〇をつけないとか。

小谷:そうですね、そういうケースもあると思います。

自分の性欲を認める

——作品内で描き切れなかったことなどあれば教えてください。

小谷:私の友人で、難病で寝たきりの方がいて——最近亡くなってしまったのですが——その方が自分の性欲について知ってほしいと言っていて。「私は障害者だけど、もちろん性欲はある。でも、寝たきりで寝返りさえも難しい状態なので、ネットのチャットで男の人を興奮させて、その人を満たしてあげられたら、自分も性的に満たされる」というようなことを言ってくれたんですよね。自分の体に触れずとも性的に満たされる。これがセックスなのかマスターベーションなのか私にはわからないのですが、そういうことをしていると。

——打ち明けられたとき、小谷さんはどう感じましたか?

小谷:やっぱりみんな人間なんだな、というか。人間としての性的な喜びというのは共通してみんなが持っているし、それぞれのやり方がある。その人はネットを通して人を満足させることによって、自分を満たすやり方を自分で作ったんですよね。

——自分の性欲を認めることで主体的に動けるようになって、自分を満たすやり方を見つけられたのでしょうね。作中では、性暴力にあった子の話や、子宮内膜症の女性が性欲減退したという話など、ヘビーなテーマにも触れてらっしゃいましたが、あれはもともと入れようと考えていたのですか?

小谷:作る過程でこういう話も入れようというのは考えていました。子宮内膜症のほうは、割と実話というか……。

——ご自身の経験ということでしょうか?

小谷:そうですね。それでまったく性欲がなくなるということの寂しさを感じたので、それも描いて。性暴力の話も、レイプではないのですが嫌がらせを受けた記憶があって、こういうことも描いておこうと思いました。

——性暴力の話では、男の人とたくさん寝て、「取り込む」ことで復讐している女性が描かれていました。傷つけられたことを認めたくなくて、自分は振り回している側、支配している側にいるんだと言い聞かせる感じ。「取り込む」という表現が印象的でした。

小谷:どうしても我々は受動的な性、される側、という感じなのですが、する側になりたいという気持ちも持っていたりするんですよね。

——だから挿入される、ではなく「取り込む」、なんですね。能動的に動くという意味で、納得しました。

最終回は1月31日(金)公開予定です。
(取材・文:須田奈津妃、編集:安次富陽子)

SHARE Facebook Twitter はてなブックマーク lineで送る

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

「私は障がい者である前に、女なの」友人の言葉に思ったこと

関連する記事

編集部オススメ

仕事と恋愛、キャリアとプライベート、有能さと可愛げ……女性が日々求められる、あるいは自分に求めてしまうさまざまな両立。その両立って本当に必要?改めて問い直すキャンペーンが始まります。

後悔のない30代を過ごしたい。ありとあらゆる分野のプロフェッショナルに、40歳から自分史上最高の10年を送るために「30代でやっておくべきこと」を聞いていきます。

記事ランキング