『生理で知っておくべきこと』〜まえがき〜

なぜ、これまで日本女性には「生理の正しいデータ」がなかったのか?

なぜ、これまで日本女性には「生理の正しいデータ」がなかったのか?

最新の生理のデータを集めた『自分の体を守る正しいデータを持てなかった女性たちへ 生理で知っておくべきこと』(日経BP)が5月7日*に発売されます。*アマゾンや楽天などのネット書店は5月1日に発売。

予防医療・栄養コンサルタントで、女性の健康や体についての研究を行う団体「ラブテリ トーキョー&ニューヨーク」を主宰する細川モモさんが、6年をかけて約2万人の女性に行ってきた調査を元に執筆された本で「最新の生理のデータを集めた日本で初めての本」としています。

ウートピでは同書の発売を前に「まえがき」とコラムを抜粋してお届けします。女性だけではなく男性も手にとってみてはいかがでしょうか。3回連載。

日本女性は、自分の体を守る正しいデータを持っていない

みなさんこんにちは。「ラブテリトーキョー&ニューヨーク」という団体を主宰している、細川モモと申します。私たちの団体では、女性の健康をサポートしたり、現代女性の体の状態について研究を行っています。

私たちが力を入れて調べていることのひとつに、「生理」「PMS(月経前症候群)」があります。これまで6年かけて、約2万人の女性に調査を行ってきました。
どうしてそんなに調べているのかというと、現代の日本女性の生理には、データがほとんどないからです。

婦人科のお医者さんが現在使っている日本女性の生理のデータは、なんと、1962年にアメリカの一地域で取られたデータでできています。これだと国も人種も違いますし、約60年前ですので、生活習慣も違っているはずです。そのデータが、現代の日本女性にも当てはまるのかも長い間わかっていませんでした。

つまり「日本女性の正しい生理はこれ」と示せるほどのデータが、今も昔もなかったということです。

なぜ、これまで誰も「正しい生理」についてデータを集めて、解明しようとしてこなかったのでしょうか。

大きな理由は、生理は病気ではないからです。不妊治療のデータなどは国が力を入れて集めていますが、生理は病気ではないので、糖尿病やメタボリック症候群のように集められることはありませんでした。お医者さんたちも、クリニックに来るのは主に病気などの悩みがある人が中心なので、健康な女性のデータを集めることは難しいです。

もうひとつは、政治の中心がずっと男性だという時代のせいだとも考えられます。

しかし最近はAIが発達してきて、生理にまつわるデータを集められるようになってきました。たとえば、生理日や排卵日を管理するアプリ「ルナルナ」があります。
インストール数はのべ1600万にも上り、多くの女性の生理にまつわるデータが手に入るようになりました。令和になって、ようやく日本ではじめて生理のビッグデータができつつあるのです。

さらに、「このビッグデータを上手に使っていこう」という流れになってきています。

このルナルナと、妊娠や出産をサポートする機関である国立成育医療研究センターが組んでデータを分析した結果、新しいことが次々にわかってきました。

たとえば、2020年には「生理周期は25歳の頃に一番長くなり、45歳にかけて平均で約3日間短くなる」ことが新たにわかりました。これはウェブ記事でもかなり有名になったので、知っている方もいるかもしれません。たったこれだけのことですが、長い間知られていなかったのです。

これは大変大きなことです。これまで、経験として「なんだか短くなった」と不安な人も多くいたかもしれません。しかし、それをお医者さんに聞いても、医学的にはこれまでそんなデータはなかったのです。女性にとって一大事の「生理」について、より多くのデータがあるということは有益なことです。

生理痛やPMSがひどいと病院に行っても、痛みどめを出されて終わり、という経験はありませんか? これも、生理についてのデータがこれまでなかったから行われていたことだといえます。

しかし、ビックデータが手に入るようになって、これまでより大きな変化が出てきています。また、これには、実は産婦人科の経営も大きく影響しています。
少子高齢社会といわれる現在、赤ちゃんを産む人はどんどん少なくなっています。

昔は、産婦人科は経営についてあまり考えなくてもよかったそうです。たとえば生理痛の人が病院に来たときも、薬を出しただけでおしまいにしても経営が成り立っていました。生理痛の人にわざわざ通ってもらわなくても、出産する人がいっぱいいたので、病院を回せていけたということです。

しかし今は、赤ちゃんを産む人が減っています。

産婦人科は今、診療の内容を変えなければいけない時期に直面しているのです。

ただ、手厚いケアをしたいのに生理痛やPMSについて、実はあまり解明されていません。「どういうしくみで起こるのか」はわかっていますが、生理痛やPMSなどを快適に過ごす方法などはまだわかっていないのです。それで結局、漢方、ピル、痛みどめのどれかを出す病院が多くなります。一人ひとりに寄り添ったケアをしたいけれど、それができるほど解明されていないという状況です。

ここまで説明した、「AIの発達」と「産婦人科の変化」。これらに、もちろん女性の活躍が追い風になって、生理やPMSの解明がどんどん進んでいくはずです。

しかし現段階では、お医者さんの教科書ですらも古いデータに頼らざるをえないのが現状です。

そうしたことから、私たちは生理とPMSについてビッグデータを集めてきましたが、それだけでなく、生理痛やPMSを管理できるアプリもつくりました。これを使うことで、食生活やストレス、お風呂に入る習慣などが生理痛とPMSにどんな影響を与えているかを調べられるようになりました。

この本では、6年間の調査結果と、アプリで集めたデータの分析結果をまとめています。日本女性の生理やPMSのデータは、今この瞬間も分析が進んでいる最中です。
最新のデータと研究結果が載っているのは、この本が初めてです。

生理痛とPMSは自分の力でよくできる

「体の冷えは、生理痛やPMSとは関係ない」という見方が、これまでは一般的でした。

でも「関係ない」といい切れるほどの研究がないというのが事実。これは、正しくは「関係ない」ではなく、「根拠がまだない」です。

私たちの調査では、冷えは生理痛やPMSと関係があることがわかりました。お風呂に入っている人は、明らかに生理痛とPMSが軽いというデータがあります。さらに食事でも改善しています。

私たちの活動のひとつに、体の悩みを抱えている女性の生活にアドバイスをして、変化を調べる「介入研究」があります。

それでわかったのが、生理痛とPMSは、いちばん解決しやすい悩みであるということ。

10年ほど行っていますが、食事や生活習慣を変えて、いちばん多いのが「生理痛とPMSがよくなりました」という答えです。

「生活習慣を変えるだけでいいの?」と半信半疑な人もいます。それでも、生理中に痛みどめを飲む量が6錠から1錠に減ったなど、具体的な改善が見られるのです。
むしろ「もともとは生理痛やPMSが軽いはずだけれど、生活習慣によって悪化させていた」というパターンが多いように思います。現代の生活習慣は、それほど体に負担をかけているともいえます。10代は体のしくみ上、誰でも生理が乱れやすい時期です。成人以降は安定してきますが、仕事が忙しかったり、ダイエットを試してみたくなったりして、体にとってよくないことが起こりやすい時期でもあります。そのせいで生理痛やPMSが悪化しているのではないかと私は予想しています。

日本女性のうち、生理痛は7割、PMSは8割の人に自覚症状があります。

毎月必ずやってくることですから、何かしらの方法で対処すれば人生を快適にすごせるようになるはずです。

知識があれば、自分の体を守ることができる

「これって病院に行ったほうがいいの?」ということも、生理ではよくありますね。「生理痛やPMSなのか、それとも病気の痛みなのか」「いつもより早く・遅く生理がきた」「量が少ない・多い気がする」など、毎月くるものだからこその悩みは尽きません。

また、せっかく病院に行っても、「特に問題はありません」という診断を受けたこともあるでしょう。

こうやって、病院に行くハードルが高くなっていくのもわかります。この本の目標は、病院に行かない理由が「わからないから」「忙しいから」ではなく、きちんとした知識により、自分で「これは大丈夫」「これは病院に行ったほうがいい」と判断ができるようになることでもあります。

この本を読むと、女性の体にまつわる正しい知識が身につき、自分で「病院に行く判断」ができるようになります。

知識がないことが原因で、病気になる人や妊娠を希望したにも関わらず叶わない人を、増やしたくないと思っています。

また、「仕事を頑張ったから健康が犠牲になっている」という女性も多いです。しかし、せっかく仕事を頑張ってきたのに、頑張ってきた自分を否定するのは悲しいことです。

自分の体のことをよく知っている人は、自信を持って人生を生きている

2019年に20〜50代の働く女性1000人にアンケート(日経BP総研との共同調査)を取ったとき、次のような結果がでました。

・生理による不調は、仕事のパフォーマンスを低下させる
・ 「自分は更年期障害だ」と自覚している人に昇級の話をすると、約半数の人は断っ
てしまう
・更年期の症状が理由で会社をやめようか考えたことがある人は、9割もいる

つまり、健康状態に不安があると、自信を持って仕事をすることが難しくなってく
るのです。

一方で、ヘルスリテラシー(自分の体や健康についての知識を持っていて、知識を
元に判断したり、役立てたりする力のこと)が高い人には、こんな特徴があることが
わかっています。

・仕事のパフォーマンスが高い
・健康に働き続けられる自信がある
・生理や更年期などの症状に、正しく対処できる
・望んだ時期の妊娠や、不妊治療の機会を失うことがない

繰り返しになりますが、これは「健康に自信がある人」の特徴ではなく、「ヘルスリテラシーが高い人」の特徴です。健康について正しい知識を身につけるだけで、自信が持てます。自分の思うように働けて、体調もよくなり、自分の意志で妊娠できる可能性が高い。もし不妊症になったとしても、正しい不妊治療を受ける力もつけられることが大切です。

女性の体は、年代によって大きく変化します。10代の不安定な生理が終わっても、20代で生理痛やPMSがひどくなるかもしれません。妊娠、出産をしたらまた変化が起こり、35歳ぐらいから生理周期が変わり、その後は更年期による症状が起きたりします。女性の体の変化に伴う不安は、定期的にやってきます。ですから、体の変化についてもぜひ知っておいてほしいのです。

私たちが6年かけて約2万人に調査をして、今ようやく出せる本です。あなたが思い通りの人生を送れるように、今出せる情報をすべて詰め込みました。生理とPMSの悩みがない日々を手に入れて、毎日をめいっぱい楽しんでください。

細川モモ 

SHARE Facebook Twitter はてなブックマーク lineで送る

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

なぜ、これまで日本女性には「生理の正しいデータ」がなかったのか?

関連する記事

記事ランキング