池袋対談・最終回

「カルチャーは違うのが当たり前」外資系企業から池袋の職員になって思うこと

「カルチャーは違うのが当たり前」外資系企業から池袋の職員になって思うこと

豊島区で「わたしらしく、暮らせるまち。」推進室長をつとめる宮田麻子(みやた・あさこ)さん(48)。

これまでの連載では、豊島区の取り組みや池袋の魅力などについて、豊島区長公認の池袋愛好家でフリーライターの小沢あや(おざわ・あや)さんとの対談の様子をお送りしてきました。

最終回の今回は、日本マイクロソフトで広報・マーケティング担当を経て、一般公募から区の職員となったという宮田さんのキャリアと仕事観に迫ります。

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グローバルからローカルへ 視点を変えた理由

小沢:宮田さんはもともとは外資系IT企業にいらっしゃって、公募で自治体職員に転身したそうですね。大幅なキャリアチェンジですよね。ウートピの読者も働いている女性が多いと思うので、宮田さんのキャリアの積み方について伺いたいです。

宮田:マイクロソフトには12年いました。最先端のテクノロジー製品やサービスを次から次へと市場に提供する。マーケティングのスピードも早かったし、広報の仕事も性分にあっていて面白かったんです。

でも、誰もが知っているグローバルブランドもいいのですが、ローカルや地域に光をあてたPRをしてみたくなっている自分に気が付いたんです。そこで会社を辞めて、一旦フリーになりました。

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小沢:潔い! フリーランスも経験されていたんですね。

宮田:中堅企業や団体、長野の地域PRなどを、1年半くらいお手伝いしていました。その中で、自分の意識も少しずつ、グローバルからローカルにシフトしてきました。そんなときに、たまたま豊島区の公募のことを知ったんです。2016年のことでした。

小沢:本当にたまたまだったんですね。当時は豊島区が消滅可能性都市とされて、行政的にも厳しいタイミングだったのではないでしょうか?

宮田:民間から人材募集するなんて、豊島区の本気度を感じました。自分が住むまちに何らかの形で貢献できる仕事ってあまりないですから。すぐに応募しました。

小沢:IT企業から自治体って、仕事の進め方も相当なギャップがあったのでは? あくまでも想像なんですが、業務ツールが充実していたところから、FAXやメールでのやりとりがベースになったとか……。

宮田:そうですね。予想以上のカルチャーショックでしたね(笑)。デジタルからペーパー中心のアナログ文化。資料の作り方、会議の進め方から物事が進むスピード感も。

でも自治体の中では豊島区はIT化は進んでいる方かと思います。管理職はタブレットも支給されますし。先日試験的にリモートワークもしましたが、まだ職場の皆さんは抵抗あるみたいです。これからですね。

小沢:意外と先進的なんですね。誰かが率先して使わないと、みんな様子を伺ってしまいますもんね。カルチャー的な部分でのとまどいは?

宮田:もちろんカルチャーは違うのですが、違うのが当たり前なので、戸惑いというのとも違うような……。あまり行政組織に関する予備知識なく、まっさらな状態で飛び込んだのがよかったのかもしれません。変に知識があったら、構えてしまったかも。

小沢:異業種転職ならではの強みですね。空気を読み過ぎない心、大切だなあと思います。

宮田:行政はいろんな組織が縦割りで動きがちなので、民間のマーケティング的発想があまりないですよね。そこは、自分がこれまでにやってきたことが活かされていると思っています。

小沢:宮田さんが手がけられた具体的な施策について教えてください。

宮田:まずは、情報発信の部分で「としまscope」というオウンドメディアを立ち上げました。広報紙やHPなど行政からの情報って、まだ住民との距離がある気がします。情報を探している人には届いているけれどまだまだ届けたい人に届いていない。スマホやウェブなどでの情報提供に加え、コンテンツもいわゆるお知らせなどの情報だけでなく、区内に住む人、働く人にフォーカスし、読み物としても充実したものになるように心がけています。

小沢:行政のホームページって、PDFリンクが並んでいたり、読みづらいことが多くて。スマホで気軽に地元の情報収集ができるのはうれしいですね。

宮田:もう一つは、住民、行政、企業、大学が一緒にまちづくりを考える「としまぐらし会議」。いわゆる住民vs行政のような構図でなく、フラットに地域に関わる場があればいいなと。実際、定員30名を大きく超える50名以上の参加があり、今までで農園プロジェクトや多世代交流の場づくりなど10のプロジェクトが誕生しています。

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仕事を選ぶ基準は、自分がやりたいことと、できること

小沢:ウートピは働く女性をメインターゲットとしたニュースサイトなので、読者も「働く」ことに興味があると思うのですが、宮田さんが仕事を選ぶ基準は何ですか?

宮田:今回は、自治体の中の経験ってなかなか得られないから、プラスになると思って飛び込んでみました。でも、基本的に仕事は自分ができることベースで選ぶタイプですね。

小沢:「やりたいこと」優先ではないんですか?

宮田:やりたいことと、できることのハーフハーフかな。自分のスキルや経験がどう活きるかを常に意識しています。キャリアについては、わりとドライかもしれませんね。

小沢:それは、やはり転職が当たり前の外資系文化の中に長くいたからでしょうか。

宮田:うーん、そうですね。いつクビになるかわからない、外資はヘッドハンティングの文化。業界動向にも敏感になるんですね。直近の予定がなくても、声がかかれば他社の面接を受けてみるとか。ずっと同じ企業にいるよりも、外の環境に触れることで自身のキャリアを客観視することもできますしね。

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計画は崩れるもの キャリアプランより自分の感覚を信じて

小沢:「もう30代だから」「女性だから」と、転職をためらうというか、一歩踏み出すことに躊躇(ちゅうちょ)してしまう読者も多いと思っているんですが、そういう考えはしないですか?

宮田:あまりないですね。私は「X才までのキャリアプラン」「X才までにこれをしよう!」と考えたことがあんまりないんです。やや無計画すぎる(笑)。 やっぱり、人生って立てた計画通りにはいかないものですよね。

子どもを産みたいと思った時期もあったんですけど、こればかりはタイミングですよね。私の場合は望むようにはなりませんでしたけど、すべて結果オーライと、今は思えるようになりました。

その点、今の若い女性、みんな本当にしっかりしていると思いますよ。わたしは、旅行もキャリアも、あまり前もって決めずに動いちゃうタイプ。自分の感覚を信じるようにしています。

小沢:世間には、子持ち転職は不利だとか、35歳転職限界説という言説がたくさんありますから、ある種の”呪い”にかかっているのかもしれません。私自身、そういう思考に陥ってしまうときもあります。

宮田:専業主婦だって高スキルな人もいます。だからこそ、フルタイムだけでない働き方も考えなきゃいけないですよね。私が30代のころは、まだ働き方改革という言葉も今ほど聞こえてこなかった気がします。子どもかキャリアかのような二択でなく、多様な選択肢が増えるのはいいことですよね。

小沢:今は選択肢が増えたからこそ、悩んでしまう部分も正直あります。

宮田:行動にブレーキをかけてしまうのは、自分自身なんじゃないかな。ロールモデルがいないと言うけれど、そんなに必要かな? とも思っちゃうんです。自分は自分だから。

小沢:「ロールモデル」と言うより、家事はAさんくらい気楽に、仕事の進め方はBさん……みたいに、それぞれ部分的に参考にしていけたらいいですよね。「この人のやり方がいいな」と思ったら気軽に真似する、くらいのノリで。

宮田:いろいろな人の働き方、考え方に触れることが大事ですね。振り返ると、自分が今までやってきたことは全部つながっているな、と思います。キャリアもプライベートも、そのときに自分がやりたいこと、できることをやってみればいい。計画をきっちり立てなくても、意外といけるものです……とあまり参考にならないかな(笑)。

小沢:はい! 素敵なお話をありがとうございました。

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(取材:小沢あや)

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