3月下旬に初の著書『毎日ザレゴト 人と比べて生きるには人生は短すぎるのよ』(大和書房)を出版したナジャ・グランディーバさん。
満点を目指さずにいい意味で「やりすごす」という、ナジャさん流の生き方について聞くインタビュー後編では、人との付き合い方について語っていただきました。
好きなことを仕事にしたって、しんどいことはあるよ
——前回、苦手な人とは平行線で付き合うなどの「6割で生きる」ポイントを伺いましたが、頑張ってないと思われたり、好きなことだけしていると思われると、嫉妬や意地悪されたりしませんか?
ナジャ・グランディーバさん(以下ナジャ):意地悪されてるかどうかはわからないけど、「好きなことを仕事にできてていいですね」とはすごく言われるよ。正直、好きなことをしているから毎日めっちゃ楽しいってわけでもないし、趣味は趣味でおいといたほうがいいのかなって思うときもあるけどな。
テレビ用のメイクでも2時間はかかるし、衣装もだんだん制服感覚になってくるし……。メイクめんどくさい~ひげ剃るのめんどくさい~って思っても、出来上がって鏡見て「きれい」って思うと、それはそれで気分はアガるけど。でも最近は本当にめんどくさいかなあ……贅沢な悩みかもね、それは。
「夢があったけど、夢とは全然違う仕事をしています」って人には酷な話かもしれへんけど、しんどいって、そりゃ毎日毎日……。やりたいときにやれるから楽しかったなって、仕事にしてみてわかった。
——確かに。贅沢な悩みだって言われちゃいそうですね。
ナジャ:言われてもなぁ……。「だからあ、もうめんどくさいねんて!」「毎朝、血ぃ出るくらい深剃りしなあかんし、好きな時間にやってたことを朝早くからせなあかんし!」って、めんどくささを伝えるしかできないかな。それ以上は言わない。ややこしくなるだろうから。
言い過ぎない、あんまり深入りしない
――言い過ぎない、その引き際みたいなのがうまいですね。
ナジャ:上手なんかはわからないけど、とにかくめんどくさいことが嫌なのよ。そもそも他人とそんな仲良くもなりたくないし、だからといってギスギスするのも嫌っていう、ちょうどいいところで誰とも交わらず平行線でいきたい。
昔は言いすぎてゲイバーのお客さん怒らせたりもしたけど(苦笑)。そういう失敗から身についてきたのかも。言いすぎない、あんまり深入りしすぎない。
——バーだと、悩み相談なんかもよくされたかと思うのですが、アドバイスはせずに話を聞くにとどめておくのがナジャさん流だそうですね。私の場合、ついつい「いい答えを返さねば!」と構えてしまうのですが。
ナジャ:最初はそう思う気持ちもあったけどね、だんだんわかってきた。悩みを吐き出した時点で5、6割は解決してるというか、すっきりしてる。そこからさらに親身に答えようとするとこっちが疲れるだけやな。
——親身に答えるのをやめたきっかけがあったんですか? たとえば「あなたのアドバイスをきいたのにうまくいかなかった!」と言われたとか。
ナジャ:特にきっかけがあったわけやないけど、具体的なアドバイスをしたとして、その子がそれをやってみてうまくいかなかったらまた悩むでしょう? 悩みの種になるようなアドバイスは、そもそも必要ないと思うのよ。
機嫌は割と安定、ムカつくこともそんなにない
——ナジャさんって、「自分のしたこと、言ったことで相手が深刻になったらどうしよう」ってまず考えますよね。本の中でも、カミングアウトには基本的に反対、なぜなら母親に「自分のせいかもしれない」と悩ませてしまうからとか、ナジャさんが子どもを持ったら、その子が他の家族と違うことに悩むかもしれないとか。随所に優しさがにじみ出ている感じがしました。
ナジャ:どうなんかな。優しいって言ってくれるのは、いいふうに解釈してくれてると思う。ただ揉めたくないのと、気を遣ったり、気を遣われたりしたくないのよ。相手に優しくしようと思っているんじゃなくて、自分のためなんじゃないかなって思うよ。
——ナジャさん、怒ったりムカついたりすることはないんですか?
ナジャ:私、機嫌悪い日っていうのはあまりないタイプかも。低めの安定。常に6割で生きてるからかもしれない。
ムカつくこともそんなないねんけど、それは半分諦めてるっていうのもあるかも。ムカつくことされても、諦めるっていうか「しゃーないな」って思うのよ。その人はそういう人なんだって自分を納得させてるから、「そこ直したほうがいいよ」って伝えることもないし、そもそも言って直るわけないと思てるし。距離をとるようにするくらいかなあ。
アドバイスじゃ他人の性格は変わらない
——「そこ直したほうがいいよ」って、善意のアドバイスのつもりでやりがちですけど、本当は自分のためだったりしますよね。こうしてほしい、という自分の欲求にすぎないというか。
ナジャ:そうそう、「あなたのために言ってるのよ」って言いながらもね。私はやらないかな。性格ってなかなか変わらへんし。アドバイスで性格が変わった人なんて見たことないもの。たとえば、メイクで「ここはこうしたほうがいいよ」とか伝えると直る子はおるけど、性格は変われへんのよ。だから距離をとって終了。そういう意味では優しくないのかもよ。その子のためになることを言わないっていうのは。
——ではそろそろまとめに。読者の方に向けて、この本を紹介していただけませんか?
ナジャ:「頑張りたい人は頑張ればいいけど、意味もなく頑張ってるくらいだったら、ちょっとゆっくり歩いてみたら?」っていうのが一番いいたいこと。ダラダラって言葉はいい言葉だととられへんけど、「ダラ~ッと生きればいいじゃない」っていう提案かな。
やりたいことがあって頑張れてるならいいと思うけど、ただ闇雲に生き急いでたりとか、「なんのために頑張ってるのかな」っていう人には、ナジャみたいな人もおるよって。あっ、だけど子どもは読んだらあかんな。
——ラジオ(ナジャ・グランディーバのレツゴーフライデー)でも言ってましたね。子どもは読んだらダメ。
ナジャ:だってさ、子どもに「夢ない、希望ない、やる気ない」っていうのはちょっとあれちゃう? 夢を持って明るく生きてほしいわ。だから、子どもはこの本を読まないで、塾に行きましょう!(笑)。もちろん、頑張りすぎちゃってる子は安全な場所で休んだらええと思うし、大人でも「もうちょい頑張ってよ」と思う人はいるけどな。
——今の世の中、頑張ってないと不安になることはあるかと思います。
ナジャ:「頑張らないこと」をしてないからやと思うわ。「頑張らない」をやってみたら、意外と生きていけるから、一回やってみたら、と思うけどな。まぁ、そう言う私も、3連休とかあるとちょっと不安になるけど(笑)。しんどいしんどいと言いながらね、そういうとこもあるよ。
(聞き手:安次富陽子、構成:須田奈津妃、撮影:面川雄大)