映画『オレンジ・ランプ』貫地谷しほりさんインタビュー後編

「大変なときこそ、自分に嘘をつかないで」貫地谷しほり、認知症の夫を支える妻を演じて

「大変なときこそ、自分に嘘をつかないで」貫地谷しほり、認知症の夫を支える妻を演じて

2023年6月30日に公開予定の映画『オレンジ・ランプ』は、39歳で若年性認知症を診断された夫とその妻が、病気と向き合いながらも希望を持って歩んでいく物語です。高齢者の5人に1人が認知症になるといわれているいま、誰にとっても決して遠い話題ではありません。

今作で苦悩する夫にいつも明るく寄り添う妻を演じた、貫地谷しほりさん。実際の家族との関係性や、日ごろ健康を保つために気をつけていることを伺いました。

自分のことも後回しにしないで

——大切な人が病気になってしまったとき、自分がどのように振る舞うかはとても難しい問題です。貫地谷さんが演じた妻・真央の寄り添い方は、認知症になった夫にとって、大きな支えだったと思います。

貫地谷しほりさん(以下、貫地谷):真央は本当にすごいですよね。相手が認知症だとわかっていても、休みの日に会社があると思い込んで出社すると言い張られたら、私だったら「今日は会社はお休みなの!」と苛立ちをぶつけてしまうかもしれません。でも、真央はそうはしない。

夫の病気を受け止めつつ、それでも自分でできることは自分でやってもらおうとする姿勢も、本当に強いなと感じました。ふつうは心配だから何でもやってあげたくなってしまうと思うんです。それが、相手のできることを取り上げて、病気が進むスピードを早めてしまうかもしれなかったとしても……。自分の不安よりも相手を尊重できるのは、本当にかっこいいと感じました。

劇中より

——大変なときも明るさを失わずにいる真央の姿も、とても印象的でした。

貫地谷:明るくいられるって「強さ」ですよね。でも私は、大変なときにいつも明るくいる必要はないのかなと思っています。物語の後半には真央も涙するシーンがありましたが、そういう自分のあふれ出てしまう気持ちに耳を傾けることも大切な気がしていて。だけど病気の家族のように、自分よりも大変な状況にいる人の前だと、自分のことはつい後回しになってしまいますよね……。

——周りの大変さを思うと弱音を吐けない……あるあるですね。

貫地谷:誰かが泣いていると泣けない、みたいなことってありますよね。とくに私は家族の前だと格好つけたくなってしまうタイプなので、なかなか弱音が吐けないんです。家族にとって「頼もしい一員でありたい」という想いが強いのかもしれません。

ただ唯一、夫に対しては心のうちが漏れ出ていると思います。悩んでいるときに話を聞いてもらうと、それだけですっきりしたりもするし。自分に嘘をつかないっていうのは、心すこやかに生きる秘訣だと思います。嘘をつくのって体力を使うし、つじつま合わせも面倒くさいじゃないですか。だから、大変なときは我慢せず、信頼できる人に打ち明けられたらいいと思います。

——貫地谷さんは、パートナーと素敵な関係が築けているんですね。それも、心をすこやかに保つ要素のひとつである気がします。

貫地谷:とはいっても、ケンカだってします(笑)。でも、いまのところしているケンカは、問題を解決するためにしているケンカだから、してよかったなと思うものばかりです。夫も私にさまざまな注意をしてくれるから——距離が近すぎてその意見をすぐに受け入れられないことも多いんですけど——こうやって言ってくれる人はありがたいなと実感しています。いざというときに話を聞いて、支えてくれる夫や友達の存在はとても大きいです。

劇中より

心身を整えて、すこやかに

——貫地谷さんが、体もすこやかであるために心がけていることはありますか?

貫地谷:まず、定期的な健康チェックは欠かせません。人間ドックは毎年受けています。それから、ホルモンバランスを整えること。食事や生活が乱れてホルモンのバランスが崩れると、肌や体調にはっきり影響があらわれるようになってきたんです。30代後半になったいま、美しさとは健康であることと結びついているんだなとつくづく感じます。

——ホルモンバランスを整えるために、どんなことをされているんですか?

貫地谷:食事や運動にはできるだけ気を遣っています。たとえば、ダイエットなどで脂質を避けすぎてもよくないと聞いたので、良質な油はちゃんと摂るようにしています。オメガ3やオメガ6などのよい油を増やして、全体のバランスを取ったりとか。いままで大っ嫌いで避け続けてきた運動も、去年あたりから週2回のパーソナルトレーニングに通っています。

——嫌いな運動をはじめたのは、なにか心境の変化があったのですか?

貫地谷:年齢的に、そろそろやらないとまずいかな……と(笑)。年を重ねるにつれ脱水症状になりやすくなるのって、筋肉が減るからなんですって。筋肉には水分を蓄える機能があるから、筋肉量が少ないと、身体の水分量が減っちゃうんです。

たまたま通いやすい場所にスタジオを見つけたこともあって、なんとか続いています。そうしたら巻き肩が治ったし、ハードな舞台のときにも、怪我や不調を感じることなく完走できました。これは完全にトレーニングのおかげだと思っています。これからもできる範囲で、そうした習慣を続けていきたいです。

(ヘアメイク:ICHIKI KITA(Permanent))
(着用衣装:ジャケット、ベスト/suzuki takayuki ・パンツ/MEYAME(ソークロニクル)・ピアス/AMOR)
(取材・文:菅原さくら、撮影:友野雄、編集:安次富陽子)

■作品情報

『オレンジ・ランプ』
主演:貫地谷しほり 和田正人
出演:伊嵜充則 山田雅人 赤間麻里子 赤井英和 / 中尾ミエ
監督:三原光尋
配給:ギャガ  公式HP:www.orange-lamp.com/
©2022「オレンジ・ランプ」製作委員会
6月30日(金)新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMA他全国ロードショー

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