「名乗るほどの者ではございません」
女優の木村文乃さんら名だたる女優たちが名もなき“秘書”を演じ、影でひっそりと要人を操り、理不尽だらけの日本社会を変えていく痛快なストーリーで話題になったテレビドラマ『七人の秘書』(テレビ朝日系)の映画版『七人の秘書 THE MOVIE』(田村直己監督)が10月7日に公開されます。
ドラマに引き続き、脚本を手掛けるのは、『ドクターX~外科医・大門美知子~』や『ハケンの品格』などのヒット作を生み出してきた脚本家の中園ミホ(なかぞの・みほ)さん。そこで今回は、さまざまな作品を通して強く生きる女性たちを描いてきた中園さんに、映画化への思いや今後書きたい作品などについて、お話を伺いました。

脚本家の中園ミホさん
ネタ元は? 秘書の話を書いたきっかけ
<STORY>
熾烈(しれつ)な戦いの末に政界のドンを辞任に追いやった秘書たちは、今日もラーメン萬で平和な日々をかみしめていた。そんな彼女たちのもとに新たな依頼が舞い込む。今度のターゲットは信州一帯を支配する「九十九(つくも)ファミリー」。表の顔は地元の名家だが、裏の顔は国家とつながり私腹を肥やすためには手段を厭わない極悪一家だった……。
——ドラマ版は2020年に放送され、その痛快なストーリーが話題になりました。まずは、映画化が決まったときの気持ちを教えてください。
中園ミホさん(以下、中園):まさか、映画になるとは考えてなかったんですけど。ただ、すごくいいチームだったので、何かの形で続けていきたいなと思っていました。田村監督が、「どうしても映画化したい」と熱い情熱を持って動いてくださって、私のところに話が来たときは、「やることになりました」と。まさか本当に着地するとは思わなくて。ちょっとビックリしながらも、ワクワクして脚本を書き始めました。
——映画ということで意識されたことはありますか?
中園:出演者のみなさんはすごく忙しい方ばかりなので、スケジュールが取れないとか、製作費のこととか、いろんな制約があったんですけど……。今はコロナ禍で、すごく閉塞感があるじゃないですか。だから、思いっきりスケール感を出して、楽しくて、面白くて、ワクワクして、スカッとするような話にしたいなという思いで書きました。映画館にも好きなだけ行けるようになったので、何回でも見に行っていただきたいなと思います。
——そもそも、『七人の秘書』を書いたきっかけは何だったのでしょうか?
中園:私は、7~8年前から、「秘書が活躍する話を書きたい」とずっと思ってたんです。そうは言っても、なかなか実現しなかったんですけど……。これまでも「秘書たちが世の中を動かしている」というような、ボスよりも有能な人たちのことが気になっていたんです。例えば、通訳ができる秘書だったら、自分のボスが間違ったことを言っていたら、違うように伝えたりとか。そういうことを考えていたら、「秘書は権力を持ってないけど、権力を持っている人を自分のスキルで動かせるんじゃないか?」とワクワクしてきて……。
それで、「次の作品は何をやろうか?」と話し合う中で、(テレビ朝日の)内山(聖子)プロデューサーにこの話をしました。そうしたら、内山プロデューサーは元秘書だったんです。それが決め手として大きかったですね。「もう取材もしなくていいんじゃない?」みたいな(笑)。もちろん、取材はしましたけど、いろんなネタは内山プロデューサーにいただきました。
「今は女の友情を信じてる」この年になってわかったこと
——今回の映画では、秘書たちの華麗なアクションシーンも見どころの一つだと感じました。
中園:ドラマの制作現場から、「女優さんたちが『アクションをやりたい』とおっしゃっている」と聞いていたんです。(ドラマの)最終回は、結構アクションを入れたのですが、田村監督にも「アクションを撮りたい」という気持ちがあったみたいです。私も観客目線で、「彼女たちが暴れまわっているのを見たいな」と思ったので、アクションシーンがちょっと多めに入っています。
——アクションシーンもそうですが、『七人の秘書』はそれぞれが自分の特技を生かし合って協力していく姿がカッコいいなあと。ベタベタした付き合いではなく、普段はそれぞれが独立していて必要なときは「手伝うよ?」みたいな関係性がいいなあと思いました。
中園:「女友達は信用できない」「女友達は最後に裏切る」なんてよく言われますけど、まったくそんなことはなくて。男のほうがよっぽど、嫉妬とか、誰かを引きずり降ろしたり、そういうことをするんですよ(笑)。それは、この年になって思いますね。「“女の連帯”って、なんて強いんだろう」って感じますし、今は女の友情を信じています。昔はあまり信じてなかったけど、60歳を超えると分かります。女って本当にいいなって。
——例えば20代とか若い頃はお互い忙しくて疎遠になっていたけれど、ちょっとしたタイミングや落ち着いた時期に友好が復活するということもありますね。ずーっと連絡を取り合っているのだけが友情じゃないというか……。
中園:まさに今、私はそういう年齢なんですよ。みんな子育てとかで忙しくなって、しばらく会ってなかった人たちと、今またグループLINEで連絡を取り合っている。海外に住んでいる仲間もいたりして、本当にいいなと思いますね。この年齢になると、介護問題とかいろいろな悩みがあるんだけど、誰かがそういう経験をしているので、心から励まし合えるんですよね。病気のことでも、誰かが情報を与えて元気づけてくれる。確かに、若いときはうまくいかなかったこともあったけど、この年になると、「本当に女友達っていいな」と思います。
■映画情報
公開日:2022年10月7日(金)
監督:田村直己
脚本:中園ミホ
音楽:沢田 完
主題歌:「Final Call」milet Sony Music Labels
出演:木村文乃、広瀬アリス、菜々緒、シム・ウンギョン、大島優子、岸部一徳、室井滋、江口洋介、玉木宏、濱田岳、吉瀬美智子、笑福亭鶴瓶
配給:東宝
(C)2022「七人の秘書 THE MOVIE」製作委員会
(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子)