女子のための「手に職」図鑑・華井由利奈さん 最終回 

隣の芝は本当に青いのか。好きを仕事にした人に聞いてみた

隣の芝は本当に青いのか。好きを仕事にした人に聞いてみた

女性の働き方をテーマにした書籍『一生困らない 女子のための「手に職」図鑑』(光文社)を上梓したライターの華井由利奈さんへのインタビュー。

第1回は「手に職」とは何かをメインに、第2回は30代女性が抱えがちな悩みをメインにお話をお聞きしました。今回は、華井さんの体験談をもとに、「好きを仕事にする」ことについてうかがいます。

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好きな仕事は会社を辞めずに

——とりあえず今の仕事を続けて生活を担保しながら、好きなことを仕事にしていく方法はあるのでしょうか。

華井由利奈さん(以下、華井):あると思います。私自身がそうでした。田中和彦さんの『「好きな仕事」は会社を辞めずにやりなさい!』(日本能率協会マネジメントセンター)という本のタイトルが好きで、それを見ては、会社を辞めてライターに専念したくなる気持ちを抑えて「今の仕事は辞めないぞ!」と思っていました。

また、当時通っていたコピーライターの講座で澤本嘉光さんに「本を書きたいなら、まずは今の仕事を頑張れ。そうすれば道はつながる」というようなことを言われまして……。それで仕事を続けながら週末に外部のセミナーに通ううちに、本を出版するチャンスを得たんです。

——外部のセミナーに行き、人と会うという行動を起こしたんですね。

華井:はい。今の仕事を続けながら、「好き」を仕事にしたい場合は、とりあえず外部のセミナーや勉強会などに行ってみるといいのではないでしょうか。

とはいえまだ駆け出しの私の例だけだとあまり参考にならないと思うのですが、話を聞いた人のなかには、通信教育で資格を取って研究職から司書になった人や、働きながら教員免許を取得した人もいました。家族に反対されると思っていたけれど、勇気をもって話してみたら意外にすんなり受け入れられたらしいですよ。

——自分のなかで完結させないで、口に出して誰かに言ってみることが大事なのかもしれません。会社員からフリーライターとして独立して、華井さんは今、仕事が楽しいですか?

華井:実は6年前、社会人2年目の時にどん底を味わうことがありまして……。その経験があるので今はちょっとしたことでも楽しいと思いますし、好きじゃない業務もいっぱいあるけど満足って感じです。

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会社に行くか死ぬか、まで追いつめられていた

——どん底とは。6年前に何があったのでしょうか……?

華井:フリーライターになる前に在籍していた印刷会社はデザイン業務をメインにしていたので、コピーライター職で入社した私もデザイン業務をやることになり、はじめて触るmacやデザイン系のソフトに本当に苦しめられました。0.1mm単位で揃える細かい作業ができなくて怒られて、残業も多くて……。

今思うと、うつに近い状態になっていたと思います。友達と飲んでいて、何気なく「最近、仕事どう?」って聞かれたときに「楽しい」と言えずに、わーっと泣き出しちゃって、みんなに心配されました(苦笑)。あのときがどん底でしたね。会社に行くか死ぬか、というくらい追いつめられていました。

——やりたくもない仕事に苦しめられたんですね。コピーライターの仕事のほうはどうだったんでしょうか。

華井:一晩で200本コピーを書いたこともありますし、「お前のコピーなんてクソだ」って言われたりもしました。

——THE ブラック臭がすごい。

華井:当時は相当ダメだったんだと思います。自分の表現ばかりを追い求めていたので……。そういう書き方はダメなんだって一回打ち砕かれて、お客さんのためにニーズに合わせて書くことが大事なんだって思えるようになったから、今こうしてライターとしてお仕事がもらえて、本が出せたんだと思います。

第1回でもお話しましたが、好きなことを仕事にできるかどうかって、「仕事相手の要望に、自ら積極的に応えたいと思えるか否か」なんです。昔の私はそれができていなかった。

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隣の芝は本当に青いのか

——本の帯に「夢だけじゃ続けられない」とありますが、夢や好きなことを仕事にしていても、必ず好きじゃない業務が付随してきたりしますよね。実際の業務のなかで好きなことが占めるのは1割程度で、ただその1割が「めっちゃ楽しい!」という感じなのではないかと勝手に思っているのですが……。

華井:わかります! 私はライターとして仕事をしていますが、実際の業務は取材の音声を文字に起こしたりする作業や請求書の作成、資料集めなどなど、ほとんどが地味な作業だったりします。しかも、今後ずっと記事を書き続けられる保証もない。赤字になると不安になって、なんで会社辞めちゃったんだろう……と思うこともありますし(笑)。

ただ、文章を書いていると、ときどき自分でも思いつかないような表現がスルスルっと思いついたりする瞬間があって、あれがあるから今の仕事が好きと言えるのかもしれません。

——ほかの人の楽しそうな部分、幸せそうな部分だけ見て「隣の芝は青い」と思っちゃいけませんね。白鳥も水面下では足をバタバタさせているわけですし。

華井:そうそう、隣の人は「うちの芝は青くない」って思ってるかもしれないですよ! 私はよく「夢がかなったね」と言われるんですけど、実はかなわなかった夢もたくさんあるんです。「夢はあったほうがいい」という風潮があるじゃないですか。私も夢があるほうがかっこいいと思ってたので、「あんなことやりたい」「こんなことやりたい」と周りにあれこれ言っていたから、それがひとつでも実現すると夢がかなったように見えているだけなのだと思います。

私がもっともかなうことを望んでいた夢は、小説を書くことと、漫画の編集者になることでしたが、それが最上級のかたちでかなったことはありません。でも、ライターとして書く仕事はできていて、それで「よかったね」と言ってもらえるんですよね。

——今、好きなことを100%仕事にできていなくても、道の途中にいるという可能性もありますし。

華井:たしかに、夢や好きなこととは直接関係なさそうな仕事でも、のちのち「あの経験があったからこそ新たな夢に挑戦できる」と思える日がくるかもしれません。過去の自分が今の自分を見たときに「よかった」って思ってくれたら、夢がかなっていなくても、今の自分でいいかなと思えるのではないでしょうか。

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(取材・文:須田奈津妃、撮影:大澤妹、編集:ウートピ編集部 安次富陽子)

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隣の芝は本当に青いのか。好きを仕事にした人に聞いてみた

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