居酒屋のメニューにある日本酒の名前が読めない! どれを注文していいかわからない! そんな日本酒初級者のみなさんのために、これだけ覚えておけば大丈夫という超メジャー日本酒を5つご紹介します。解説してくれるのは、友田晶子(ともだ・あきこ)さんです。
1:獺祭(だっさい/山口県/旭酒造)
日本酒をあまり飲んだことがないという人でもこの名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。読み方は「だっさい」。山口県の山奥のお蔵元様で一時は倒産の危機に直面していましたが、現社長のアイディアと逆境経営の力で見事再生。味わいはもとよりその経営手腕も話題です。
極限まで磨いた山田錦を使った純米大吟醸はクリアでフルーティーで日本酒が苦手な人でも楽しめる味わい。それがまた比較的お手頃価格で購入できることで人気に火がつきました。今では欧米やアジアでも大人気。世界の日本酒人気をけん引しています。
十四代(じゅうよんだい/山形県/高木酒造)
淡麗辛口の酒がブームの90年代、まだまだ日本酒が低迷していた時代。米の酒らしい濃醇さと洗練度を身に着けた酒として一躍人気に。都内の百貨店でマーケティングを経験した現15代目が蔵に戻り、酒造り専門の杜氏を置かず蔵元みずからが酒造りを行う当時としては新しい経営スタイルが注目されました。
15代目が壮絶な思いで生み出した渾身の酒は業界内で認められ、そのストーリーとともに一気にスターの座に躍り出ました。国内では希少価値の高い、いわば手に入らない幻の酒として知られ、海外でも超プレミアム価格で取引されています。
白鶴(はくつる/兵庫/白鶴酒造)
現在日本酒メーカーは全国に1300社ほどあります。現在生産量トップの座に位置するのが白鶴酒造。名酒の里「灘」のメーカーです。創業は寛保三年(1743年)。江戸は徳川吉宗将軍の時代です。灘には、同じような歴史と規模を持つ名酒蔵がたくさんありますが、今はこの白鶴がとにかく1位。大手メーカーの代表として、まずは覚えておいてもいいでしょう。
大手だけあって、その銘柄は実にバラエティに富んでいます。パック酒の「まる」から、厳選山田錦の特別純米酒、フルーティーなスパークリングや、ご贈答品の大吟醸までとりどりみどりであるところも魅力です。
久保田(くぼた/新潟/朝日酒造)
日本酒は甘くて濃くて、匂いも強くて、飲みにくいと思われていた60年代。スッキリ軽快でクセがなく洗練されたみずみずしい味わいで、それまでの日本酒のイメージをガラリと革命的に変えたのがこの久保田です。
「精米歩合の低いもの=手間暇かかったもの」から順に「萬寿」「碧寿」「紅寿」「千寿」「百寿」(「翠寿」など季節限定品も)とランク付けされた名前も人気を後押ししました。いわば幻の酒の走りともいえるブランドです。以後、ブランド価値の高い銘柄が各社続々登場する中でも頑なに久保田信仰を貫く日本酒マニアも存在します。海外進出も比較的早く、安定した輸出量を誇っています。
新政(あらまさ/秋田/新政酒造)
日本酒女子に大人気のブランド。ここ数年のメディアでの取り上げられ方はもう尋常ではありません。日本酒特集以外にも、ファッション誌や女性誌でも取り上げられていますから、ご覧になったことがあるかもしれませんね。
60年代から80年代の吟醸ブーム、90年代大吟醸ブーム、2000年の濃醇ブーム、2010年の酸度の高い酒ブームの後に登場した、いわゆるサードウェーブ日本酒のリーダー的存在の蔵元。といってもその歴史は嘉永五年(1852)創業に始まり、現在再注目されている6号酵母の発祥蔵という日本酒製造の歴史に欠かせない名門蔵なのです。
なぜ女子に人気なのかといえば、柔らかくてしなやかでクセがない、でもそこはかとない旨味と米由来の品のある甘味、ほんのりと炭酸が感じられる新鮮でジューシーさを持つその味わいのため。まさにワイングラスでおいしい日本酒でもあります。その味わいを生み出したのは、8代目当主。東大卒業で、編集フリーライター経験という業界では異色の人材。今までの日本酒にはないまったく新しいコンセプトで生み出されるサードウェーブ日本酒“新政”は最新のメジャー銘柄としてぜひ覚えておいてください。
さて、いかがですか? 聞いたことがあるという名前もあったかと思います。もしかしたら飲んだことがある銘柄もあったでしょう。この5選の他にももちろん超メジャー級はまだまだあります。でも、まずはこの5つから。次に居酒屋に行く時、日本酒がちょっと身近に感じるかも。