「LIFULL 介護」編集長インタビュー③

生活費はどのくらいかかってる? 帰省したときに親に確認したいこと

生活費はどのくらいかかってる? 帰省したときに親に確認したいこと

今年も残すところあとわずか。新型コロナがおさまったとは言えない状況が続いていますが、3年ぶりに“行動制限のない年末年始”とあって、今年は久しぶりに帰省しようと考えている人も少なくないのでは?

日本最大級の老人ホーム・介護施設検索サイト「LIFULL 介護」によると、例年お盆や年末年始などの帰省シーズンになると、老人ホームへの問い合わせや入居相談が増加する傾向にあるそうです。

「うちの親はまだまだ大丈夫」と思っていても、日々状況は変化するもの。そして、心づもりや準備をしておくのに越したことはありません。そこで、同サイトの小菅秀樹(こすげ・ひでき)編集長に「帰省したときにやっておいたほうがいいこと」をテーマにお話を伺いました。全4回。

「LIFULL 介護」の小菅秀樹編集長

食費はいくらかかっている? 経済状況のイメージをつける

——確認するべきことの3つ目は何でしょうか?

小菅秀樹編集長(以下、小菅):3つ目は、「親の経済状況を確認する」です。最終的には、通帳を見せてもらえば判明するので、いつかそのタイミングが来たときに見ればいいと思います。ただ、普段の生活にどのくらいお金がかかっているかぐらいは、早めに知っておいたほうがいい。

その理由は、介護が必要になった際はどれくらいの金額を捻出できるか判断するためです。また、介護施設の入居も、支払い能力で選べる施設が決定します。場合によっては家族の援助が必要かもしれません。そういったことを想定するうえで経済状況の確認が必要です。 

例えば、「うちは家族で食費が○万円かかってるけれど、2人だとどのくらいなの?」とか、「今どういうサプリを飲んでいるの?」とか。生活費にいくらかかっているかを知ることで、経済状況のイメージをつけてほしいんです。ただし、帰省して、いきなりお金の話に答えてくれることはないと思うので、まずは生活の様子を見る。生活水準を知ることが、第一歩かなと思いますね。

——お金のことは聞きづらいですよね。

小菅:ハッキリ申し上げますと、この話題に触れるのはかなり難しいです。1つ目と2つ目の話もそうなんですが、帰省したときに、親の病気や介護、経済状況について聞き出すことはほとんどできないと思います。望んでいる会話は引き出せないと思ったほうがいいですね。

というのも、心の距離がある状態だと、相手は本音で語ってくれません。どんな人間関係もそうですよね。たとえ親子関係であっても、たまに帰ってきて、普段は電話もよこさない子供に、深刻な話はしませんよね。「最近どう?」「何か困ったことない?」と聞いても、「大丈夫。困ったことがあったら言うから」みたいな感じで終わると思います。子供側も、「大丈夫って言ってるし、元気そうだからまぁいいか」って、そこで話を終えちゃうんですよね。

——子供に心配させまいとして、なかなか込み入った話はしてくれない親は多そうですね。その場合、どうしたらいいのでしょうか?

小菅:正面からグイグイ行くと拒否されます。親からしたら、久しぶりに子供と会って、一緒に食事をしたり、近況を報告し合ったり、楽しい時間にしたいじゃないですか。唐突に、深刻な話をされても、心の準備がないまま、「介護になったら、老人ホームがいいな」なんていきなり言う親はいませんよね。逆に、答えられたら大したものです。もしくは心配したほうがいいかもしれない。「本当に体調が悪いのかも……」って疑ったほうがいいですね。つまり、基本的にこれらの話は、本音をたやすく言えない部分ではあるんですよね。

だから、親に本音を話してもらうには、日ごろからの連絡が大事になってくる。僕の場合は、日頃はほとんどLINEで済ませているのですが、たまに電話をすると微妙なニュアンスが伝わるんですよね。何か質問をしたときに、都合の悪い話ははぐらかされたり……(笑)。健康状態なんかも、「子供に心配をかけたくないから言いたくない」という気持ちがあると思うんですけど、そこをあえて「体調はどう? 腰が痛いって言ってたけど大丈夫?」と聞いて、ちょっとずつ踏み込んでいってほしい。最初は、月に1回でもいいんですけど、できれば1週間に1回くらいの頻度で電話をしてほしいですね。

できればメールやLINEよりも電話で

——日常的に電話で話すことが大切なんですね。

小菅:とにかく、続けることが大事です。1回の通話は、3分でも5分でもいいんです。ハードルを下げて、半年とか1年とか続けることによって、それまでのコミュニケーションとは明らかに変わってくると思います。親子間で心を許せる関係性ができているので、ちょっと突っ込んだ話をしても、そんなに嫌がられることはないんですよ。

そもそも、週1回電話をするということは、そのこと自体が「心配してるよ」「大事に思ってるよ」という気持ちの表れですよね。子供からの愛情表現なので、それを積み重ねることによって、親にも気持ちは伝わるはずです。そうすれば、病気や介護の話になっても、「この子は自分のことを心配して言ってくれてるんだ」というように、前向きに捉えてもらえる。だから、関係性ができあがるまでは、突っ込んだ話はしないほうが無難ですね。

——これまでの話を聞いて、親世代の傾向を知ることができました。

小菅:親にもよるんですけどね。「いつか、そういう話をしないといけない」と思っている親でも、なかなか切り出すタイミングが難しかったり……。親から深刻な話をするには、ちょっと勇気がいるので、子供から話を振ってもらうのを待ってるという方もいらっしゃるわけです。だから、いきなり直球勝負じゃなくて、遠回しに固めてから、いつか本題に入るという方法で進めてみてください。例えば、半年後に帰省する予定があるなら、逆算して、ちょっとずつそういう話を織り込んでいくとか。

最近では、企業で介護離職防止セミナーなども増えているので、帰省する前に、「会社の人事部から、介護と仕事の両立についての話があって。今度帰ったときに、介護の話とかもしたいんだけど……」なんて話をして、事前に話題を振るんです。もちろん、その前に半年間、週1回電話をして、少しずつ関係性を構築しておくことが必要ですが。そして、帰省したときに、「せっかく顔が見れたし、電話じゃ聞けなかった話をしたい」と率直に言ってみてください。

もちろん、本人が困っていなければ、ここで拒否されても仕方がないんですよ。ただ、面と向かって、そういう話ができたということは、一つのステップですよね。自分の家に戻ったら、「この質問をしたら、こんな表情だったな」ということを思い出しながら、メモしておく。それでまた、今まで通りに、週1回の電話を続けていく。時間はかかりますが有効な方法だと思います。

——話のきっかけとして、介護をしている方の苦労話をしてみるのもいいのかなと……。

小菅:すごく良いと思います。俳優や女優などの著名人が、老々介護をしているとか、介護施設に入っているというニュースがたまにありますよね。会話の中でそういう話題を出すのは、親と介護について話すためのきっかけにつながると思いますよ。

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子)

SHARE Facebook Twitter はてなブックマーク lineで送る

この記事を読んだ人におすすめ

この記事を気に入ったらいいね!しよう

生活費はどのくらいかかってる? 帰省したときに親に確認したいこと

関連する記事

編集部オススメ
記事ランキング