『ファンに愛され、売れ続ける秘訣』インタビュー

営業職だけじゃない! 仕事も人間関係もうまくいく“ファンづくり”のススメ

営業職だけじゃない! 仕事も人間関係もうまくいく“ファンづくり”のススメ

顧客に愛される“ファンづくり”の営業スタイルを構築し、現在、HIROWA代表として人材育成のコンサルタントを務める和田裕美(わだ・ひろみ)さん。8月に最新刊『ファンに愛され、売れ続ける秘訣』(かんき出版)が発売されました。

同書は、従来のような営業スタイルが難しくなっている今の時代に、“新しいセールスのカタチ”を提案するビジネス本。ファンベースカンパニー創業者で会長の佐藤尚之(さとう・なおゆき)さん監修のもと、売り込む営業スタイルではなく、会社や自分のファンになってもらってお客さんや人とつながっていく極意を伝えています。

仕事を通じて人とつながるってどういうこと? コロナ禍を経て仕事の仕方やモノの売り方はどう変わった? 営業職だけにとどまらない“ファンづくり”について、和田さんにお話を伺いました。

和田裕美さん

売り方も働き方も…コロナ禍で変化したこと

——同書は主に営業職の人向けに書かれた本ですが、人とのつながり方や仕事のやり方など、営業職以外の人にも役立つことがたくさん詰まっていました。この本を執筆された経緯から教えてください。

和田裕美さん(以下、和田):以前からずっと、“ファンづくり”セールスをやっていました。ただ、ファンをつくるセールスの本はあるけれど、細かく伝えている本がないなと感じていました。

今の時代は、人口減少とともにデジタル化が進んで、人とのつながりが薄れています。人が寂しい物の売り方をしてはいけないと思うんです。平成の後半あたりから、マーケティングがどんどん一人走りになっていたり、お客さまを大事にするのではなく、売る側が賢くなって乗せて売ったり、そういうイメージが非常に強くなっていて……。

そこで、「これから人口も減るし、どうやって売ったらいいんだろう?」と考えると、“ファンづくり”がとても重要になってきます。私からすると、「これ以外の方法はあるの?」という感じなんですけど。それを早めにお伝えしておかないと、困ったときに始めても間に合わない。逆に、10年後をつくる意味で、今からソフトランディングしていくということを、この本でご提案したいと思いました。

——令和に入り、新型コロナウイルス感染症の流行という想定外の事態も起こりました。コロナ禍はセールスの現場にどのような影響を与えたとお考えでしょうか?

和田:コロナ禍で少子化が加速して、人口減少につながっていること。それと、コロナ禍で生き残った企業は、ファンが付いていたということ。飲食店や観光業も含め、ファンの方が応援してくださるところは、通販でも物を買うし、お弁当も買うし。お客さまを大事にしていたところは、小さくても生き残りました。一方で、お客様を大事にしないで、目立つことを考えたり、とにかく広告をプッシュしたりなど、企業都合の売り方をしていたところは消えていきました。このコロナ禍で、「何が大事なのか?」ということが明確になったとも言えます。また、人とのつながりが希薄になった中で、人から声をかけてもらうとか、そういうことを大事に思う人が増えたとも感じています。

今の時代に求められるリーダー像は?

——コロナ禍で仕事のやり方も価値観も加速度的に変化したということでしょうか。リーダーの素質も変わってきていますか?

和田:確実に以前と変わってきていますね。マイクロソフトもアップルも数年前にトップが交代しました。マイクロソフトはビル・ゲイツからサティア・ナデラに、アップルはスティーブ・ジョブズからティム・クックになりましたよね。カリスマ性はないんですが、いろんな人の意見を聞いて共感を大事にするようなトップに代わっているんです。ジョブズのようなカリスマ性で引っ張っていく人は、一世代昔のリーダーですよね。

威圧感や権力を持って「俺について来い!」という感じではなくて、「もう! 社長~!」と言えるような方に、ついて行くのが今の時代の気分なのかなと。今は、共感型のリーダーシップが強いと思います。「人を大事にしながら、適材適所で人を育てていこう」という人じゃないと、これからのトップは難しいかなと考えています。

——30代後半から40代前半のいわゆる中堅と呼ばれる世代の人に話を聞くと「自分たちはイケイケドンドンの昭和世代に育てられたけれど、今の20代はそうではないからどんなふうにマネジメントしていけばいいのかわからない」というお悩みもよく聞きます。

和田:今生きている人は、人種が違うんですよ。「定時で帰りたい」とか、「休みがあれば給料は上がらなくてもいい」とか、「飲みに行くぐらいだったら……」とか。極端な話、「出世もしたくない」みたいな。でもそれは、上昇気流に乗った時代を少しでも知っている人と、お先真っ暗で日本はどんどん弱くなる一方だと思っている人とでは、モチベーションのかかる場所が違うんです。

世界においても、経済が伸びているところと伸びていないところでは、気配が全然違いますよね? 例えば、タイのように、ここ10年で給料が数倍上がっているようなところにいたら、「もっと頑張ろう!」って思いますけど、給料が20年も上がってないような日本にいたら、「リーダーになったって……」と思いますよね。

——そうですね、なかなかモチベーションは上がらないですね。

和田:今の時代に、「強い人になりたい!」と思います? そうではなくて、和気あいあいとして楽しい現場だったり、数字だけじゃなくて能力を評価してくれるような現場であれば、今の人たちもやる気を出すと思うんですよね。やる気さえ出れば、能力は伸びるので、モチベーションをかける動機づけが変わってくる。「こうすればもうかるぞ」という動機づけで人がついて来ないのであれば、「こうしたら社会貢献できますよ」「こうすればあなたは成長できますよ」「コミュニティーができて横のつながりができますよ」「会社に来たら楽しいことがありますよ」みたいな。そういうリーダーシップを取れる人のほうが、今の人たちを引っ張れると思います。

仕事の適正って何?

——20代の若い世代からは時々「今の仕事が自分に適しているかわからない」という声を聞きます。

和田:仕事に適性はないです。例えば、勉強ができるとか、ちょっと歌がうまいとか、人前でしゃべるのが上手だとか、そういう適性はあっても、仕事に向いている適性は、目の前のことをとにかく一生懸命にやること、そこから身に付く「誰かの役に立てること」を見出していくことから生まれるのです。

——どういうことでしょうか?

和田:子供のときからやりたいことが明確であればいいんですけど、ほとんどの人は大学に入って勉強しても、普通の企業に就職しますよね。やりたいことではなくても、有名な企業であれば入社するじゃないですか。だから、適性というものは、会社や仕事のなかで身につけていくものなんです。

つまり、「適性とは何なのか?」と言うと、自分の力が人の役に立つか立たないかという能力です。自分が好きか嫌いかではなくて、「自分のスキルが誰かの役に立つか?」なんですね。

例えば、料理を作るのが好きだとしても、まずい料理だったら誰も食べない。料理が上手くならないと、誰かの役に立つことはできないんです。そうなると、どこかで修行したり、料理の練習が必要ですよね。だから、仕事の適性というのは、そういう意味かなと私は思っています。

——和田さんも、仕事を通して営業スキルを磨いていったんですか?

和田:自分は何もできないし、やりたいこともないし、得意なことが何もなかったから。仕事をして、そこで結果が出たことで、営業が得意になっただけです。

人間関係に悩んでいる人のヒントにも…

——最後に読者へメッセージをお願いします。

和田:営業をやっている、やっていないは関係なく、人とのつながりや“ファンづくり”を日常的にやっていれば、必ず幸せになるということを伝えたいですね。例えば、「困ったときだけ頼まれても助けたくないな」って思う友達もいるじゃないですか。それは、あなたが冷たいわけじゃなくて、「この人だったら助けたい」と思う人もいますよね? これはどういう差なのかと言うと、日々の人間関係や思いやりの積み重ねなんです。だから、この本に書いてあるように、普通にお礼をするとか、思いやりを持った接し方を積み上げていくことが、実は自分の財産になる。お金には換えられないものが、そこにはあるんです。

——お客さんやクライアントだけではなく、職場でもファンをつくっていくということでしょうか。人間関係に悩んでいる人のヒントにもなりそうですね。

和田:そうですね。自分から誰かの役に立とうと思ったり、自分から声をかけたりしていれば、人間関係の悩みは半減しますよね。周りから好かれるような人になれば、自分も誰かに頼みやすくなるし、相談もしやすいし、されやすい。つまり、仕事がしやすくなるんです。もちろん、評価も高くなるから、承認されてやる気も出ますよね。そうすると、会社に自分の居場所がちゃんとあって、その人がいないと困るという存在になる。「会社を辞める」と言おうものなら、みんなが集まって止めると思うんですよね。そういう会社にいたくないですか? そしてもし、会社を辞めて独立しても、みんなが応援してくれるから、すぐに稼げます。“ファンづくり”をすることで、すべてがうまくいくんです。

——実はとてもシンプルなことなんですね。

和田:まだまだマーケティングは、「これをやったら売れる!」のような小手先のテクニックをいじくり回すような部分があると思うのですが、こんなに経済が成熟した日本で、昔のような売り方をするのは、絶対にしんどいと思います。しんどいセールスをしていたら、心が折れると思うので、いろんなところに“ファンづくり”が広まってほしいですね。

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子)

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