大変な時期を共に過ごした家との別れで思ったこと/荻原ゆか

大変な時期を共に過ごした家との別れで思ったこと/荻原ゆか

先の見えない大変な日々が続いています。会社にも行かず、友だちにも会えず、うちの中にいると、つい”ひとり”になってしまった気がして、寂しい気持ちになることも。そこで、ウートピは「1往復エッセイ」を始めます。気になるあの人へ「最近、どうですか?」とたずね、「こちらはこんな感じです」と回答する。そんなささやかな現状報告と、優しくて力強いメッセージをお届けします。

今回は、フリーランスの櫻井朝子さんから、アートディレクター・デザイナーの荻原ゆかさんにこんな質問が届きました。

【荻原さんへ】

ベルリンで大変な思いをされたかと思います。それを通じて、ドイツの暮らし、どうですか?とお伺いしたいです。

めまぐるしく変わる環境

私と夫は、2018年12月よりドイツ・ベルリンで暮らしています。

朝子さんとは、ベルリンで暮らすちょっと前に友人宅で出会い、パートナーの方とのことを聞いていたので、お二人の結婚を知りとても喜ばしい気持ちになりました。

今年、新婚旅行でベルリンに来る予定だったとのことですが、新型コロナウイルスの影響 で叶わなくなってしまったと聞き、一緒にビールが飲めなくなってしまったことが残念でなりません。

そんなこともあって、今回は朝子さんに向けて、私から近況報告。 ベルリンでの暮らしがどうなったのかをお話ししたいと思います。

3月中旬、新型コロナウイルスの感染拡大に対してまだどこか他人事のように思っていたころ、住んでいた家の契約が切れるタイミングがやってきて、私たち夫婦は西ベルリンから東ベルリンへ5回目の引越しをしました。そこは仮住まいの場所で、数ヶ月後には6回目の引越しを控えている状態でした。

5回目の引越しから1週間ほど経って、ドイツでの1日の感染者数が1000人を超え、メルケル首相がテレビで戦後の危機だと伝えるのを見て、大変な事態を経験していると感じました。

すぐにガラリと状況は変わり、お店や学校は営業を停止、買い物・気分転換の運動以外の不要不急の外出は禁止、3人以上の接触は禁止、屋内の公共の場所ではマスク着用が必須に。

次々と変わる状況とサイトで確認できる感染者数に不安を抱えながら家で過ごすしかない。先の見えないこの日々に不安がしんしんと募ります。

されどお腹は空くし、動いてないのに体は汚れるし、眠くもなる。

世の中がどんなに変わろうと、私たちの生活は続くのです。

ただでさえ慣れてない土地でてんやわんやな日々なのに、身を守りながらの生活になり、今までの生活も見直さなくてはいけない状況になりました。

暮らしにどんな変化があったのか?

では、どんなところが変わったか。いちばんは買い物です。食料品は宅配か、インターネットで注文し店頭で受け取りができるスーパーで購入するようになりました。アジアンマーケットは遠くなってしまったので、日本食の調味料は自作。今までは環境負荷の少ない生活を心がけていましたが、オーガニック食料品店はこのような事態に対応できるサービスがあまりなく、食材を調達しづらくなってしまいました。

どうしてもおいしいピザが食べたいときは、「Lieferando」や「foodora」などのデリバリーサービスを利用しています。

それから、運動不足防止のため、毎朝8時半から友人たちとテレビ電話を繋ぎラジオ体操をするようになりました。家に運動できる十分なスペースがあるので、マットを敷き夫と筋トレとヨガをはじめ、これは日課になり3ヶ月続いています。

雑貨屋が開いていないので、生活に必要な道具はDIYで手作りするようになりました。ドイツのホームセンターは基本的に店舗が広く、道具や素材がとても充実しています。そんなドイツの雰囲気に感化され、簡単なものは自分でつくってみようという選択肢が生まれました。

ドイツの春の気候はさわやかで、古い家の大きな窓を開けると外とつながっている感覚になり、ずっと家の中で過ごしていても鬱々とはしなかったです。

結果として、気分良く過ごせているのは家と、スーパーや配送業など、私たちが普段通りの生活を送るために働いてくれている方々と気候風土とのおかげだと感じます。そして、私たちの暮らしは思っているよりも外の影響を受けていると、この期間に強く感じました。

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環境は暮らしに表れる

コロナウイルスの影響で私の暮らしが変化したように、環境は暮らしを表すと思います。

環境とは地形、気候、町、人、もっと小さいところでいうと家など。

暮らしは自分自身でつくっていくものだと思っていたけれど、暮らしは環境に”合わせて”変化するものなのかもしれないと思うようになりました。

これから自分が「どんな暮らしをしたいのか?」を考えるとき、自分が「どんな環境に身置きたいか」を考える必要があると感じました。

大変な状況であったけど、心を穏やかにしてくれた仮住まいの部屋に別れを告げ、また新しい部屋での生活がはじまります。

今度の部屋は人が泊まれそうなので、「大変な日々」が無事落ち着いて日本からの友人を招けるようになるといいなと思います。

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次回は、荻原さんから櫻井さんへ

朝子さんはコミュニティをつくられているかと思います。この大変な出来事で人との接し方に変化はありましたか?また、これから人と人との輪をつないでいくことについて考えをお伺いしたいです

*櫻井さんの回答は、7月20日(月)に公開予定です。
(企画・編集:安次富陽子)

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