ウェブメディア「オモコロ」や自身のnoteなどで旅にまつわるエッセイを中心に人気を集め、2025年10月には『駅から徒歩138億年』(産業編集センター)を上梓した岡田悠さんと、初エッセイ『群青のハイウェイをゆけ』( hayaoki books)を刊行したきくちさんによるトークイベント「週休2日の冒険譚」が2025年11月16日(日)、「本屋イトマイ」(東京都板橋区)で開催されました。
普段の生活で味わえないような体験をしたり、気分転換になったりと、旅がもたらすポジティブな影響はさまざま。でも、限りある休日の中で「遠出は難しい……」と感じている人も多いのではないでしょうか。
つい特別感を求めてしまいがちな「旅」という行為。ですが、旅は日常の延長線上のような軽やかさでもっと気軽に取り入れられるようです。トークイベントでは、「旅」にまつわる文章を多く発信するお二人ならではの視点から、幅広いお話が語られました。

(写真左から)岡田悠さん、きくちさん(写真提供:hayaoki books)
短い旅の記録だからこそ、マネしたくなる
普段は会社員として働きながら、休日や有給休暇を上手に活用し国内外の旅を続けるきくちさん。
初の書籍となった『群青のハイウェイをゆけ』は、2016年より執筆を続ける自身のブログ「今夜はいやほい」の内容を大幅に加筆修正した旅行記を中心に、書き下ろしのエッセイなども収録した、きくちさんの「旅の記録」が詰まった短編集です。
2010年代の青年期から現在に至るまで、主に週末を中心に「短い旅」を続けているというきくちさんですが、その旅の楽しみ方には、シームレスに日常と非日常を行き来できるような軽やかさも感じられます。
岡田さんも、きくちさんの著書を読んだ際に「明日にでも行けそうな軽やかさで旅をしている様子が伝わる」点を魅力に感じたとのこと。
また「常に何を食べようか考えている」というきくちさんに対し、岡田さんは「食を起点とした旅というのをあまりしてこなかったかも」と振り返った上で「美味しいものを求めて移動するのって旅の本質かもしれない。自分もやってみたい」と、食をテーマにした旅の設定に意欲を見せていました。

スタンプラリー的なものを目指さない旅は、気負わず非日常を取り入れるヒントに
そんな岡田さんの新刊『駅から徒歩138億年』は同じく旅をテーマとした書籍ですが、多摩川を河口から源流まで散歩した道程と思考の記録「川歩記」と10遍のエッセイが収録された「時間の旅」が主軸となっています。
旅行や旅と聞くと、どうしても「普段は行かないような場所にしなければ」「せっかくなら見たことのないものを見てみよう」と思ってしまいがち。背景には旅の醍醐味の一つである“非日常感”を得るためなのかもしれませんが、日々忙しい中で物理的に遠い旅先の選択や計画を立てるのは難しいことも。
岡田さん自身も、少し前からいわゆる観光名所や観光地を目指す「スタンプラリー的な楽しみ方」ではない楽しみ方を考えるようになったそう。そんな中で「特別じゃないけれど特別になれる日常旅」としてヒントとなったのが「時間」を軸に旅をすることだったそうです。
書籍では「古いカーナビの案内で散歩する」というエピソードもあるように、ともすれば「地味」とされるような場所でも、特別さや面白さを見出すような旅を実践している様子が『駅から徒歩138億年』では描かれています。
きくちさん、岡田さんの書籍はいわゆる「旅本」ではあるものの、紹介されている行き先はそれぞれ近所であったり、ふらっと行けたりする場所がテーマになっていることも。日常の延長線上になってしまうだけでは? 旅と言えるのだろうか? という疑問には、お二人とも「立派な旅です!」と力強く回答しました。
「ちょっとしたものを見かけて疑問に思って調べるだけでも『いつもと違う発見』がある。それでいいし、それがいい」(岡田さん)
「編集部の方から、私の書籍は『地味旅本』と評されているのですが(笑)、でも確かに埼玉県の吉川に行く様子を収録した旅本ってなかなかないですよね」(きくちさん)
日常からふっと違う世界に入れた感覚があれば、それはきっと立派な旅。やること自体は地味であるとか、特別感のない場所であっても、ふとした発見があるだけでも、きっとそれは非日常になる。日々忙しなく過ごす人であっても、気負わず「旅」を楽しめるヒントとなりそうです。
働きながら「旅時間」を確保するためのテクニック
トークイベント終盤では、定期的に旅を続ける二人が、忙しい中でまとまった旅の時間をどう捻出しているのか? という素朴な疑問にも応えました。
今年独立するまで「会社員ライター」として活動していた岡田さん、現在進行形で会社員として働きつつ執筆活動を行うきくちさんともに、基本は「有給休暇をフル活用する」というもの。
決して特別なことはしていないものの、一つ意識している点で、岡田さんは「祝日による連休と有給をくっつける場合は、連休『前』に有給を入れることが多かった」と語ります。
「例えば土日月休みだとして、火曜日に休むと『連休明けに休みとってる』感じになるじゃないですか。でも、金曜日にすると連休明けには『ちゃんといる人』っぽくなるんですよね(笑)。
あと単なる印象なようにも思いますけれど、連休前の方が周囲の人も『おやすみモード』になっていて、なんとなく休んでいても気付かれないような感じがします」(岡田さん)

『群青のハイウェイをゆけ』旅のパネル写真展(写真提供:hayaoki books)
トークイベントの会場となった『本屋イトマイ』では、『群青のハイウェイをゆけ』刊行を記念した旅の写真展が12月6日(土)まで開催中。きくちさんが体験した「旅」の空気をよりダイレクトに感じることができる空間となっています。
『群青のハイウェイをゆけ』『駅から徒歩138億年』は好評発売中。
(取材・文:原川裕行)





















