「生命科学アカデミー」筑波大学柳沢正史先生に聞く 第11回

幸せな夢を見ることは少ない? 睡眠のエキスパートに聞く

幸せな夢を見ることは少ない? 睡眠のエキスパートに聞く

人生100年時代と言われる現代ですが、長生きをしても「健康」でなければ自分の満足のいく人生を送れないかもしれません。健康を維持しながら長生きができれば、より自分らしい人生プランを考えることができるのではないでしょうか。

健康に生きるためにいま注目されていることのひとつが「睡眠」です。睡眠時間の長さだけではなく、「睡眠の質」について気にしている人も増えています。スマートウォッチのようなウェアラブルデバイスで睡眠の状態をチェックしたり、運動やストレッチ、サプリメントや飲料などで睡眠の質を向上させたりしている人もいます。

「健康長寿」を目指し、最先端の研究を学ぶYoutube番組「生命科学アカデミー」では、今回、ゲストに筑波大学の柳沢正史先生をお迎えしました。同プログラムのHIROCO学長が聞き手となり、「睡眠」の奥深さについて迫ります。

柳沢先生(左)とHIROCO学長(右)

夢はなぜ見る?

──先生、「夢」についても質問があります。みなさん見ているものだと思うのですが、夢とは一体どういうことなんでしょうか。

柳沢:夢って、実はサイエンスの対象としてはすごく難しいんですよ。なぜかというと、夢というのは本質的に主観的な体験なので、動物実験ができない。犬や猫や、マウスに「どんな夢を見た?」と聞いても答えてくれませんよね。ヒトに近い、サルだとしても会話はできません。

ヒトを対象とした研究はヒトでしかできないんです。ヒトを実験対象にするにはさまざまな制約があるのですけれども。ただ、夢の研究をしている人は結構たくさんいて、近年、すごく進んできています。

面白い研究をひとつ紹介すると、夢の大半はネガティブな内容が多いそうです。怖かったり遅刻したり、なにか忘れてきたりとか——私の場合はそういうのが多いんですけど(笑)。

ネガティブな、焦るような、ないしは怖いような、そういうのが多いんですよね。すごく幸せな夢もたまには見るかもしれないけど、割と少ないそうです。これは、心理学の一部の方に言わせると、ネガティブな夢っていうのは、実は日中に起きているときに出会うであろうストレスフルなシチュエーションの予行演習をしているんだと。

──起きるかもしれないことを、自分で想像して?

柳沢:想像してというか、寝ている間に予行演習。ストレスの練習をしているのだというのです。夢を見ることによって、ストレス耐性が上がっているという説もあるんですよ。例えば、実際にPTSD(Post Traumatic Stress Syndrome、心的外傷後ストレス障害)の症状がある人で、夢見の多い人のほうが回復は早いという結果が発表された論文があります。だから、悪夢も含め、ネガティブな夢を見たということは、必ずしも悪いことではないかもしれません。

◆まとめ
・夢を見ることでストレス耐性が上がっているという説がある。悪い夢を見ることは必ずしも悪いことではない

(第12回/最終回へ続く)

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