「部下ができたけれど、なかなか心を開いてくれない」
「正しいことを言っているはずなのに相手とぶつかってしまう」
「世代も性別もちがう”おじさん”と話すのが苦手」
といった働く女性なら誰でも一度はぶつかったことがあるであろうコミュニケーションの悩み。
表面上は社会人として最低限のコミュニケーションはできていても、実は伝え方や会話で悩んでいるという人も少なくないのではないでしょうか?
そんな働き女子の悩みを解決すべく、このほど初の著書『3秒で心をつかみ10分で信頼させる聞き方・話し方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を上梓した、日本テレビの解説委員・キャスターで、現在は夕方の報道番組『news every.』(月~金曜午後3時50分~)に出演中の小西美穂さん(48)に全5回にわたって話を聞きます。
これまで総理大臣や政治家、エコノミスト、俳優やタレント、スポーツ界の著名人など各界のエキスパートなど、のべ1700人に話を聞いてきたという小西さんがつかんだ会話のコツとは?
第1回目のテーマは「コミュニケーション成功の近道」です。
コミュ力がアップする「ほんわか」って?
——本日はよろしくお願いいたします! ウートピの読者は30代の働く女性が中心で、社会人経験もある程度は積んでいるので、一応のコミュニケーションはとれているとは思うんですが、「伝え方をこうすればもっとスムーズに進むよ!」ということがあれば伺いたいなと……。
そのキーワードとして小西さんが書いてらっしゃった「ほんわか」というのがあるのかなと。まずはそのあたりから伺いたいです。
小西美穂(以下、小西):初対面の方と生放送でお会いして、一回勝負で話を引き出すというのが私に求められていたことなんですね。失敗も重ねてきて、どうしたら相手が心を開いて話してくれるのかな? と考えたときにわかったのが、相手をほんわかさせるということだったんです。
一言で言ったら「リラックスしてもらう」ってことなんでしょうけれど、陽だまりの中で寝転がっているイメージ。心が和んで、のんびりと落ち着いた気分になること。そういうコミュニケーションを作るのが一番近道だなって実体験で感じたんです。
例えば、今日みたいな雪の日にわざわざ会いに来てくださった方にあいさつを済ませていきなり仕事の要件を切り出すというのはまだ「ほんわか」が足りないと思うんですよね。
「ちょっと足場が悪かったでしょう」とか「まだ雪が降っていますか?」とか、ちょっとでも相手を思いやったり、相手の立場に立ったりする話ができれば、相手も「私はすごく大事にされている」と感じてくれると思うんです。
——確かにそうですね、さっき初めて小西さんにお会いしたときに天気の話をしてくださって、緊張が解けました。
小西:なんだか言わせてしまったみたいですみません(笑)。
番組でお迎えしてきた方々は、お忙しい中時間を作ってくださって番組に出てくださる。それに対してすごく感謝の気持ちがあるので、それをまず言うことって大事だと思うんです。
——なるほど。仕事の場面だと「ちゃんとやらなきゃ」という気持ちと「舐められてはいけない」という気持ちがあって身構えちゃうんですよね。あと「デキる人に見せたい!」という欲もあって……。だから、つい本題を切り出したくなっちゃうんです。
小西:気持ちはすごくわかります(笑)。でも、それは、二つ三つあとでいいと思うんです。まずは、相手と心が通じ合うことが大事かなと。
最初から「この人デキるな」ということを感じさせる必要はなくて。本のタイトルの「3秒で心をつかむ」というのが大げさなんですが、最初のちょっとしたことでいいんだよ、という思いを込めて書きました。
相手の話には“クッションの言葉”を添える
——「真面目」と言われる女性に多いのかなと思うのが、「正しい」ことを言っているんだけれど、それがうまく相手に伝わらなくて相手とぶつかってしまう……というケース。なんだか「惜しいな」って思っちゃうんですよね。
小西:本にも書いたんですが、「人は誰でも自分の話を聞いてもらいたいもの」なんですよね。それにもかかわらず、案外相手の話を聞いてない。なので、「あの2人ってかみ合わないよね」っていうのは、「聞いてほしい」のぶつかり合いプラス「相手の話を聞いてない」んですよ(笑)。
——ええー。そうなんですね。
小西:でも、「相手の話を聞いてないよね」っていう人に限って、その自覚がなかったりするんです。
私自身も、こういう仕事をしているから「相手の話をちゃんと聞いているんだろうな」って思われがちなんですが、次の質問を考えていたり、自分と関係ないなと思っちゃったりすると聞いていないってことがあるんですよね。
——あー、私もそうです。
小西:そこで「人の話を聞けてないのはなぜだろう?」と思って、番組を見返してわかったのが、”クッションの言葉”が全然ないんですよね。
——“クッションの言葉”ですか?
小西:誰かがせっかくいいことを言っているのに次の質問にバッと言っちゃうとか。そうではなくて、「確かにそういう面もありますよね」って一回受けて「でも、こういう疑問もわいてくるんですけど」って返す。
会話のキャッチボールで言うところの「一回受ける」というのが私もできていなかったんです。でも、これができると、相手もしゃべっていて楽しいし、「この人は私の話を聞いてくれている」と思える。
私は「座布団を敷く」というイメージなんですが、話したことをちゃんと受け止めてあげて「こうですか?」と返す。
反論するときも「でも、こうなんじゃないですか?」と返すよりも「なるほど、おっしゃることはわかりました。しかし〜」というふうに聞いたほうが会話もスムーズになる。とっても短い言葉だけれどこれも3秒なんですよ。
コミュ力は「能力」ではない
——なるほど、確かにそうですね。仕事だけではなくてプライベートの会話でも使えそうですね。
小西:そうそう。よく女子同士でお茶を飲んでいて延々と「オチがない」話をする人もいると思うんですが、興味のない話を聞き続けるのは辛いですよね。
——辛いですねー。それが“昨日見た夢の話”だったら、もうどうしていいかわからない(笑)。
小西:それもね、ずっと相手の話を一方的に聞き続けるのではなくて、あいだあいだに「こういうことなんだよね」ってちょっとまとめてあげる。そうすると、相手も話しやすくなるし、こちらも長い時間、耐えて聞かなくていい。
それに相手も「あれ? 私、結局何が言いたかったんだっけ?」って考えを整理しながら話せるという効果もあるんですよね。
——なるほどー。本当にちょっとしたことでいいんですね。失礼な言い方ですがこんな「ちょっとしたこと」で人間って変わるんだ、って思いました。
小西:そうそう、だから「自分は会話をするのが下手」って決めつけて諦めるのではなくて、最初に「お会いできてよかったです」って言ってみるとか、3割増しに笑ってみるとか、ちょっとしたことを工夫するだけでコミュニケーション力ってアップすると思うんです。
——コミュ力は「能力」ではなくて「工夫」次第ってことですね。
※次回は2月26日公開です。
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘/HEADS)