「バレエに親しもう」第3回

何を着ていく? 持っていくものは? バレエ鑑賞に行くことが決まったら…

何を着ていく? 持っていくものは? バレエ鑑賞に行くことが決まったら…

5月11日に新刊『名曲の裏側:クラシック音楽家のヤバすぎる人生』(ポプラ新書)が発売されたばかりの音楽プロデューサー・渋谷ゆう子さんによると、今年はバレエの当たり年だそう。「バレエ」と聞くとなんとなく敷居が高い気がしてしまいますが、この機会にバレエ鑑賞に出掛けてみては? 「バレエに親しもう」と題して、渋谷さんにバレエの歴史や鑑賞の仕方について3回にわたって解説していただきます。

「バレエ 公演 2023」で検索

バレエは高尚な趣味というイメージで近づき難い。そう思われている方も多いと思います。でも実は、バレエ鑑賞は初心者でも楽しめる、とってもわかりやすい舞台でもあるのです。感情や状況をセリフや歌で表わすのではなく、体を使って表現するので、踊りが示すことがらを見たままに感じられる、とても受け入れやすいものなのです。もちろん、バレエの歴史やその物語の詳細、動きの細かな意味や、技の種類、音楽のことを知っていれば、ますますその面白さを得られるようにもなります。

前回は、バレエの成り立ちに加え、チャイコフスキー作曲の『白鳥の湖』についてお話しました。

今回はいよいよ、公演に行くためのハウツーと、持ち物リストなどお役立ち情報、そして近代から現代のバレエについてお話しします。

バレエのあれこれを知り、いよいよ気持ちも高まってきて、さて実際にバレエを見に行きたいなと思ったら、まずはインターネットで「バレエ 公演 2023」と検索をしてみましょう。近隣の都市の名前を入れてみてもいいですね。バレエの大きな公演は、ステージにある程度広さと奥行きがないとできませんので、クラシック音楽のオーケストラの公演をしているような各都道府県の一番大きなホールにまずは焦点を当ててみましょう。

東京であれば、新国立劇場やオーチャードホール、東京文化会館などがその対象となります。大阪や名古屋でも海外のバレエ団の来日公演が行われますので、そうした施設を検索してみるとよいでしょう。また、もう少し小さめのホールでも公演がありますので、まずはお近くの施設から調べてみることをおすすめします。

生演奏で聴きたい、総合芸術のバレエ

バレエ公演は音楽を必要とします。有名な演目はオーケストラで演奏されますので、ステージの前の床下部分に大きな空間をとっています。これをオーケストラピットと呼び、そこに指揮者と演奏者が入って生演奏をします。この空間がなくても、あらかじめ録音をした音楽を流すことでバレエ公演を行うこともあります。

これはホールの造りに関係しますので、一概にどちらが良い、悪いとは言えないのですが、生演奏でのバレエに接する機会があればぜひ鑑賞してもらいたいと思います。というのも、このオーケストラは、その日、その時、その瞬間のダンサーの状況を見ながら、指揮者がオーケストラの演奏を巧みにコントロールし、公演の質を高めているからです。卓越したバレエやオペラの指揮者は、常にステージ上の状況を目で確認し、少し早めにダンサーが飛び出せば、それに合わせるように指示を出し、音楽が踊りと合うように演奏を調整します。また、ダンサーの踏み出しや回転、ジャンプの助走を見て、音楽の出だしやテンポも合わせることができるのです。

オーケストラもバレエやオペラの公演になれた奏者たちは、こうした転換にも巧みに合わせていく力量を備えています。音楽だけを聴くのとは違って、生の舞台を一緒に作り上げるバレエの音楽を聴く、そして観るのも楽しみのひとつです。ぜひお近くでこうしたバレエの公演があれば、迷わず生演奏を選んでほしいと思います。公演の詳細に指揮者の名前とオーケストラの名前が入っていれば生演奏の舞台です。チェックしてみてくださいね。

「見やすさ」が大事、席の選び方

バレエ公演が調べられたら、次は席を決めましょう。通常、こうしたホールは見やすい席のカテゴリーから価格が高く設定されています。音楽だけを聴くコンサートとは違って、舞台を見たいバレエ公演ではやはり「見やすさ」が大事。かと言って、SS席、S席など良い席ほど会員の先行発売で完売のことも多いもの。そこで、ホールの座席見取り図などを見て、二階席や三階席の正面前列、またはステージを斜め横からみる最前列などもよいでしょう。ホールによっては、傾斜角度が大きく、上のほうでもしっかり見える場合もあります(逆に傾斜が緩やかすぎて、前のほうの席でもステージが見づらい場合もありますが)。とにかく初めてのときは思い切って、良い席、見やすい席を取りに行くことをおすすめしたいです。

何を着ていく? いつもよりちょっとオシャレに

さてチケットも手に入ったら、いよいよ出かけましょう。まずは何を着ていけばよいか迷いますね。基本的には通勤で着ていく服で全く問題ありません。ただバレエ観劇のお客さまたちはいつもよりオシャレにしている人が多いようです。ワンピースやエレガントなジャケット姿の方がよく見られます。舞台の上の美しい姫や王子様役のダンサーに「お会いする」気持ちになるからかもしれません。もちろんデニムやTシャツも問題ありませんが、ホール内の空調に柔軟に合わせられるよう、ジャケットやカーディガン、季節に合わせた素材の大きめのストールなど羽織ものがあると温度調整だけでなく、装いのプラスアルファとしてなど、いろいろと安心です。ただし、ドレスアップしすぎ、結婚式参列ほどの正装やイブニングパーティーほどの華やかさは少しやり過ぎ感が出て周囲と合わず、落ち着かないかもしれません。いつもより、ほんの少しオシャレに、それくらい気楽に考えて、楽しんで向かいましょう。

エレガントな装いや、可憐(かれん)な雰囲気と豪華な宮殿のようなバレエはやっぱり気後れしますという方はぜひ、近代から現代のバレエに目を向けてください。私自身が大感動してバレエ観が変わった『フランケンシュタイン』や、モーリス・ラヴェル作曲の『ボレロ』、ストラヴィンスキー作曲の『春の祭典』などは、優雅なバレエとは一線を画す面白さがあります。音楽も決して優雅な、いわゆる一般的に連想されるクラシック曲ではなく、無調(調性のない自由な音楽)でメロディがはっきりしなかったり、奇妙なリズムさえあったりします。ダンサーも裸足のこともあれば、決まった振り付けがなかったり。自由な発想で演じられるこれらのバレエを好んで観る方も多いのです。こうした演目の場合、客席もコム・デ・ギャルソンなどの個性的なオシャレの方が目立ちます。

オペラグラスで足元や表情もチェック

それから、バレエの観劇で忘れてはならないのはオペラグラス、いわゆる双眼鏡です。6倍から10倍くらいのものをお使いになる方が多いようです。踊る足元や表情をしっかり見られるので、ぜひ持っていくことをおすすめします。また、出演者のプロフィールや演目が詳しく解説されているプログラム冊子は写真も多く上質の紙ですてきな作りです。これを大事に持って帰れるよう、そしてオペラグラスやストールなどを入れておけるようにバッグは少し大きめが使いやすいでしょう。

バレエ観劇は、数百年にわたって人々に愛され、熟成してきた芸術です。鍛錬の末に持ち得たダンサーたちの身体表現力。それらを音楽と衣装、舞台美術とともに構築するファンタジーに観客を引き込む夢の世界です。その空間にいる自分を想像するだけでも、心躍りませんか。今年はぜひバレエの世界に一歩踏み出してみてくださいね。新しい種類の心の豊かさが必ずあなたに訪れるでしょう。保証します。

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