映画『私をくいとめて』インタビュー・前編

「のん」という俳優の魅力をもう一度見つけた瞬間…映画『私をくいとめて』監督に聞く

「のん」という俳優の魅力をもう一度見つけた瞬間…映画『私をくいとめて』監督に聞く

30代、会社員。おひとりさまライフを満喫中。話し相手なら、脳内に生み出した「A」がいるから大丈夫。自分の世界の中で、傷つかない術(すべ)は心得ている――と聞いて、「え、私のこと?」と思った人も多いのでは? 

これは12月18日に公開される、映画『私をくいとめて』の主人公・みつ子のお話。綿矢りささんの同名小説を映画化しました。

みつ子の気ままな快適ライフも、年下の営業マンに恋をしたことで変化が……。うれしいやら困惑するやらのみつ子の姿が魅力的に描かれています。

「人は生まれながらに、おひとりさま」と力を込める大九明子(おおく・あきこ)監督に、初タッグとなったのんさんとの仕事や人との距離の取り方について伺いました。前後編。

大九明子監督

大九明子監督

のんさんからの質問で気づかされたこと

——主人公のみつ子は31歳。設定年齢より若い20代ののんさんをキャスティングした理由は?

大九明子監督(以下、大九):原作小説を読んだときに、みつ子というのは、周囲によくなじんだ、どんな会社にもいるような女性だと思っていたので、「そういう女優さんって誰だろう?」と当初は皆目見当がつきませんでした。でも、プロデューサーにのんさんを提案いただいたときに「いた!」と。どこかいい意味で年齢不詳な感じもするし、ぴったりだと思いました。

——のんさんからの質問で映画の核を再確認できたと伺いました。

大九:この作品に限らず、俳優から「この役ってこうですかね?」と質問を受けることで、演出しながら見えてくることがよくあります。

例えばみつ子の衣装合わせの際に、のんさんが「みつ子の部屋着はジャージやスウェットみたいな感じかと思っていました」と言ってきたんです。そのときに私は即座に「違う」と思えたんです。のんさんに質問されたことで、「その選択肢は私の中になかったな」ということを気づかされた。そして、「なぜ、そうではないかというとね……」とのんさんに説明することで、みつ子の人物像がより深まっていきました。

みつ子は31歳。31歳の会社員の女性ともなれば、ストレス解消などで服を買ってしまうわけで、処分に困るくらい持っているはず。会社に着ていくわけにはいかないような服だって、きっと欲しいから買いますよね。そうすると、部屋の中ではちょっとスポーティなワンピースなんかを身につけるのではないかと考えました。部屋でグダグダしているからといって、服までグダグダではない。

撮影の様子

撮影の様子

——確かに、劇中の部屋着がとてもかわいかったです。「おひとりさまライフを満喫している人は家ではグダグダな服を着ている」というイメージが世間にあるのかも……。

大九:そうかもしれないですね。のんさんの中では、そういうふうに感じていたみたい。でも、みつ子は何かを諦めているという人ではないし、あくまで「おひとりさま」を満喫している人だから。

部屋の様子としては「これでいいんだ」という飽和状態みたいな息苦しさを感じさせたかったのでカメラワークなどで演出していきましたが、本人は息苦しいと思っていないので、「のびのびとやっていればいいんですよ」とお伝えしました。

俳優の皆さんには、それぞれいろんなアプローチの仕方があると思いますが、のんさんはいろいろ熟考して役を作っていくタイプのようです。

※11月12日(木)正午解禁「私をくいとめて」新カット②

「のん」という俳優の魅力を再発見した瞬間

——のんさんとは初タッグということですが、一緒にお仕事をしてみていかがでしたか?

大九:とても楽しかったです。現場でも面白かったのですが、編集しているときに、自分の中でNGだと思っていたテイクにも、改めて見ると「あ、こっちだな」と思うものがいっぱいあった。そういうものをつないでモンタージュしていったら、「のん」という俳優のすてきさ、魅力を、もう一度見つけられた気がしています。

「私をくいとめて」場面写真㈪

■映画情報
『私をくいとめて』2020年12月18日(金)全国ロードショー
【原作】綿矢りさ「私をくいとめて」(朝日文庫/朝日新聞出版刊)
【監督・脚本】大九明子
【出演】のん 林遣都 臼田あさ美 若林拓也 前野朋哉 山田真歩 片桐はいり 橋本愛
【クレジット】 (C)2020『私をくいとめて』製作委員会
【配給】日活

※後編は12月18日(金)公開です。

(聞き手:新田理恵)

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