『七人の秘書 THE MOVIE』中園ミホインタビュー・後編

これからも“名乗るほどではない者”たちの清々しさを描いていきたい【中園ミホ】

これからも“名乗るほどではない者”たちの清々しさを描いていきたい【中園ミホ】

「名乗るほどの者ではございません」

女優の木村文乃さんら名だたる女優たちが名もなき“秘書”を演じ、影でひっそりと要人を操り、理不尽だらけの日本社会を変えていく痛快なストーリーで話題になったテレビドラマ『七人の秘書』(テレビ朝日系)の映画版『七人の秘書 THE MOVIE』(田村直己監督)が10月7日に公開されます。

ドラマに引き続き、脚本を手掛けるのは、『ドクターX~外科医・大門美知子~』や『ハケンの品格』などのヒット作を生み出してきた脚本家の中園ミホ(なかぞの・みほ)さん。そこで今回は、さまざまな作品を通して強く生きる女性たちを描いてきた中園さんに、映画化への思いや今後書きたい作品などについて、お話を伺いました。

これからも“名もなき人”たちを書いていきたい

——コロナ禍になって、お仕事の変化などはありましたか?

中園ミホさん(以下、中園):私たちの脚本家という職業は、基本的に家で一人でできるので、仕事をする上では、まったく支障はなかったです。むしろ、外に遊びに行かなくなったので、仕事がやりやすい環境にはなりました。でもやっぱり、周りのスタッフさんたちは、本当に大変なプレッシャーで毎日頑張ってて、朝、PCR検査をして、「発熱してる人はいないか?」とか、そういう緊張感の中で作っているんです。もちろん、テレビの現場だけじゃなく、どこの職場でも同じようなことが起きていると思うから、「スカッとしてほしいな」という思いで映画の脚本を書いていました。

——今後は、どのような作品を書いていきたいと思っていますか?

中園:欧米は、もうコロナは終わった感じで、一気に活気づいていますね。日本も早くそうなってほしいです。「ドラマや映画は、見た人の空気を変えられる」と思っているので、そういう意味でも、スカッとして、気持ちがよくて、開放感のある作品を作っていきたいなと考えています。でも、私は、“スーパーマン”とか“スーパーウーマン”のような人たちには、あんまり興味がないので……(笑)。だから、これからも、いくと思います。

それと、私は、『ハケンの品格』のときから、フリーランスの人を書くことが好きなんです。『ハケンの品格』が放送されたころ(2007年)に比べて非正規雇用者の方が増えている。彼女たちの不安や不満は、同じフリーランスとしてすごく分かるつもりでいるし、これまで取材もたくさんしてきました。だから、今後も変わらず、そんな人たちの思いを描くドラマや映画を作っていくと思います。ラブストーリーを書いていても、時代劇を書いていても、先の見えない毎日を送っている人たちに元気になっていただきたいという思いがあります。

“名乗るほどの者ではない人”の爽やかさ

——ドラマ放送時は「名乗るほどの者ではございません」という決めセリフも話題になりました。このセリフに込めた気持ちを教えてください。

中園:私は、権力を持っている人や名前がある人たちをちゃかすことが、もともと好きなんですけれど、『七人の秘書』を書いていて、キャラクターがだんだん育っていくと、“名もなき人”たちの爽やかさ、すがすがしさを感じるようになりました。やっぱり大変じゃないですか。名前が知られている俳優さんや有名人に、みんな憧れているかもしれないけど、実は息苦しさを抱えていたりする。でも、“名もなき人”たちって、言いたいことをちゃんと言えて自然体でいられるというか。自由さとか爽やかさとか、いいことがたくさんあるんだなと感じたんですよね。

——ほかに脚本を書いていく中で、考え方の変化などはありましたか?

中園:変化というか、書いているうちにどんどん楽しくなってきました。不思議なのですが、ドラマを書いていると、見ている方たちの波を感じるときがあるんです。第1話は、「こんな感じかな?」と手探りで書いているんですけれど、放送が始まると、見ている方の笑っている顔とかが見えるようになってくる。そうすると、私もノッてくるので、きっとテレビの向こうからエネルギーをもらっているんだと思います。そういう仕事は、本当に幸せだと思います。

だから、全話まとめて書いて放送スタートという流れだと、いつもちょっと詰まっちゃう……(笑)。私は、見ている方のエネルギーをいただいて書いている意識がすごくあるのですが、特に『七人の秘書』のときは、それがとても大きかったですね。それと、若い人もおばちゃんもお年寄りも、私の周りの女性たちが、『七人の秘書』のことを「好きだ」と言ってくれたのも、すごくうれしかったですし、もっと楽しませたいと思いました。

中園ミホの仕事ルール

——中園さんの仕事ルールはありますか? 例えば嫌なことや仕事でうまくいかなかったときにやっているルーティンや決めていることなどがあれば教えてください。

中園:嫌なことがあってつらいときは、泳ぎます。特に、視聴率が悪かったときは、めちゃくちゃ泳ぎます(笑)。俳優さんやプロデューサーはもっとそうだと思いますが、脚本家にとっても、視聴率って重圧が大きいんですよ。私はギャンブラーなので、視聴率を楽しみにしているところがあるのですが、そうはうまくいかないこともあるので……。

そういうときは、一日中数字のことを考えちゃうんです。頭のどこかにずっとこびりついている感じになるので、プールに泳ぎに行くと、それがスッキリ真っ白になります。スイミングの仲間には、「中園さんがめちゃくちゃはりきってバタフライを泳いでいるから、ドラマの視聴率が良くなかったのかしら?」なんて言われてしまうんですけど(笑)。ほかにも、視聴率だけじゃなく、脚本を書いていて詰まっちゃったりしたときも、泳ぐと打開することができたり……。私にとっては、水泳とお酒ですね。

■映画情報

『七人の秘書 THE MOVIE』

公開日:2022年10月7日(金)
監督:田村直己
脚本:中園ミホ
音楽:沢田 完
主題歌:「Final Call」milet Sony Music Labels

出演:木村文乃、広瀬アリス、菜々緒、シム・ウンギョン、大島優子、岸部一徳、室井滋、江口洋介、玉木宏、濱田岳、吉瀬美智子、笑福亭鶴瓶
配給:東宝
(C)2022「七人の秘書 THE MOVIE」製作委員会

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子)

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