『何でもないことで心が疲れる人のための本』インタビュー・第1回

HSPとの違いは? 人付き合いが苦手ではないのに疲れてしまう「隠れ内向」とは?

HSPとの違いは? 人付き合いが苦手ではないのに疲れてしまう「隠れ内向」とは?

「仲の良い友人でもずっと一緒にいるのはつらい」「自分の言動を振り返ってウワーっとなる」「組織になじむまでに時間がかかる」--。

人付き合いは苦手ではなく、むしろ積極的にいろんな人と付き合っているのに、小さなことで疲れるのは「隠れ内向」だからかも……。

そんな「隠れ内向」の悩みや対処法を解き明かし、うまく生かすためのヒントを示した『何でもないことで心が疲れる人のための本〜「隠れ内向」とつきあう心理学〜』(日本経済新聞出版)が10月に出版されました。

完全な内向型の人ほどにはマイペースになれず、他人に対して感じよく振る舞おうと気を使って周囲に溶け込もうと頑張るタイプの「隠れ内向」について、心理学博士で著者の榎本博明 (えのもと・ひろあき)さんにお話を伺いました。全4回。

211104otopi-0050

外向的にならないと損する…「隠れ内向」って何?

——「隠れ内向」という言葉にドキリとした人も少なくないと思います。この本を書いたきっかけとタイトルにもある隠れ内向について改めて教えてください。

榎本博明さん(以下、榎本):学生の相手やカウンセリングを通じて「内向型で悩んでいる人が多い」と長い間、感じていました。僕が最初に内向型の本を出したのは20年以上も前ですが、文庫本にもなりましたし、いろいろな人が共感してくれている実感もありました。

ここ数年は、グローバル化が進み、欧米人的な外向型の文化が取り入れられて、ますます「フットワークを軽くしよう」「人脈づくりが大切だ」「自己主張しよう」という仕事のスタイルに変化してきています。頑張って外向型の行動パターンを身につけないと損する社会ですから、内向型の人も知らないうちに外向的に振る舞ってしまうんです。

例えば、職場の同僚や友人と楽しく過ごした後、みんなと別れて一人になったときにドッと疲れが出てしまう。その場合は人といる時にかなり無理をしていることになるので、本来は内向型なのに外向型のように振る舞っている隠れ内向である可能性が高いと言えます。

——本人も知らないうちに外向的に振る舞ってしまうんですね。

榎本:もちろん、隠れ内向として、外向的に振る舞うことで能力を発揮している人も多いのですが、プレッシャーが重くのしかかっているのも事実です。内向型の人は本来、“聞き上手”として生きる道を見つける人が多いはずなのですが、今の社会では自己アピールしたり、話し上手のほうが良いとされている。だから、結構ストレスをためて、苦しんでいる人がいるのではないかと思ってこの本を書きました。

——若い世代にも隠れ内向が増えているのでしょうか?

榎本:隠れ内向の人には、「人前でどう思われてるか」「自分の話はつまらないと思われていないか」という対人不安があります。授業で対人不安を取り上げると、普段はあまり感想を書いてこない学生までもが「自分もそうだと思う」とびっしり感想を書いてきます。本来は内向型なのに無理して積極的に人付き合いをしたり、人を笑わせようとしたりしていて、それで疲れてしまう人がすごく多いというのは毎年感じています。

211104otopi-0006

他人の目が気になってしまう理由

——今の社会は、内向型の人が無理をしてしまう社会なんですね。

榎本:そうですね。本にも書きましたが、欧米の「自己中心の文化」の影響を強く受けるようになってきているわけですが、日本社会の「間柄の文化」も根強く心の深層に刻まれており、人は関係ない、自分のやりたいようにやればいいんだと自己中心にはなり切れない。まあ、そうする必要もないのですが。他人の目を意識しすぎているといった感じがありますが、他人の目を意識すること自体は悪いことではないんです。日本人は他人の目を気にするからこそ、人を気遣うことができるし相手の期待に応えようと頑張ることができる。相手を配慮できることが、日本文化の中では成熟した人間の基準なわけです。

一方、欧米の文化では、人に影響されずに自己主張することが、成熟した人間の基準です。だから、まずは欧米を基準にして自己卑下するようなコンプレックスに振り回されないことが大切です。冷静に自分が育った文化を考えれば、人の目を意識するのは当然のこと。日本人の多くは、「人にどう思われているか」を気にしているので、隠れ内向の人が欧米人に比べてものすごく多いと思います。

——自分も他人の目をすごく気にする部分があるのですが、過剰に卑下する必要はないのですね。

榎本:僕が10年ほど前から書いているのは、「間柄の文化」と「自己中心の文化」の違いです。相手の気持ちや立場に配慮しながら、何を言うか、何をするかを決める「間柄の文化」と、自分の思うように言いたいことを言ったり、やりたいことをやればいいという「自己中心の文化」の対比です。日本と欧米ではそれだけ文化のあり方や社会的な文脈が違うのに、日本では欧米をモデルにしたビジネス本や海外の本をそのまま信奉するのはおかしいと思っています。

例えば「気にしなければいい」「言いたいことを言えばいい」といった文言もよく見ますよね? 欧米人の生き方だったらそうかもしれないですけど、日本でそんなことをしたら、余計に生きづらくなるだけなんです。

日本の場合は、他人とうまくいかなかったら、生きづらさがさらに深まってしまうし、やはり人あっての自分というのが、日本的な自己のあり方ですからね。日本は、アメリカのような競争社会ではなくて支え合いの社会なので、その違いはすごくあると思います。

HSPとの関係は?

——最近は「HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)」や「繊細な人」にフォーカスした本もたくさん出版されていますが、榎本先生はどんなふうに見ていますか?

榎本:本でも詳しく書きましたが、HSPは音や光などの物理的な刺激に過敏な人も含まれるので、内向型とはちょっとズレる部分もあります。

ただ、内向型は独自な内的世界とのつながりが強く、思考の深さに特徴があります。逆に、外向型は外的世界とのつながりが強く、行動範囲の広さと行動の早さに特徴がある。そういう意味でHSPと内向型は重なる部分も大きいと言えます。

今回の本のテーマは隠れ内向ですが、「もともと内向型なのに、無理して外向的に振る舞っているから、隠れ内向が多い」ということに気付いてもらえれば、自分の生きづらさの理由も見当がつくのかなと思います。

自分の強みに目を向けよう

——隠れ内向の自分を認めるということですね。

榎本:「外向型の人は素晴らしい」「内向型で内気な自分はダメだ」と思うのではなく、「内気で不安だからこそ、いろいろなことが用意周到に準備できるし、仕事でも人から頼りにされている」くらいに思ってもよいのではないでしょうか。「あれはちょっとまずかったな……」と自分の言動を振り返って落ち込むこともあるけれど、人の気持ちに配慮できるからこそ相手にとって心地よい存在になっている場合もあります。

そんなふうに自分を振り返ってみれば、生きづらさから解放されて前向きになれる。「自分の良さを知らずに、無理して反対の性質を一生懸命演じているから大変なんだ」ということに気付けば、救いになるんじゃないかと思っています。

211104otopi-0130

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子)

SHARE Facebook Twitter はてなブックマーク lineで送る

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

HSPとの違いは? 人付き合いが苦手ではないのに疲れてしまう「隠れ内向」とは?

関連する記事

記事ランキング