『うまくやる』第3回

失敗談は復活の話とセットで! 自分の話をするときに覚えておいてほしいこと

失敗談は復活の話とセットで! 自分の話をするときに覚えておいてほしいこと

『うまくやる~コミュニケーションが変わる25のレッスン~』(あさ出版)を書いたクリエイティブディレクターの熊野森人さんが、「コミュニケーションをうまくやる」方法を5回にわたり紹介します。(毎週水曜更新)

いまや人気のアイドルでさえ、生活感あふれる話や失敗談など、一見イメージを損なうような話を取り入れることによって、ファンに親近感を与えようとしています。今の時代、個々人の演出を、完璧に見せようとすればするほど、人はそこに違和感を覚えてしまうものです。ということで、今回は「どんなお話に人は共感するのか」を見ていくことにしましょう。

いまやブランディングはストーリー全盛の時代?

みなさんは「ストーリーテリング」という言葉をご存知でしょうか? この言葉は、事実をただ単に伝えることではなく、人の想いが感じられる物語や、お話をつくることを指します。小説、映画、ゲーム、ドキュメンタリーなど、そこに共通することは、人はお話に共感し、お話を愛するということです。事実や、コンセプト、機能といった単発の情報よりも、お話として組み立てられているほうが、認知や共感が深いことから、昨今のブランディングでは必ず用いられる手法です。

ここで問題です。面白いストーリー、感動するストーリー、考えさせられるストーリー、これら全てに共通するよくあるお話の要素ってなんでしょうか?

先日、僕の教えている大学で学生に同じ質問をすると、「涙と笑い、両方あることですか?」というような答えが返ってきました。ざっくりいえば正解! なのですが、もう少し分解してみると、主人公が成長すること、緩急の流れがあること、共感と意外性の双方が含まれていること、となります。

例えば、恵まれない環境から山あり谷ありの努力で新しい環境を切り開き、最後には思いもよらなかった大成功が待っていた、みたいなことです。

では、ちょっと想像してみましょう。校長先生の話、社長さんの朝礼の話、結婚式のスピーチなどなど、過去にあなたが聞いたことのあるこれらのお話の中で印象に残っているストーリーはありますか?

多分ないのではないでしょうか(笑)。むしろ、「早く終わってぇ」なんて思ったりして……。

なぜそうなるかと言うと、彼ら彼女らは、じぶんのことをあまり話していないからです。どっかからの借り物のお話をしていたりすることが多いから説得力もなく、面白くない、と感じてしまうのです。

先ほども言いましたが、ストーリーには「主人公が成長すること、緩急の流れがあること」が重要で、あまり良くない状況が描かれてからの、良い状況への好転が、人の心を揺さぶります。

嘘がすぐバレる時代、ならばさらけ出すのが正解

ただ、これを“じぶんごと化する”となった途端に、あまり良くない状況=じぶんの「弱さ」を出すことにだれもが臆病になります。キレイなじぶんだけを(会社だけを)見せていたい、すごいと思わせたい、だからじぶんたちの弱さなんて見せたら大変な損失だ、みたいに大抵は陥って、そこで止まってしまうのです。

それは仕方のないことなのかもしれません。しかし基本的に人は、ストーリーに織り込まれる事柄が、「こんなにもうまくいった」「じぶんすごい!」という情報だけだと、その人や会社に対して悲しいかな、嫌悪感を持ちがちです。嫌な自慢しいの奴、みたいなことです(笑)。結果、良く見せたいのに、これでは、逆効果ですよね。

人生、うまくいくことばかりではないのは、全人類共通の実感としてあるのに、そのうまくいっていないことは恥として隠す。まだ、昔であれば隠し通せたかもしれないですが、インターネットがあり、全人類ジャーナリストとなったいま、隠すことのほうがイメージに弊害があることが多くなってきています。

ただここで勘違いしてほしくないのは、何も現在進行中のうまくいってないことや、問題をリアルタイムで開示して、じぶんを切り売りしてくださいと言っているわけではないということです。

やるべきは、過去にあったうまくいかなかったこと、失敗した話など、そこからの教訓や、復活、修復の仕方などとセットで弱さを共有することです。それが魅力的なストーリーとして人の心に響きます。それが「主人公が成長すること」「緩急の流れがあること」の演出につながるからです。

例えば、僕自身も仕事の会話で、初対面の相手から褒められて持ち上げられたりすると、「ゴミをゴミ箱に入れる時に、30センチの至近距離でも必ず外す話」を筆頭に、過去にあった間抜けすぎる仕事の失敗話なんかを挟んで、相手の僕へのハードルを下げていきます。

エンゲージメントを強固にするのは人間味

マーケティングの世界で「エンゲージメント」という言葉があります。これは人や、企業、商品、サービス、ブランドなどに対してお客さんがどれだけ愛着を持っているかの状態を測る言葉です。

このエンゲージメントが強ければ強いほど、商品やサービスを新たに買ってくれる、または継続的に買ってくれることになるのですが、僕はこのエンゲージメントという言葉、本来の言葉通り病める時も健やかなる時も共に過ごせる仲のことを指すのだと勝手に解釈しています。

誰しもがじぶんのことを世間に公開して、いろいろな批判にさらされ、平常でいられるハートを持っているとも思わないですが、何らかの関係性を望むために、じぶんを公開することを選ばれた方は、ぜひうまくいっている面だけでなく、うまくいっていなかった面、プラスそこからの復活も見せることを意識してストーリーを演出してみてほしいと思います。

例えば個人なら、過去の恋愛話、先生や上司に怒られた話、イキがってた時代の香ばしい話(笑)、組織なら、業績が悪かった商品やサービスの話、返品が相次いだ話、開発時の揉め事など、いろんなお話が人の心をつかみます。

これらは総じて人間味があるから、面白いのです。そう考えると、いろんな演出よりも、等身大の人間がいちばんのコンテンツなのかもしません。

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