『月極オトコトモダチ』穐山茉由監督インタビュー 最終回

人に頼るのが苦手な貴女へ 私は『信用貯金』を使いました【穐山茉由】

人に頼るのが苦手な貴女へ 私は『信用貯金』を使いました【穐山茉由】

本業の他にやってみたいこともあるけれど、転職をするほどでもないし今から新しいことを始めるのはちょっと気が重い——。副業解禁の流れとはいえ、日常の生活のことを考えると仕事の掛け持ちはどうしても踏みとどまってしまうもの。

そんな中、人気ブランドのPRとして働きながら、映画監督としても活動する穐山茉由(あきやま・まゆ)さんの働き方が今注目されています。

穐山さんは、「好きなことをやろう」と思い立ち、30歳の時に映画学校の夜間・土日コースに入学。そして36歳になる今年、脚本・監督を務めた『月極オトコトモダチ』が全国公開されました。どうしてそんなに頑張れるのか、ウートピでは3回に渡って、穐山さんの人生や仕事観について聞きました。

連載最終回は、会社員をしながら長編映画を撮ってみて気がついたという人を頼ることの大切さについて。

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作りたいものじゃなくて、多くの人に届く作品を

——「映画を撮ろう」と思った時、映画監督としてのキャリアや目標について、どこまで考えていましたか? 

穐山:あくまでベースになっているのは、面白い映画を作りたい気持ちです。そこはなによりも一番大きいですね。でも、本格的に映画制作を始めたのが30代になってからだったので、もたもたしていられないなと思っていました。若手もいっぱいいるし、すぐに形にしなきゃと、動きだしました。映画学校に通って、2年目のときに監督作品で賞をいただけたのは大きかったですね。

——未経験からいきなり賞を獲れたのは、才能があったのでは。

穐山:最初に映画学校にいたときは、まずはそのコミュニティの中で評価してもらおうと思ったんです。でも、映画祭でいろんな人に作品を観ていただくうえで「もっと広いところで届けられるものを作りたい」と思うようになりました。

——『月極オトコトモダチ』を広く届けるために、どんなことを意識して作ったのでしょうか?

穐山:まず、身近な人たちに楽しんでもらうことを思い浮かべてつくりました。どんなにターゲットが狭くても、しっかりと刺さるものをつくれば、じわじわと広がるんじゃないかなと思ったんです。

レンタルフレンドを題材にしたのは、「SNSで友達がたくさんいるように見せるために友達を雇う人がいる」という記事を読んで、驚いたのがきっかけでした。私自身、友達を作るのが苦手なので、友達を求める気持ち、友達に求めるものって何だろうと。”知り合い”から”友達”になる過程にドラマがある気がしたし、それって普遍的なものなのではないかと。

映画はエンターテイメントなので、観てもらってなんぼ。そのバランス感覚は大事にしています。

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限られた予算と時間でベストを尽くした

——既に女優として人気の徳永えりさんをはじめ、出演陣やスタッフはどうやって集めたのでしょうか?

穐山:幸運なことに、『月極オトコトモダチ』を作るきっかけとなった音楽×映画の祭典「MOOSIC LAB」は、若手の登竜門として業界内では知られた存在だったんです。主演の徳永えりさんの事務所も「自主制作映画でも、おもしろい企画なら」というスタンスだったので、プロットを持ち込んでプレゼンしたら、出演をご快諾いただけました。

——人気の女優さんに熱意と作品が伝わったんですね。

穐山:予算もないのに、本当にありがたかったですね。私も本業があるし、スタッフも役者さんも稼働できる時間が限られています。シナリオをつくった後、それぞれのシーンごとに、役者さんのスケジュールをパズルのように組み合わせました。ここは、プロジェクト単位で動いている会社員としての仕事にも通じる部分ですね。

——撮影状況は天候にも左右されるし、大変ですよね。

穐山:雨も想定して、撮影が前後しても大丈夫な日を設けました。私一人では全部できないので、全体の指揮はするけど、スケジュール管理は助監督に頼ることにして。

映画が教えてくれた、人を頼ることの大切さ

——同世代の女性たちの声を聞くと、頼るのが苦手という人も多いですが、穐山さんはもともと頼るのが得意なほうでしたか?

穐山:いえいえ。私も人を頼るのは苦手でした。でも、割と図々しいのか、ダメ元精神みたいなのがあります(笑)。最初は「図々しいと思われるかな?」とかモヤモヤ考えちゃってたんです。でも、映画作品のためだから勇気を出してお願いすると、意外とみんな「いいよ」って引き受けてくれることがわかって。変に萎縮するより、自分の作品のハードルを保つほうが大事だと思ったんです。

——ゴールが明確だから、人を頼れるようになったんですね。

穐山:はい。まずは目標を高く持って、「わからないなら、この人に聞いてみよう」とか、周囲に声をかけるようになりましたね。キャスティングもそうだし、撮影も編集もそう。映画はひとりでは撮れませんから。

『月極オトコトモダチ』のワンシーン

『月極オトコトモダチ』のワンシーン

「勘違いしないように」常に自分を客観視

——今は作品だけでなく、会社員をやりながら映画監督をしている、穐山さんの生き方自体にも注目されていますよね。

穐山:そうですね。働き方改革が叫ばれたタイミングでもあって、映画をきっかけに、私の働き方に興味を持ってくれる方も増えました。私はただ、映画を撮るために進んできたけれど、本業であるPRのお仕事にも繋がっています。

——担当されているブランドの明るいイメージと、穐山さんの働き方がリンクしているようにも見えます。

穐山:「私の働き方って、外からみるとそう見えるんだ」と驚きましたね。意識的にやっていなかったからこそ、うれしいです。映画を観た方からも「勇気をもらいました」と言っていただけて。自分が真面目にやってきたことで、人の背中を押すことができるんだなあと思います。でも、今こそ自分を戒めなきゃいけないなという点もあります。

——どんなことですか?

穐山:映画監督って、一般的になにか特別なイメージがあるし、その肩書きを持つことで偉くなった気になってしまう可能性もあるんじゃないかと思いました。実際に役者や業界の方から声をかけてもらう機会も増えますし。とてもありがたい反面、そんな状況をわりと引いた目線で見ていたりもします。

——常に客観視しているんですね。

穐山:監督が偉いわけではないですし、役職や肩書きは関係ありません。作品を作りたいということがシンプルな目的なので。目線が変にならないように。

振り返れば、応援してくれる人がいた

——映画制作の世界に踏み出して見て、よかったなと改めて感じることは?

穐山:好奇心がわいたら、やらずにはいられなくなっちゃうタイプなんです。何か熱中できることにまっすぐ取り組むことで、新しい道が開けたり、他の人と一緒に道を作れたり、これまでとまったく違う行動することができるなと感じます。

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一歩踏み出すときって、勇気がいるし、怖いです。でも、進んでから後ろをふと振り返ってみると、理解・応援してくれる人がたくさんいます。それは本当にありがたいことですよね。人生一度きりなので、ためらうだけじゃなくて、やりたいことや欲に対して、まっすぐに向き合うことが大事だなと思います。

【第1回】私が婚約破棄を決めた理由
【第2回】会社員と映画監督の両立は大変じゃないですか?

(取材・文:小沢あや、撮影:大澤妹、編集:安次富陽子)

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『月極オトコトモダチ』
出演:徳永えり 橋本淳
監督・脚本:穐山茉由
製作:「月極オトコトモダチ」製作委員会
配給:SPOTTED PRODUCTIONS|
(c)2019「月極オトコトモダチ」製作委員会

新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺、イオンシネマ板橋ほかにて全国順次公開中!

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