スペインは女子旅で人気の目的地。でも、ただガイドブックに載っている観光地を巡るだけの旅は卒業したいですよね。そんな旅の上級者におすすめなスペインの街を、カメラとひとり旅をこよなく愛する編集者兼ライターの宇佐美里圭(うさみ・りか)さんが旅します。
まだ日本人には知られていない古代ローマ時代の街
数年前の12月、友人を訪ねてスペインのトゥデラ(Tudela)という街に行きました。バルセロナからAVE(スペイン高速列車)に乗って2時間半ほど。牛追い祭りで有名なパンプローナの南、ちょうどマドリッドとバルセロナの中間あたりにあります。
人口3万5000人ほどの小さな街ですが、古代ローマ時代から人が住んでいて、長い歴史のあるところ。イベリア半島で2番目に長い河、エブロ河がもたらす肥沃な土壌のおかげでスペイン国内ではおいしい野菜の産地として有名です。
小さい路地が入り組むこじんまりした旧市街は、大都市にはないローカルな魅力があります。観光客にもほとんどすれ違わない街を一人で歩いていると、スペインの“ふつうの暮らし”の中に入り込んだような、それと同時に自分の日常からはるか遠くにいるような、ちょっぴりセンチメンタルな気分になります。こういう寂しさは、ときには悪くありません。
ある日、ここに住む友達が、「おもしろい場所があるの!」と車でトゥデラの街の外へ連れ出してくれました。住宅街を出ると、みるみる景色が変わり、やがて辺り一面まるで砂漠のような乾燥地帯に。30分前まで街の真ん中にいたのに、いきなり砂漠!?
ここが知る人ぞ知るスペインの絶景エリア、 “バルデナス・レアレス(Bardenas Reales)”でした。面積4万1845ヘクタール。砂岩や粘土が数千年にわたる水や風の侵食を受け、不思議な造形美を造っています。
1999年公開の映画「007 ワールド・イズ・ノット・イナフ」など、数々の映画の舞台にもなっているそう。たしかに、このあまりにも雄大な景色は映画が似合います。しかし中には、映画にはちょっと……という光景も……。“Castildeterra”(カスティルデテーラ)と呼ばれる、自然にできた孤立丘です。なんともいえない造形です。
日本ではまだあまり知られていない場所ですが、インパクトは大。スペイン北部へ行くチャンスがあれば、知られざる絶景を見に立ち寄ってみては。