「生命科学アカデミー」米井先生に聞く 第5回

抗加齢医学の研究者が実践するアンチエイジング法って?

抗加齢医学の研究者が実践するアンチエイジング法って?

「人生120年時代のわたしたちへ」
の連載一覧を見る >>

健康に美しく生きるために、最先端の研究を学ぶYoutube番組「生命科学アカデミー」を配信する協和は、同番組に同志社大学生命医科学部の米井嘉一教授を招き、「良いAGEsと悪いAGEs!」ほか全5回を配信。米井先生に、老化の原因となる、体のサビ「酸化」と体の黄ばみ「糖化」が起こるメカニズムと対策法についてたっぷりとお話しいただきました。

米井先生(左)と、聞き手で生命科学アカデミー学長のHIROCOさん(右)

※本記事はYouTubeチャンネル「生命科学アカデミー」で配信された内容を、ウートピ編集部で再編集したものです。

よい睡眠が糖化ストレスを緩和する

――糖化ストレスが睡眠におよぼす影響について教えてください。

米井嘉一先生(以下、米井):糖化ストレスをいろいろ測った結果、3つの要素の影響が大きいことがわかりました。1つめは喫煙、2つめはお酒の飲みすぎ。適度な飲酒は大丈夫です。そして3つめが睡眠不足です。これが大きい。睡眠の質が低下すると、AGEs*とか糖化ストレスの生成物がたまりやすくなります。

*…AGEs(エージーイー。終末糖化産物)については、第1回参照

——睡眠の質の良しあしは、どう把握すればいいんですか?

米井:昼間眠いかどうかですね。睡眠時間がひとつの目安になります。理想は5サイクル睡眠*の7時間~7時間半。最低でも4サイクル睡眠の6時間はとってほしいと思います。あと、我々はメラトニンの分泌量を目安にしますね。睡眠がたっぷりで質がいいと、メラトニンがたっぷり出ます

*ノンレム睡眠とレム睡眠の1サイクル(60~90分)

——それは検査でわかるんですか?

米井:一番正確なのは、24時間蓄尿して、その中のメラトニン代謝物を測ること。検査会社でもできるように、最近準備が進みました。

メラトニンには、AGEsを分解促進する作用があるんですよ。それから、認知症の原因となるアミロイドβという物質があるんですが、メラトニンは、それが溜まらないように分解する作用があります。実際に、睡眠の質が良い人のほうが認知症になりにくいというデータがあります。

寝る前スマホは血糖スパイクのもと

——血糖スパイクは万病のもとというか、老化にもつながります。どのように睡眠をとり、どのように食事をとると、血糖スパイクが起きるんでしょうか?

米井:5サイクル睡眠の7時間寝たあとに朝食をとると血糖スパイクが起きないんですが、3、4時間睡眠の生活に追い込まれると、食後の血糖スパイクが起きやすくなります。朝食後だけでなく、昼食後も血糖スパイクが起こりやすくなりますね。

——いつもはしっかり寝てるけど、たまたま昨日は3時間しか寝られなかった、という日の次の日は気をつけたほうがいいということですね。

米井:そうです。そういう生活が続くと、血糖スパイクが非常に起きやすくなります。

——眠るときに睡眠の質を上げる方法はありますか?

米井:僕もやってるんですけど、部屋を真っ暗にして寝ること。アイマスクを使うとか。メラトニンって、光が当たると分泌が止まっちゃうんですよ。だから、寝てる間はアイマスクでしっかり覆ってメラトニンが止まらないようにしています

そして、朝になったら光を浴びて、メラトニンの分泌をピタッと止める。これによって、体内時計と地球の自転周期がピタッと合うわけです。

——テレビをつけながら寝たり、スマホを見ながら寝たりとかはダメですね。

米井:スマホを見てると、メラトニンの分泌が止まっちゃいます。

不快な音をシャットダウンし、メラトニンを出す

——せっかくメラトニンが老化物質を分解しようとしてるのに、自分でそれを止めちゃってるということですね。気をつけていきたいです。ほか、普段先生が実践されているアンチエイジング法などがあれば教えてください。

米井:睡眠時にアイマスクをして、あとは口閉じテープを使っています。僕ちょっと鼻閉というか、鼻詰まりがあるので。市販のテープがないときは絆創膏とかセロテープを口に貼って寝ています。

最初の5分はちょっと鼻が苦しい感じがあるんですが、だんだん広がっていって、鼻呼吸で眠ることができます。朝起きて口が乾いている人は、口呼吸になってるかもしれないので、無理やり鼻呼吸に変えたほうがいい。インフルエンザにかかりにくくなるし、花粉症がよくなったという話もあります。

——ほかにもありますか?

米井:今、僕が研究してるのは、調音パネルでの音の調節なんですよ。不快な音は吸収して快適な音を残すとか、会話のときに聞きやすい音は残しておき、不要な雑音を吸収するとか。たとえば、聴覚過敏症といって、音が苦手な子がいるんですね。その子たちがパニックを起こさずに快適に過ごせるための、不快な音が聞こえない部屋を作るために、調音パネルを使います。ほかには、音響ホールとか、耳が不自由な高齢者の方の会話を助けるためにも、必要な場所に設置されていますね。

そういう、不快な音をシャットダウンして快適な音を残した空間を寝室にすると、すごく眠りが深まります。メラトニンがいっぱい出るというデータが出ています。

(完)

■動画で見る方はこちら

SHARE Facebook Twitter はてなブックマーク lineで送る

この連載をもっと見る

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

抗加齢医学の研究者が実践するアンチエイジング法って?

関連する記事

編集部オススメ

2022年は3年ぶりの行動制限のない年末。久しぶりに親や家族に会ったときにふと「親の介護」が頭をよぎる人もいるのでは? たとえ介護が終わっても、私たちの日常は続くから--。介護について考えることは親と自分との関係性や距離感についても考えること。人生100年時代と言われる今だからこそ、介護について考えてみませんか? これまでウートピで掲載した介護に関する記事も特集します。

記事ランキング