AsMama・甲田恵子さんインタビュー 第2回

「仕事につながらない勉強」を続けるワーママ 失業中に目にしたリアル

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「仕事につながらない勉強」を続けるワーママ 失業中に目にしたリアル

保育園は見つからないし、やりがいのあるポジションからは外されるし……とにかく仕事と育児の両立はしんどい。メディアで流れる「ワーママ大変すぎ!」エピソードに「私はムリでしょ……」とひるんでしまうウートピ世代。

ワンコイン子育てシェアサービスを行うAsMamaの代表・甲田恵子(こうだ・けいこ)さんは、失業中に通った職業訓練校で「大変なワーママ」たちの現状を目にします。

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【第1回】突然のクビ宣告を受けて、思ったこと
【第3回】働き方に「起業」という選択肢があっていい

疲れ果てて転職活動…できない

——突然のリストラから、働き続けることに迷いが生じて選んだキャリアの小休止。それまで仕事が大好きなタイプだったそうなので、かなり戸惑ったのでは?

甲田恵子さん(以下、甲田):そうですね。解雇された会社での残務整理が終わって、ひと段落した時に、自分の人生がこのままでいいのか真剣に考えました。これまでの働きぶりを評価してくれて「うちに来ない?」と声をかけてくれる会社もありましたが、心身ともに疲れ果てていて、「はい、頑張ります!」とは言えませんでした。

でも、迷っているとはいえ働き続けるだろうとは思っていたので、決まった時間に家を出るという習慣は崩さないようにしたいと思い、横浜の自宅から池袋の職業訓練校に通うことにしたんです。

——まさにインターバル期間ですね。

甲田:そうですね。解雇されて、「大きな会社で働いていれば大丈夫」とか、「ひたすら会社の中で頑張ればいい」という時代じゃなくなったんだな、と痛感して。安易ではありますがウェブの仕事なら手に職をつけられるかなって思ったんです。

だけど、通っていたウェブ制作のクラスには10日間ぐらいで飽きてしまって(苦笑)。私の周りには私より短時間ではるかにセンスのあるサイトを作れる人たちがいるから、私がやる必要はないなって。

そのうち同じクラスにいる人たちはどうしてウェブの勉強をしようと思ったんだろうとか、そもそもこの状態が楽しいのかなって気になってきて、「ねぇねぇ」って声をかけ始めたんです。

100%の力を出し切れない時期が必ずある

——どんな答えが返ってきたんですか?

甲田:子育てや介護などで、「働きたいけど、辞めざるを得なかった」と言うんです。子どもが熱を出して休みが続いたことがきっかけで解雇されたという人もいました。「前職ではどんな仕事をしていたの?」と聞くと、営業とか人事とか。全然ウェブ制作と関係ないんです。

印象的だったのは、「子どもがいるから夜でも作業できるもの」とか、「土日の出張にいけなくて仕事との両立が出来なくなったから手に職を……」というもの。

みなさん、子どもがいながら続けられる仕事ってなんだろうって考えた時に、「ウェブ」「自宅」というキーワードを思い浮かべて、ウェブ制作の勉強を始めたというんです。

——確かに、時間や場所に縛られないとなると、ウェブ系の仕事というイメージはありますよね。

甲田:ええ。「産めよ育てよ働けよ」と社会的なプレッシャーが強まる中、男性も女性も高齢者も子どもも、みんな働かなきゃいけないような時代に、子どもを産んだら、仕事を続けられなくなったという人がこんなにたくさんいるんだということにショックを受けました。

でも、これまでのキャリアを捨てて在宅で働くということになれば、稼ぎも減るでしょうし、ウェブ制作の先生が言うには、「このクラスの中で、ウェブ制作で食べていけるぐらいになるのは、一人いるかいないかでしょう」と。

——勉強したからといって、即戦力にはなりませんからね。

甲田:結局、稼げないままでいたら、このクラスにいる人たちは無職のままじゃないかって思ったんです。毎月税金から失業保険が払われ、無職のままの人も増えて。世の中って一体どうなっているのというところに興味が生まれました。

ウェブ制作のクラスに来ている女性たちにさらに話を聞くと、彼女たちはみんな男性並みに学歴を積んでいました。男子だから女子だからと関係なく親に教育に投資をしてもらい、子どもが生まれるその時までは男性と同じように、キャリア志向の人はキャリアビジョンを持って働いていた。

——優秀な人たちだったんですね。

甲田:ええ。でも、子どもが生まれた時に、残業ができなくなって、好きな仕事ができなくなったり、やりがいのある部署から異動させられたりという制度や風土がある。それってある意味で、解雇に近いですよね。

育児に限らず介護でもそういう場面はあるかと思います。人間、生きていればどうしてもライフステージで仕事に100%集中できる状況を保てない時ってあるんです。

その時に、辞めるという選択肢しかなかった、解雇されたという状態って、誰にとって一番損なんだろうと考えたら、まさにこのリソースがどんどん足りなくなっていく日本じゃないかって思ったんですよね。

自分が起業するなんて思っていなかった

——それで子育てシェアの起業を?

甲田:いえいえ。自分が起業するなんて考えてもいませんでした。でも、世の中の不便がどうしたら便利になるかと考えることは好きで。ウェブ制作のクラスの子たちは、「周りに助けてくれる人さえいれば前職を辞めずに済んだ」と言っていて。一方で、「子どもを預かってもいいよ」という声もあって。助けて欲しい人と助けてあげたい人をつなぐ仕組みや仕掛けがこれからの時代に必要になるんじゃないかと思ったんです。

広報時代、仮説を立てたら調査をするということをしていたので、思い立ったらじっとしていられなくて、課題の調査を始めたんです。すると、相当な人たちが育児や介護に孤軍奮闘していた。それによって何が起こっているか想像できますか?

——働きたいけど、働けないというのは先ほど教えていただきましたが……。生活が苦しくなるとか?

甲田:世の中のマーケットを見ると、女性が子どもを預けられないことによって離職してしまうと、それにより世帯年収は半分になります。2人目が欲しいと思っても、世帯年収が減ってしまったから産み控えが起こる。育児も、1対1だと息が詰まって、育児うつや、虐待も発生している。夫は一人で家計を支えるために当然のごとく長時間労働になる……。

——うわぁ。お先真っ暗ですね……。

甲田:必ずしもそうなるというわけではありませんが、子どもの預け先があって、女性が仕事を辞めなくてすむ仕組みがあれば、これらの連鎖は断ち切ることができると思ったんです。

——それから間もなくして、甲田さんは行政や起業家に相談に回ります。だけど、反応は思わしくなく……。

(取材・文:ウートピ編集部 安次富陽子、撮影:池田真理)

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