〈ウートピ・ワインラボ〉所長ウキタです。みなさん、おいしいワイン、飲んでますか?
進化系ワインを次々に生み出しているドイツが今、面白いという話の続きをしましょう。
ワインが好きなら、まずはドイツから 30年の時を経てブーム再来
今、進化系リースリングが注目される理由
感動のデイリーワインに出会いたい 今、注目のドイツのワイナリーを訪ねて
ドイツ第2位のワイン産地に潜入
今回ご紹介するのはファルツ地方のワイナリー。ファルツ地方は、ドイツ南西部に位置し、南隣はフランスの銘醸地アルザス地方です。前回ご紹介したラインヘッセンに次ぐドイツ第2位のワイン産地。リースリングの栽培面積はドイツでもNo. 1。生きのいい若手ワインメーカーがたくさん活躍している産地です。
去年、ドイツ国内で展開された大手コーヒー会社の広告キャンペーンにカタリーナ・ヴェクスラーという女性ワインメーカーが出演して、ワイン業界が騒然としました。ジョージ・クルーニーが“What else? ”と決めゼリフを吐くあのCMです。
「20年前には決して起こりえなかったこと。ワイン造りに携わることがスタイリッシュなことだと認められたということでしょう」と語るのはドイツワイン・インスティテュートのミハエル・シェメルさん。
ちょっとエッチなワイン
ヴァイングート・ルーカス・クラウスのルーカスさんはそんな新世代のリースリングを象徴するような人物。その出で立ち、話し方はまるでラッパー。
「リースリングはそんなに好きじゃないんだよね。それよりもジルヴァーナー(白ワイン用ではドイツで4番目に多く栽培されている品種)の方が面白いよ。ふだん自分ではワインは飲まないな。飲んでいるのはワインを炭酸で割ったワインショーレってやつだよ」と型破りなルーカスさん。
ルーカスさんが産み出したヒット商品にポルンフェルダーというワインがあります。網タイツ姿のふたりの裸婦がブドウを挟んでしなを作る刺激的な図柄のラベル。名前もポルノっぽくてエッチです。
中身はポルトギーザーとドルンファルダーという品種で造ったブレンドものの赤ワイン。軽めで飲みやすく、甘い果実味がキャンディのよう。少し冷やして飲むスタイルを提案したら、若い消費者が飛びついたそうです。
「こたつで食べるみかん」みたいなワイン!?
ルーカスさんのワイナリーを訪ねたあとは、ダイデスハイムというおとぎの国のような町へ、若手ワインメーカー・グループ「ワイン・チェンジ」のメンバー5人に会いに行きました。
「ワイン・チェンジ」には12軒の小規模ワイナリーから15人が参加。共同で試飲会を催すなどプロモーション活動を行っています。
「僕らは一つのグループだけど、12のワイン哲学があるんだ」と、リーダー格のヤン・ホックさんは言います。それぞれのワインを飲んでみると、まさにその通り。同じリースリングのワインを飲んでも、ヤンさんのそれはすごく細身でミネラル感が前面に出ているタイプ。まるで石板の上に垂らしたライムジュースを飲むようです。
一方で、お隣のマーカス・シェードラーさんのリースリングはとてもマイルドな口当たりで、味わいも甘く、ふくよか。こたつに当たって食べる完熟みかんのようです。キラキラと光る個性がネットワークで結ばれて、より大きな輝きを放つ。それこそ、ドイツワイン新世代の魅力と言えそうです。
「ロマネ・コンティ」に憧れてる場合じゃない
と、ここまで辛口リースリングを中心にドイツの進化系白ワインの話を主にしてきましたが、実は今のドイツでは、赤ワインがとんでもない進化を遂げていることが今回の旅で判明しました。
その主役はシュペートブルグンダー(ピノノワール)。ロマネ・コンティで知られるフランス・ブルゴーニュの主要品種ですが、今やドイツのピノノワールは、フランス、アメリカに次ぐ世界第3位の栽培面積を誇ります。
2011年には、ロンドンで世界のピノノワールを集めて行われたテイスティング・イベントでTOP10のうちの7本をドイツ産が占めるという「歴史的快挙」を成し遂げました。
“ドイツ・ピノ”は、まだまだ日本では品薄ですが、百貨店のワイン売り場や品揃えの豊富なワインショップなら、いくつかの銘柄を見つけることができます。
今、明らかにドイツワインはその煌めきを増しています。日本での再ブレークは目の前? 今のうちに要チェックです。
取材協力:Wines of Germany
写真:Taisuke Yoshida