「LIFULL 介護」編集長インタビュー②

「親の健康状態をチェック」年末年始の帰省で確認しておいたほうがいいこと

「親の健康状態をチェック」年末年始の帰省で確認しておいたほうがいいこと

今年も残すところあとわずか。新型コロナがおさまったとは言えない状況が続いていますが、3年ぶりに“行動制限のない年末年始”とあって、今年は久しぶりに帰省しようと考えている人も少なくないのでは?

日本最大級の老人ホーム・介護施設検索サイト「LIFULL 介護」によると、例年お盆や年末年始などの帰省シーズンになると、老人ホームへの問い合わせや入居相談が増加する傾向にあるそうです。

「うちの親はまだまだ大丈夫」と思っていても、日々状況は変化するもの。そして、心づもりや準備をしておくのに越したことはありません。そこで、同サイトの小菅秀樹(こすげ・ひでき)編集長に「帰省したときにやっておいたほうがいいこと」をテーマにお話を伺いました。全4回。

「LIFULL 介護」の小菅秀樹編集長

生活の様子や会話で、親の“健康状態”をチェックする

——前回から親が元気なうちに話しておくべきこと、確認しておいたほうがいいことを伺っております。確認するべきことの2つ目を教えてください。

小菅秀樹編集長(以下、小菅):2つ目は、「親の健康状態をチェックする」です。そもそも、ほとんどの子供は親の健康状態について、知っているようで知りません。例えば、「親がどんな病気を持っていて、どんな薬を飲んでいるのか」「どこの病院に、月何回通っているのか」なんて、分からないですよね。だから、そういうことをあらかじめ聞いておくことが必要です。

その場は病名の確認だけでも構いません。あとで、「その病気が進行すれば、どんな状態になるのか」ということを、調べてみましょう。それほど深刻な病気でなければいいのですが、進行したら介護が必要になるかもしれない。そういう想像をしていただきたいんです。そのため、親との会話の中で、「何も知らないんだけど、持病はあるの?」「どんな頻度で病院に行ってるの?」みたいに、さりげなく聞いてほしいと思います。

——健康状態について、会話以外で分かることはありますか?

小菅:帰省したら一緒にご飯を食べると思いますが、高齢者は結構むせるんですよね。加齢とともに飲み込む力が低下します。これにより食べ物が食道ではなく気管に入ってしまい、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)のリスクが高まります。「前よりむせる回数が増えてない?」「病院に行ったほうがいいんじゃない?」というような声かけをしていただくとか。「私も付き添うから一緒に行っていい?」と伝えてほしいと思います。

——一緒に行くんですか?

小菅:つまり、親のかかりつけ医と接点を持ってほしいんです。親は子供に対して、自分の弱みを見せることはほとんどありません。基本的には、隠すと思うんですよ。だから、かかりつけ医に会って、「親の健康状態について教えてください」とさりげなく聞いてみる。かかりつけ医と接点を持つことで、「何か起きたら、この先生に頼ればいいんだ」というように、親に関する情報収集につなげてほしいと思います。

「痩せた」「食が細い」「ボーっとしている」などは要注意

——なるほど。ほかにも、見て分かることはありますか?

小菅:コロナ禍でよく言われるようになった「フレイル」*はご存じですか? 「フレイル」とは、健常と要介護の中間の状態のことを指します。親を見て、「以前より痩せたな」「食が細くなっているな」と感じたら、要注意です。

例えば、コロナ禍で、家にこもる時間が長くなった方も多いと思います。すると、運動量が減り筋力が衰えてしまう。活動量が少ないから食欲も湧かず質素な食事でおなかを満たして、すぐに寝てしまう。そういう状況がしばらく続くと、筋力が下がって食事もとらないという負のスパイラルに陥ってしまいます。だから、明らかにやつれている状態は危険かなと思います。その場合は、「普段はどんな食事しているの?」「どこで買い物してるの?」「お米とか重いものは運べるの?」という話から、普段の生活の様子を探ってほしいです。

親が日頃どんな暮らしをしているか、興味をもってもらいたいと思います。「いつも誰と何をしているのか?」「友達はいるのか?」ということを、子供は分からないですよね。でも、普段の生活を知ることで、運動のきっかけを促すこともできると思います。ただ運動しろと言っても本人の意欲がなければ行動に移りません。そこで、高齢者も履きやすいスニーカーをプレゼントして、「1日20分歩くだけでも、筋力が維持できるんだって。今度一緒に公園まで散歩してみない?」と促してみる。そんなところから、親の健康に意識を向けていってほしいなと思います。

*https://kaigo.homes.co.jp/manual/healthcare/flail/

覚えておいてほしい「地域包括支援センター」の存在

——認知症についても、気になるのですが……。

小菅:例えば、久しぶりに帰省したら、郵便ポストがいっぱいだったり、家の中にゴミが散乱していたり、カレンダーが数カ月前で止まっていたり。視覚的に、「明らかにおかしい」と思う部分があれば、かかりつけ医や認知症外来などへに相談しましょう。

また、会話から分かる場合もあります。認知症の症状としてよく言われているのが、同じ話を何度も繰り返したり、親のほうから話題を振ってこなかったり。久しぶりに会って、いつもだったら、もっといろんなことを聞いてくるのに、何の話題も出てこないな、という状態も要注意。また、感情の起伏もなく表情が変わらない。ボーっとしている時間が多い、ということがあれば、注意深く親の健康状態を見てほしいと思います。

そして、介護や認知症の相談先として覚えておいてほしいのが「地域包括支援センター」です。地域の高齢者の総合相談や介護予防の支援を行っている機関で、高齢者本人だけでなく家族も含め総合的にサポートしてくれます。原則として中学校区に一つ設置されていますが、地域によって呼び方が違います。住んでいる自治体に問い合わせるか「自治体名 地域包括」でネット検索してみてください。親の変化に気が付いた時、些細(ささい)なことであってもまずは「地域包括支援センター」に相談することが大事です。場合によっては病院などの専門機関に繋いでくれます。

ここからは本格的に介護が始まってからの話になりますが、とにかく家族や自分ですべてを背負おうとしないこと。介護にはいろいろな選択肢があることを知って、まずは公的なサービスや地域、周りに頼ってほしいと思います。

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子)

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