「不安でしょうがなかったら映画見て」PFF総合ディレクター・荒木啓子さんに聞く

「不安でしょうがなかったら映画見て」PFF総合ディレクター・荒木啓子さんに聞く

新進映画監督の登竜門として今年で40回目を迎える「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」が9月8日(土)から開催されます。

映画祭の総合ディレクターとして、92年から映画祭を仕切っている荒木啓子(あらき・けいこ)さんに「仕事」をテーマに前後半にわたって話を伺いました。

PFF総合ディレクターの荒木啓子さん

PFF総合ディレクターの荒木啓子さん

不安だったら映画を見て

PFFは、“映画の新しい才能の発見と育成”をテーマに1977年にスタートした映画祭。世界でも珍しい自主製作映画のコンペティション「PFFアワード」をメインに国内外の多彩な映画を招待上映します。

——総合ディレクターはどんな仕事なのですか?

荒木:「どんな仕事してるの?」って聞かれたら「何でも」って答えるようにしています。説明するのが難しい。多分ね、ディレクターっていう言葉が映画祭の特殊用語なので分かりにくいような気がします。映画祭以外では、プロデューサーと呼ぶ仕事でしょうか。プロデューサーと言うと分かりやすいでしょ? 映画祭のすべての責任者ですべてを見ている人ですね。

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——ウートピは働く女性がターゲットのニュースサイトなので、働く“先輩”である荒木さんにお話を伺いたいと思いました。

荒木:参考になるかなあ……映画祭っていままさに開催中のヴェネチア映画祭や、世界で一番有名なカンヌ映画祭など、第二次世界大戦前後にヨーロッパで始まったもので、そもそも日本の文化ではないのです。

映画という文化芸術を使って、世界外交や国威高揚をやってきたのがヨーロッパの映画祭で、そもそもアンチハリウッド、アンチショービズ色の強いものでした。そんな「映画祭」は日本では1970年台から始まった、歴史の浅いものです。

さらに、我々PFFは、8mmフィルムによる自主映画の制作という日本独自の文化に注目した、まだ先のみえない若者たちのための映画祭ですので、かなり独特です。そんな「自主映画を、商業映画と同じように扱いたい」という極めて限定された人々で成り立つ仕事で、いわゆる「職場」とか「仕事」の概念とは相当違うかなと思います。

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——それはどういう意味ですか?

荒木:世の中の多くの人は有名人が好き、成功が好き、ですよね。成功するかも分からないし、有名か無名かも分からない人に対して、ありったけのエネルギーを注ぐのがPFFで、そんなことをやろうっていう人は、すでにそこで選別されている人なんです。多分、とってもお人好し? そういう人しか集まってないから、そもそも、そんな大変な人間関係はない。そういう意味で職場で悩んでいる人たちの参考にならないかもしれない。

でも、職場で悩んでいるんだったら、その状況が耐え難いんだったら、出ていくというのはすぐに考えていいと思う。世の中いろいろな仕事があるんだから、いろいろなものを見に行って、いろいろな職場を訪ねて、いろいろなことを経験して、自分に合うところを探せばいいなと思います。生きていることは不安。でも、世の中多様な生き方している人いっぱいいるからね。

まあ、ともかく、たくさん映画を見ましょう。すると、ああ、多様だなと分かって、少し楽になるかも。

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世の中は希望であふれている

——私も映画に随分救われました。

荒木:有給とって1週間映画館に入り浸ってみるといいよ。あるいは絶賛開催中のぴあフィルムフェスティバルを見に来ればいいと思うよ。いろいろな人がいるっていうのが分かる道具として映画を使えばいい。そういう意味で映画はとっても便利なので。

——映画は希望ですよね。

荒木:っていうかね、世の中は希望にあふれているのよ。なぜそのことを前提にしないの? 可能性にあふれているんですよ、人間。いくつからだって何だってできるのよ。何でそこを信じないかなって思うけど。

——荒木さんはなぜ信じられるのですか?

荒木:そういう人をいっぱいみてきたから。映画の中にも、現実にも。人間はいつだって何でもできると思うよ。

今日、しみじみと、あー私、子供の頃舞台装置とか舞台衣装とかのデザインや、建築とか仕事にしたいと思っていたな~とふと思い出したんですよ。でもとりあえず今は、映画祭を企画運営するのに手一杯で、忘れていました。でも、やろうと思えば、自分で小さい舞台セットつくってネットで発表することもできるなあ……と今思ったよ。

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「次はこうしよう」で26年間続けてきた

——荒木さんはどんな思いでこの仕事を26年間続けてこられたんですか?

荒木:26年? いや、ビックリだよね。自分でもこんなに続くとは思ってもいませんでした。銀婚式が25年? 続けてきた思い……分かりません。「今年はここが上手くいかなかったから、次回は絶対こういうふうに改良しよう」というのが続いているから続いているだけで、「もういいや、やれることはやった」って思ったら辞めていると思います。

——次はこうしよう、次はああしようってやってきて今なのですね。

荒木:そうですね。それしかないですね。興味や創意工夫のアイデアが継続している、ということでしょうか?

違うことを楽しめるのが最高!

——「映画を見れば多様な人がいるってわかる」とおっしゃっていましたけれど、多様性がある社会に大事なことは何だと思いますか?

荒木:人と自分は違うんだっていうこと。違うから仲良くしましょうとか、違う人と積極的に関わりましょうとか、そういうことではなく、違うっていう事実があって、違うんだなと理解すること。違うって楽だ、違うってことを楽しめるところまでいくと、生きていることが楽。そこから「多様性」という言葉が生きてくる。違うから面白い。

肌の色の違う人とか、体の構造が違う人とか、いろいろいるわけじゃないですか。それを楽しめることがすごく大事。自分にはできるけど、この人にはできないってときに、自分の力を貸そうと思える、逆の立場のときは自分も力を貸してもらおうって自然に思えるというのがすごく大事なこと。すごく背の高い人がいたら、取れない荷物を取ってもらおうっていうことと同じことだよね。そんな感じかな。うーん、うまい例えが浮かびません……。

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——最後に、9月8日から22日まで「ぴあフィルムフェスティバル」が開催されますが、改めて見どころをお願いします。

荒木:映画を選ぶときに普通にある、テレビで予告編があったり、宣伝があったりするような映画を上映する映画祭じゃないんだけれど、例えば、フラッと時間が空いて、思い切って1日中いたら、すごく気持ちが楽になる映画祭。あるいは、ああ、なんかいろんな人が生きてるなと元気がわく時間になる映画祭。あるいは、あ! 映画って自分で作れるんだって気づく人もいる映画祭。

4つの企画をやっているんですけど、監督などのゲストが毎日とっかえひっかえ出てくるので、映画を作っている人たちの声を生で聞ける。そうすると、映画を作るってこういうことなんだ、私も作れるかもしれないって思うし、人間やってできないことはないかもと楽しくなるかも。

ウートピ読者の皆さんには初体験の人が多いと思うのだけど、気楽に来てほしい。入場料金安いし、楽しいし、面白いし、出会いはあるし、最高! って(笑)。

【第40回ぴあフィルムフェスティバル】
開催期間:2018年9月8日(土)~22日(土)[月曜休館・13日間]
会場:国立映画アーカイブ(東京都中央区京橋 3-7-6 )
チケット料金:公式サイト参照のこと。

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