ワインやビールはひと通り楽しんだから、そろそろ新しいものに出会いたい。そんなお酒好きの願いを叶えてくれる“新しい日本酒”が今、話題を集めています。
和食だけでなく、洋食とも相性抜群。さらにはフルーツやスイーツ、チーズと一緒にも楽しむことができるそう。一部では「サードウェーブ日本酒」とも呼ばれています。All Aboutにて日本酒・ワイン・焼酎ガイドをつとめる友田晶子(ともだ・あきこ)さんに、その魅力を伺いました。
ワインのような飲みやすさが魅力
——「サードウェーブ日本酒」には、どのような特徴があるのでしょうか?
友田晶子さん(以下、友田):米由来のコクや旨味を持ちながら、ワインのようにフルーティな甘みと酸味があります。これまでの日本酒と比べアルコール度数が低めなので、お酒が強くない方や女性にもおすすめ。次の日に匂いが残る心配もないんですよ。
——どんなお料理と一緒にいただくのがいいでしょうか?
友田:和洋どちらとも合いますが、繊細な風味を楽しむために、軽やかな味のお料理と合わせていただくといいと思います。和食なら、白身魚のお刺身やささみの焼き鳥。すだちやわさびをつけていただくような、さっぱりしたものが合います。
それから、フルーツやスイーツ、チーズとも相性がいいです。フルーツタルトはもちろん、いちごのショートケーキとも合いますし、チーズならシェーブルやモッツァレラなどのフレッシュなものと合わせるのがおすすめです。
――なるほど。
友田:お酒と料理の組み合わせのよさにも種類があり、ひとつは、味の濃さや風味が似ているもの同士を合わせる「ハーモニー(同調)」。もうひとつは、お料理と一緒に口に入れた時に生まれる新たな味わいを楽しむ「マリアージュ」です。どちらかに当てはまる味の組み合わせを考えて、召し上がっていただければと思います。
――ワインのような楽しみ方ができるんですね。
友田:そうですね。実際に「サードウェーブ日本酒」はワイングラスでサーブされることが多いですし、私はフレンチやイタリアンのフルコース、パスタと一緒にいただくこともあります。
飲む時はワインと同様に、まずはその芳醇な香りを楽しんでみてください。その次は色あい。日本酒は無色透明だと思われていますが、実際は黄味がかかったものや青味がかったものなどがあるので、色あいも見ていただきたいです。唇にグラスが当たる感触も、お猪口と比べてなめらかなのがいいですね。
製造法から新しい「第三の波」
——ところで、「サードウェーブ日本酒」ということは、これまで第一、第二の波もあったのですか?
友田:はい。第一の波は1970〜90年代、いわゆるおじさんが飲むお酒で、酔うことを目的としたお手ごろ価格で大量生産のものですね。そこから、吟醸酒や大吟醸酒などのフルーティなお酒が出始めるまでを指します。次に第二の波が訪れて、ただフルーティなだけでなく、「米の酒」らしい濃醇な旨味を持つお酒が登場しました。
その後、地元のお米を使ったり、「精米歩合」という従来の方法にとらわれない新しい酒造りに挑戦したりする杜氏が現れました。こうして誕生したのが、洗練された味わいの「第三の波」の日本酒です。
おすすめの「サードウェーブ日本酒」
――造り方からすでに違うのですね。ぜひ飲んでみたいので、おすすめのものを教えてください。
友田:代表銘柄をご紹介します。どれも「サードウェーブ日本酒」の特徴であるフルーティさは抜群ですよ。
●新政酒造「NO.6 R-type」「生成-Ecru-」
「NO.6 R-type」は希少価値が高い生酛造りの生酒で、エレガントな旨味が特徴。「生成-Ecru-」は秋田生まれの酒米を使用しており、澄んだ味わいが楽しめます。
●仙禽「クラシック仙禽 山田錦」「モダン仙禽 山田錦」
どちらも口に含んだ瞬間に果実味が広がり、味は濃いめ。「クラシック仙禽 山田錦」は後味すっきり、「モダン仙禽 山田錦」は甘酸っぱい余韻が残ります。
●澤屋まつもと「澤屋まつもと 守破離 純米酒」「澤屋まつもと kocon」
甘めなお酒なので、女性におすすめです。「守破離 純米酒」は柑橘系の爽やかな香りが特徴。「kocon」は軽い口当たりが楽しめます。
日本酒は、気軽に自由に楽しめるもの
――「日本酒」というと敷居が高いイメージがあったのですが、そんなことはないのですね。
友田:日本酒はとても自由に楽しめるものです。ワインは、生の甲殻類や魚卵と合わせると生臭さを助長してしまう場合もありますが、日本酒には組み合わせがNGなものがありません。それから、日本酒の原料である麹には、美肌・保湿効果があります。他のお酒に比べてカラダを冷やしにくいというメリットもあるので、女性には特にいいと思います。
入口は広く、奥が深いのが日本酒の魅力。「サードウェーブ日本酒」を取り扱っているお店も増えてきているので、見かけたらぜひ気軽に味わってみてください。
(竹川春菜)