ウートピ・ワインラボ所長の浮田です。「自分が飲みたいワインは自分で選べるようになりたい」というアラサー女性に向けて情報をお届けしているこの連載。
今回はいつもと少し趣向を変えて、ワインという飲み物が持つソーシャルな役割について考えてみることにしましょう。
震災の支援物資として贈ったワイン
今年もまたあの日がやってくる……3.11。
東日本大震災の後、多くの人の手よってさまざまな被災者支援が行われたことはみなさんもご記憶の通りだ。僕はメディアに関わる仕事をしているので、まず被災地に本や雑誌を送る支援活動をした。震災後数ヵ月が経った段階で、支援物資の中にワインを入れてはどうかと考えた。
被災者支援は当然「生活必需品」が優先される。「嗜好品」に分類されるワインを送るのってどうなの?という声もあったが、被災地でボランティアをしている人や毎週のように物資を届けている人を通して被災者の人たちにヒアリングすると、「ワインのように心豊かにしてくれるものこそぜひほしい」という多くの声が返ってきたのだった。
その声に背中を押されて僕は周囲に呼びかけ、ワインを集めて何度か被災地に送った。
僕は常々、「ワインは人をつなぐもの」だと言っている。ワインほど一人で飲むのが絵にならないお酒はない。逆に、ワインほど大きな円卓やロングテーブルが似合うお酒はない。ワインは「人をつなぐ」性質を持っているからこそ、震災復興支援などのチャリティ活動と親和性が高いのだ。
世界各地のワインが楽しめるチャリティ試飲会
ファインワインを世界から輸入販売している株式会社ファインズでは、東日本大震災の年から毎年、誰でも参加できる「ファインズ チャリティ試飲会」を行っている。来場者の入場料と有料試飲、有料セミナーの料金を災害復興支援団体Civic Forceに寄付するもの。
毎年、趣旨に賛同する世界各国の有名生産者が来日。来場者にとっては憧れのワイナリーの当主やワインメーカーと直接触れ合うことができる好機でもある。7回目を迎える今年は3月4日に恵比寿のEBiS 303で開催。「テロワールとの出会い 〜飽くなき挑戦をする生産者の饗宴〜」をテーマに、9つのワイナリーから11名の生産者が参加。約100種類のワインを試すことができる。
ワインは人をつなぐもの
このチャリティ・イベントについて主催者、株式会社ファインズ代表取締役社長の中西卓也(なかにし・たくや)さんにお話を聞いた。
——そもそもどのようなきっかけでこのイベントを?
中西:東日本大震災の直後、ワインを通じて何か我々にできることはないかと考えていました。同じ頃、海外の生産者の方たちからも「何か力になれることはないか?」との声が次々と届き、ぜひ一緒に復興支援イベントをやろうという話になったのです。
——やってみて、何か発見はありましたか?
中西:このイベントのために来日される生産者の方々が一様に嬉々としておられ、繰り返し来たいとおっしゃる方が多いことです。「これこそ、まさに私たちがやりたかったことだ」「次回のイベントが待ち遠しい」といったコメントが毎年たくさん寄せられるのです。
また、弊社の社員にとっても、一致団結して事を行うよい機会になっています。正直、事前の準備は大変ですし、当日は休日を犠牲にしての活動ですが、みんなやりがいを感じてくれていて、今では欠く事のできない年中行事になっています。普段私たちが触れ合うことのほとんどない一般のワイン愛好家の方と直接お話しすることができるのもたいへん貴重なことです。
——「ワインは人をつなぐ」ですね。
中西:まさに、おっしゃる通りです!
今回会場では、「リーデルグラステイスティングセミナー」「ワインとチーズのマリアージュセミナー」も開催。ワインライフをグッと充実させるチャンスになるだろう。
最後に今回来日する生産者の一部を紹介しよう。
(写真=峯竜也[中西社長の写真])