「どこにしまったっけ?」を解消 見せる防災グッズを開発!
簡易トイレを収納しながら壁に飾るアートとしても楽しめる「sonae 備絵」(発売元:ドリームホールディングス)新商品発表会が9月8日に東京都内で開催されました。
「絶対に必要だけど普段はどこかにしまっておきたい」「押し入れの奥にしまい込んでしまっていざというときにどこにあるかわからない」という状態になりがちだった防災グッズを、日常の風景に溶け込ませて見せる(=見つけやすい)存在にした画期的な商品で話題になりそうです。
発表会にはプロジェクトリーダーの藤村彩央里さん(30)とアシスタントディレクターの石井琴子さん(24)が登壇し、防災グッズとアートを掛け合わせた経緯や自身の被災体験について語りました。

石井琴子さん(左)と藤村彩央里さん
「sonae 備絵」は、アートフレームの中に災害時トイレキット30回分をスリムに収納した商品で、普段は壁に飾るアートとして楽しみながら、災害時や断水時には取り出して使えます。トイレキット30回分は、1人暮らしで約6日分、2人暮らしで約3日分の量にあたります。
2016年に起こった熊本地震で被災したという藤村さんは、「用を足すために公衆トイレに行ったら排泄物が山積みになっていた。臭いもひどく、生きていく気力を失うほどだった。普段当たり前に過ごしている環境が当たり前じゃないことに気づいた」と商品企画のきっかけとなった避難生活を振り返りました。
また、2017年の九州北部豪雨で被災した石井さんは、防災グッズとアートを組み合わせた理由について「自宅の1階が土木流で埋まって避難生活を送っていたときに、ある地域からメッセージ付きの手形アートを贈られてすごく心強かった」と明かし、藤村さんも「災害時の不安な状況の時に、身近に好きなアートや絵があるだけで癒やされるし、心の支えになる」と力を込めました。
「まずは知ってほしい」災害時のトイレ問題にスポット
今回、発売されるアートは今年で関東大震災発生から100年の節目を迎えることから「Reborn」と題し、“災害からの復興の希望”をテーマにした国内アーティスト3人による書き下ろし作品が登場。他にも国内のデザイナーやアーティストによる「Standard」やゴッホやモネなど有名な画家の「Masterpiece」シリーズを取りそろえ、今後もシーズナルにテーマを設定して販売していく予定です。
藤村さんは「まずは災害時のトイレ問題について知ってほしい。アートを部屋に飾ることで、家に遊びに来た人との会話のきっかけにもなるし、自然に災害時のリスクマネジメントについての話が広がれば」と期待を込めました。
在宅避難でも重要な「トイレ環境の確保」
発表会には、熱中症・脱水症・栄養を意識した健康管理の専門家としても知られる谷口英喜医師(済生会横浜市東部病院患者支援センター長 周術期支援センター長/栄養部部長) も登壇。「災害時の二次健康被害の最上流にあるのが、水が使えないことによってトイレが使えなくなったり、手洗いやうがいができなくなること。排泄環境の整備をすることで、適切な水分補給につながり、二次健康被害を予防することができる」と訴えました。
また、藤村さんや石井さんとのトークセッションに参加した「一般社団法人 地域防災支援協会」代表理事を務める三平洵さんは「発災9時間以内にトイレに行きたくなった人は78%」「3日以内に仮設トイレが行き渡った自治体は34%」などデータを交えながら、トイレの重要性についてトークを繰り広げました。
「仮設トイレは設置まで時間がかかる。災害時は切れ目のないトイレ環境の確保が重要で、まずは携帯トイレや簡易トイレが必要になる。また、最近は在宅避難のケースが増えており、水が流れない状況でどうするか、個人としての準備が必要になってくる。今回の取り組みのほかにも、回転備蓄など日常生活に防災が入っていく仕組みをいかに作るかが大切」と繰り返し強調しました。
プレゼントにもピッタリ
「sonae 備絵」はフレーム外寸が縦33センチ、横33センチ、厚さ5.8センチ、アート部分が縦29.4センチ、横29.4センチ。フレームカラーはナチュラル、ブラック、ホワイトから選べる仕様で価格は3万円(税別)から。9月8日に公式ECサイトがオープン。
三平さんは「防災グッズは必要だけれど、人への贈り物としてはハードルが高いかもしれない。でも、アートだったらプレゼントにもピッタリ」とアピール。藤村さんと石井さんは「第一弾はトイレだったが、他の防災グッズにも広げていきたい。今後は軽量サイズや持ち運びが楽にできるものなどバリエーションを増やしていきたい」と今後の展望を語りました。
(取材:ウートピ編集部・堀池沙知子)