持つべきは経験豊かな友人。職場の飲み会では絶対聞けない話【小島慶子】

持つべきは経験豊かな友人。職場の飲み会では絶対聞けない話【小島慶子】

「「πな人生を生きていく。」」
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恋のこと、仕事のこと、家族のこと、友達のこと……オンナの人生って結局、 割り切れないことばかり。3.14159265……と永遠に割り切れない円周率(π)みたいな人生を生き抜く術を、エッセイストの小島慶子さんに教えていただきます。

第25回は、同世代の友人たちとの楽しいひと時の中で感じた「大人になること」について。夫婦の財布問題から、モテる女の要件まで大人のガールズトークが展開されました。

愉快な仲間と女飯

忘年会スルーとか新年会スルーが話題になっていますが、同じ時間とエネルギーを使うなら、気の合う仲間と集まった方がいいに決まっていますよね。友達との特別オチのない会話ほど楽しいものはありません。私も先日、そんな愉快な女飯を堪能してきました。

とある和食屋の個室に集まったのは40代の友人たち3名。みんな頭が良くて面白くて、自分でビジネスを興すような魅力と才能に溢れているだけでなく、離婚や婚約破棄や人生のあれこれ経験済みで、いろんなリスクをとってこの荒波を生き抜いている猛者たちです。

ふと見ると、遅れて登場した一人の指にごっついダイヤが光っています。聞けば不動産を売却したそうで、このオリンピックバブルでえらい利益が出たのだとか。その一部をこうして豪勢なダイヤに変えるという骨太な発想に惚れ惚れしました。いまだかつてこんなかっこいいジュエリーの買い方をした友人を私は知りません。しかもまさかの普段使い。2カラットはあろうかというダイヤを惜しげもなくハンドクリーム塗れにしています。

そういえば以前、ある大物司会者のおじさんが私のなけなしのエタニティリングを見て気の毒そうに「ダイヤモンドっていうのは、資産として買うものなんだよ?」と教えてくれたっけね。悪かったな小銭にもならないほっそいエタニティで。資産として買うなんて、日本の超上澄みの富裕層だけだろうよと思ったのですが、ついに目の前にお金を石に変えた女が登場したのです。一同そのスケール感に圧倒され、私なぞ思わずブランドのサイトを検索して「石がデカすぎてサイトに価格が載っていない!」と叫ぶ始末。

しかしダイヤに慄く他の面々も、元いた会社の株を持っていたり、新しいビジネスが順調だったりと、それぞれ厚みのある人生を送っているのです。15年間サラリーマンをやって、そのあとは忙しない出稼ぎ生活の身からすると眩しくて仕方がない。もうこの人たちに一生ついていこうと思いました。

お財布事情をパートナーに明かさないオンナたち

やがて話題は夫婦の財布問題へ。経験豊かな彼女たちは、どんなに仲睦まじいカップルにもいつ何時危機が訪れるか分からないことを身に沁みて知っています。だから夫婦の財布を決して一緒にしないというのです。自分がいくら稼いでいるか、貯金がいくらあるかを絶対にパートナーには明かさない。たとえ心の底から愛していても、財布はパンドラの箱と心得ること。なんというドスの効いた生きる知恵でしょうか。これほどまでに血の通った財政指南を私は他に知りません。

確かにお金のことはいろんなトラブルの元にもなるし、あるとわかっても、ないと知れても、二人の関係が拗れかねません。ウートピ読者の皆さんはわりときっちり貯金してそうな感じがしますが、ゆめゆめ彼氏に貯蓄額なんか言わないようにしましょう。年収もはぐらかすのが賢明かもしれませんね。多くても少なくてもです。

同棲しても財布は別にしておくことが肝心。月々の生活費の折半をどうするかとか、お金の流れを明確にしておくのは大事ですが、収入の全てを共有するのはやめておきましょう。お金の話ができる間柄であることと、あけすけに財布の中身を晒すこととは違う、と賢い女たちは教えてくれました。

モテるオンナは清々しく合理的

そんなしっかり者のねえさんたちはそれぞれにパートナーがいますが、これまでいろんな修羅場をくぐっているので、そもそも男に過剰な期待をしていません。

見た目が嫌とかいびきがうるさいとか優しくないとか働かないとか色々文句を言いながらも、恨み言は言わないのです。相手のせいで自分が不幸になったと思うとつい恨み節になりますが、彼女たちは激しく自立しているのでそうはならないのですね。きっと恨み言なんか言うくらいならその前にとっとと別れることでしょう。

これにはハッとさせられました。私は働くのがしんどくなるとつい「夫め、仕事を辞めやがって」などと理不尽な恨みを募らせてしまうのですが、そういうのは本当にいけません。恨んでいる暇があったら行動。働くエナジーに変える方が生産的です。

さて、そんなエネルギッシュでスポンテイニアスなねえさんたちは当然、モテます。

ある恋多きねえさんは、好きになったら速攻で言いに行くそうです。駆け引きして相手に告白させて……なんて手間をかけていたら他の女にとられるかもしれないし、第一デキる女は忙しいので恋愛にじっくり時間をかける暇なんかないのです。だからまずはガッチリ掴みにいく。これまたなんと清々しく合理的な恋愛流儀でしょう。まあ大人の恋愛では相手にお相手がいたり色々と複雑な案件も発生するわけですが、そこもまたうじうじ現状維持するのではなく、奪い取るなり別れるなり、きっちり次の展開に持っていくのが凄いところです。

大人になるって…

同じく厄介な恋愛の経験豊かなあるねえさんは言いました。「人ってとても複雑で、理屈ではどうにもならないものだと思うのよ。だから社会としては夫婦っていう形を規定するしかなかったんでしょうね」と。この言葉の背後にどれほどの割り切れない思いや辛い夜や孤独な涙があることでしょう。人を傷つけたことも、身勝手と知りながら後戻りができなかったこともあるはずです。
 
彼女たちは、傍若無人で欲望むき出しのわがまま女ではありません。人一倍の理性と知性の持ち主であり、仕事を通じて世の中を少しでもハッピーなところにしようと文字通り身を削っている人たちです。ビジネスでは合理的な判断を下せる人も、ままならぬ想いに苦しむことがあるのですね。普段は全く窺い知れないそんな彼女たちの内面に触れることができて、実に感慨深い一夜でした。

大人になるって、言葉にならない思いや物事の深みに触れて、次第に言葉少なになっていくことではないかと思います。個室の壁が割れんばかりによく喋るとびきり面白い女たちも、人の恋路を批判したり詮索したりはしません。それは人一倍ものを考える彼女たちが、悩みに悩んで全力で恋をしてきたからこそでしょう。

持つべきものは経験豊かな友人たち。みなさんも噂話や悪口で盛り上がる職場の飲み会より、リスペクトできる仲間との美味しいご飯を!

【新刊情報】
11月15日、小島慶子さんの新刊『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ! 』(日経BP)が発売されました。

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「πな人生を生きていく。」

オンナの人生って結局、割り切れないことばかり。スパッと決断したり解決したりできない自分はダメ人間かも……と落ち込んでいないで、「π(パイ)な人生」を生きる術を身につけよう。小島慶子さんがアラサー世代に贈るエッセイ。

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