「社畜プロデューサー」と「フリー編集長」の日本一ちっちゃな働きかた改革 第3回

会社員のままで本当に幸せになれる? オンナが辞める/辞めない理由

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「日本一ちっちゃな働きかた改革」
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「フリー編集長」と「社畜プロデューサー」というまったく異なる立場から、ウートピ編集部というチームを運営している鈴木円香(33歳)と海野優子(32歳)。

脱サラした自営業者とマジメ一筋の会社員が、「心から納得できる働きかた」を見つけるため時にはケンカも辞さず、真剣に繰り広げる日本一ちっちゃな働きかた改革が現在進行中です。

第1回第2回で話しあってきた「そもそもなんで会社員やってるの?」というテーマについて、第3回の今回は一度まとめてみたいと思います。

海野Pに代表されるような「働く女性」が、会社員をやってるホントの理由って、結局のところ何なのでしょうか?

海野P(左)と鈴木(右)

海野P(左)と鈴木(右)

「会社員をやる理由」は2つに絞られる

鈴木:「働きかた改革」を始める前に、「そもそも」をしっかり話し合うよ、っていうのが今回の連載の趣旨なので、第1回第2回では、「そもそもなんで会社員やってるの?」という問題について根掘り葉掘り聞きつつ、フリーとして社畜OLをいじめ抜いてきました(笑)。

海野:ホント、最初の2回分だけで、私、何回「社畜」って、呼ばれたんだろ……。

鈴木:こんなの、まだまだ序の口ですよ。そして、海野Pをいじめ抜いて社畜のホンネを聞き出した結果、こういうことがわかりました。

【海野Pが会社員をやる理由】

【1】ノーリスクで社会に影響力を与えられるから
【2】自営業の父親を見ていて「安定が一番」と思ったから

鈴木:海野Pの場合、この2つが大きい理由。【1】はつまり、安定収入をもらいつつ、上場企業が抱えている優れた人材やインフラを自由に使って、規模の大きな仕事に取り組めるということだよね。フリーからすれば、なんて虫のいい話なんだと胸クソ悪いけど、とても理に適った理由だと思います。賢い選択なのではないでしょうか。

海野P:胸クソ悪いって……編集長、媒体のブランディングもあるんで言葉は慎んでくださいね。

鈴木:はーい。【2】に関しては、お父さんの苦労がちゃんと私の働きかたに生かされてるよ、と。お父さんが生前望んでいたような“素敵なお嫁さん”としての永久就職は途中でダメになっちゃったけど。「今、優子は幸せだよ!」って伝えましょう。

海野P:うーん、幸せとは言えないな、結構モヤモヤしてますから。

鈴木:あら、そう。すみません、お父さん、今のは取り消しだそうです。

働く女性をヒアリング調査してみると

鈴木:ただ、「社畜プロデューサー」こと海野Pが、「働く女性」を代表しているとは言えないよね。絶対に「一緒にしないで!」ってクレームが殺到するはず。そこで今回は、ウートピが日々ターゲットとしてヒアリング調査している「働き女子」のホンネを見ていこうと思います。

ウートピの読者層はこんな感じの女性たち。

・年齢26歳から39歳
・年収400万〜600万円
・首都圏在住
・正社員
・非ママ

そんなコアターゲットの女性たちにも「そもそもなんで会社員やってるの?」という質問をぶつけてみたところ、以下のような答えが返ってきました。本当にいろいろあったので、とりあえず【積極的理由】と【消極的理由】に分けてみました。

【積極的理由】
・憧れていた会社に入社できたから
・今の会社の理念にすごく共感できるから
・大きな規模の仕事ができるから
・質のいいインフラを自由に使えるから
・社員の方がサービスに深くコミットできるから
・雑務をせずに仕事に集中できるから
・仕組みが整っていてラクだから
・常に誰かが評価してくれるから
・有給、産休、育休などの福利厚生があるから
・安定した収入が欲しいから

【消極的理由】
・フリーになりたいけど、なれるほどのスキルがないから
・会社を辞めてまで、やりたいことがないから
・専業主婦は自分にはムリだから
・フリーは不安定すぎて怖いから
・誰かから管理されないと仕事ができないから
・生活のため
・パートナーから「辞めないで」と言われているから

鈴木:積極的理由と消極的理由っていっても、結構表裏一体でそんなにスパッと分けられるものじゃないけど、だいたいこんな感じ。ちなみにウートピ読者の中では、海野Pみたいに、「会社のリソースを使わせてもらって、社会的インパクトのある仕事ができるから」といった理由は、かなり多かったです。よかったね、媒体のターゲットと考えてることが一致してて。

海野P:よかった、よかった。

鈴木:確かに、「会社のリソース」と「社会的インパクト」は、残念ながら、フリーにはないもんね。コピー機さえ、独立直後にはすんごい困りました(笑)。今、海野Pが空気のごとく享受している「めったに故障しない複合機で、カラープリントもスキャンもタダでできる」って環境が、フリーにとってはどれほどの贅沢か。「紙がもったいないから両面印刷にしよう」とか考えたこともないでしょ?

海野P:ないですね……。

鈴木:すみません、話が急にコピー機に矮小化しちゃいましたが、その他に注目した回答としては「仕組みが整っている」がゆえに「雑用をせずに仕事に集中できる」もありました。これは「会社のリソース」を使えることの結果として得られるメリットですね。フリーになると、見積書や請求書の作成、経費処理、請求書の振り込み、入金確認、仕事仲間のリクルーティングなどなど……毎月、心やさしい経理のおねえさんや総務のおじさんがやってくれていてラクチンだったことを、ぜーんぶ自分でやらなきゃいけなくなるから。

海野P:ああ、言われてみれば、私自身「雑用をせずに仕事に集中できる」も会社員をやってる理由としてあるかも。

鈴木:そして、意外だったのが、「本当はフリーになりたいんだけど、あれこれの理由でなれなくて消極的に会社員をやっている」という女性が結構いたこと。

海野P:いやー、まあ、私も正直そうですよ。憧れるけど、無理だもん。

鈴木:大丈夫だよ、海野Pならなれるよ! 社畜、やめちゃいなよ。

海野P:また、いつものフリー勧誘が始まった(苦笑)。

やる理由もやめる理由も「妊娠・出産」

鈴木:実は今回は「会社員をやっている理由」だけでなく、「会社員をやめた理由」も一緒にヒアリングしたんですよ。新卒で会社員をやっていたんだけど、何らかの理由でフリーになったり、起業したりした女性。で、その結果、すごくおもしろいことが見えてきて。

海野P:おお、聞きたい、聞きたい。

鈴木:それは、「会社員をやる理由」も「会社員をやめる理由」も、妊娠・出産が大きいこと。「産休・育休が取れるから、会社員をやる」と「ママ社員が理想の働きかたとは思えないから、会社員をやめる」の両方の声が、ヒアリング調査ではたびたび聞かれました。

海野P:そこは私もずっと悩んでますもん。今年で33だし。

鈴木:知ってる(笑)。妊娠・出産のために福利厚生が使える会社員を辞めない、という選択は、まあ、超まともですよ。100人いたら、90人は納得するまっとうな決断。注目すべきは、逆の方。具体的に見ていくと、将来の妊娠・出産を考えて今、会社員をやめた人は、こんなことを考えてるんだよね。

・ママとして「お荷物社員」になりたくない
・子供の成長に合わせてどこでも働けるようになっておきたい
・産んだあとも、今みたいにバリバリ働くのは無理
・プライベートと仕事のバランスを整えておきたい

海野P:そうなんですよね、そりゃ、ママのための制度っていろいろあるけど、それを堂々と使えるほど自分が会社に貢献できるかっていうと自信ないかも。

鈴木:だよね、「権利なんだから、使って当然でしょ」っていう社畜メンタルの人もいるけど、「その権利を行使したとして、自分は満足できるの?」と立ち止まって考えてる女性も結構いるわけです。

「保育園+時短勤務」は本当に望むカタチ?

鈴木:何を隠そう、私もそうだったもん。産休も育休もバッチリ取れる、時短勤務もできるっていう恵まれたホワイト企業に正社員としていたけど、娘が1歳の時に辞めちゃった。その理由は、やっぱり「権利を行使して、幸せになれるの?」と考え始めちゃったから。

海野P:いや、でも、やっぱりもったいなくないですか?

鈴木:全然もったいなくないよ、人生一度きりだもん。恵まれた環境でモヤモヤしながら働いてる方が、よっぽど時間がもったいないわ。

海野P:むむむ。

鈴木:国の働きかた改革でもそうだけど、2017年現在、女性の理想の働きかたの一つが、「正社員で産休・育休がしっかり取れて、認可保育園に入れられて、時短でやりがいのある仕事ができる」ってことになってるじゃない。でも、それが全部叶ったところで、「私の欲しい働きかたじゃない」っていうのが、正直なところだった。

海野P:それ贅沢すぎますよ。編集長、理想が高すぎます。日本中のワーママから袋叩きにされますよ。

鈴木:そうかなあ。だって、せっかく産んだ子供と、朝9時から夕方5時まで1日8時間、週40時間も離れて過ごして、朝ごはんも夜ごはんもいつもバタバタイライラ、保育園の送り迎えは仕事カバンと着替えでいつも難民みたい、しかも職場には気を遣わなきゃいけないわけでしょ。そんなの、私の欲しい生活じゃなかった。

海野P:週40時間、バタバタイライラ、難民……確かに、魅力は感じない。

鈴木:だけど、普通はそんなホンネは絶対に言えないよね。「時短させてもらって、ありがたや、ありがたや。保育園に入れさてもらって、ありがたや、ありがたや」って思わなきゃいけないわけでしょ。ワーママって、まあ、端的に言ってどうがんばってもお荷物ですよ、それは本人たちが一番わかってるし。私だって、ウートピ・チームに、やれ、子供が熱出した、やれ、保育園の迎えがある、って迷惑ばっかりかけてるし。

海野P:編集長、普段から本当にびっくりするほど、ホンネしか言わないですからね。で、私もホンネで言わせていただければ、編集長がママだからやりにくいって感じたことは、一度もないですよ。

鈴木:ほお、その社畜のホンネ、話半分に聞いておくわ(笑)。

第1回から第3回で一緒に考えてきた「そもそもなんで会社員やってるの?」という問題。次回はちょっと趣向を変えて、読書会をやりながら「一体いつまで働くつもり?」という問題について考えてみたいと思います。海野P、今日もお疲れさま!

(構成:ウートピ編集長・鈴木円香)

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脱サラした自営業者のウートピ編集長・鈴木円香と、社畜プロデューサー海野Pのふたりが、時にはケンカも辞さず本気で持続可能なワークスタイルを模索する連載です。

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