コラムニストの桐谷ヨウさんによる連載「なーに考えてるの?」。ヨウさんがA to Z形式で日頃考えていることや気づいたこと、感じたことを読者とシェアして一緒に考えていきます。第33回目のテーマは「G=Gym(ジム)」です。
ジムに通い始めてわかったこと
皆さま、ご機嫌よう! ウートピ読者の皆さまは、ジムに通っておりますでしょうか?
俺の身のまわりでは半々ってところでしょうか。行っている人の場合、男性はマシンを使った筋トレ。女性はホットヨガ系をやってる人が多いかなぁ、という印象です。めっちゃ独断と偏見です。
ジムといえば去年からオンライン・トレーニングも一般化しましたよね。自宅からZoomでつなげて、筋トレをしたり、ヨガをしたり。レッスンをそれなりにリモートでできるようになったのは、かなり革命的だった気がします。が、やっぱり自宅だとサボってしまうみたいですね。結局はジムに行くのが気分も変わるし良い、でも準備や移動や事後のシャワーはダルいね、と。人というのはどんな便利になったとしても、やらない理由が出てきてしまうもんなんでしょう。
ジムといえば三日坊主で会費を払い続けている人が経営を支えている場所……そんなふうに冷ややかな目線で見ていたことが俺にもありました。一方で、本気で継続できている人は体つきから違っていて、なんとなく気にはなっている……そんな位置付けの場所でした。
そんな自分は2021年の10月にジムに入会しました。高校生ですでに帰宅部だったので、本格的に運動をするのは20年ぶりくらいです。おまけに格闘技を始めました。これヤバいでしょ。もともと体力はあるほうなのですが、最初は筋肉痛がバキバキでマジでつらかったです。
コロナ禍でリモートワーク生活を続けるなかで、自宅健康維持派として頑張っていたんですよ。じんわりとストレッチをしたり、散歩で7000歩分は動くようにしたり。あとはバーピージャンプって筋トレでHIIT(高強度インターバルトレーニング)をやったりね。
それでも体がモヤッとしてくるし、気をつけないと睡眠が浅くなってしまう。コツコツとやっていたんだけど、なんとなくスッキリしなくて。こんな人はけっこういるんじゃないかな? それであまり深く考えないで、ジムに行ってみたんだよね。
そこのジムがけっこう当たりな場所でして、レッスンは大きく3つに分けられているんですね。
・ひとつめは、いま一番はやっているHIITが朝イチのタイミングや夕方にあって、仕事前や仕事がダレてきたタイミングでできるということで大人気。
・ふたつめは、ボクシング・キックボクシング・ブラジリアン柔術などの格闘技メニューがマジ半分、コンディショニング半分のちょうどいいガチ感で学べるので初心者も上級者も両方在籍している。
・みっつめは、ヨガ・ピラティスや、それらを活かしたストレッチや体のリカバリーを中心としたメニューで、特に主婦の奥様方に大人気。
これだけでもうたくさんやりたいメニューがあるのに、筋トレ用のマシンも整備されているんですね。俺は使い方がわからないし、人生でまともな筋トレをしたことがないのでマシンは未だ一回も使ったことないですけど。
習い事を長く続けるコツは…
でね、結局は習いごとになると飽きないなーと思わされたんですよ。自分が知らなかった未知のことが、手に負えるサイズ感で渡されることは、ほどよい刺激と張り合いになるわけです。これが大事だったんだな、飽きない、ボケない、ダラけない秘訣だったんだなぁ、と。これは自分が未経験の格闘技をやっているから特にそう感じるのかもしれません。
たとえばジムに行くと小さな課題が見つかるんですね。一例を挙げるとミドルキックって誰でもできるように見えるけど、要素を分解してひとつひとつを身につけないとダメなんですよ。そして、それを繰り返して繰り返して、やっと身につく(頭で考えずに体が勝手に動く状態になる)わけです。
前足を前方にステップしながら、後ろの手を振り上げて、上半身のねじれをつくると下半身がそれについてきて、足を蹴り込むと同時に振り上げた手を一気に下ろして上半身をツイストすることでバランスを取りながら、インパクトする。こういう複雑な動きをささっとできるようになる必要があるわけですね。
で、自主練をして次のレッスンに行くと、今度は微妙にちがうところで他に気をまわさなければいけないことが出てくるわけです。たとえば足を振り上げるよりも先に手を振り上げないといけないのに、それができていなかったりするわけです。変なクセがついてたりね。
1回目から完璧に習得できるものなんかもう全然なくて、コツコツやっていくもんなんですよね。
反面、自宅のストレッチや散歩って課題が見つからないんですよ。手を出しやすいし、確実に身体にも良いことなんだけど、地味で淡々としすぎていて、つまらない。つまらないことなので、精神的にもスッキリしない。そういうことなのかなぁ、と思いました。これは性格とかもあるのかもしれないですが。
自分の身のまわりのセンスがいい人は、面白いほど「習いごと」を始めているのを感じる。健康・美容への投資はもはや当たり前で、その先としての習いごと。それはリモートワークで時間の都合がつきやすくなったことが理想なのは間違いないんだけど、そういう実務的な意味合いだけではなく、この未知のものにふれる機会をつくることの精神的・肉体的な効用を潜在的に感じているんじゃないだろうか。
今回のテーマはジムにしたものの、ジム自体にあまりこだわりはなくて、自分にとって大きいのはジムを舞台にした「習いごと」を始めたことである。この機会にいろんなことをかじり倒してみようかなと思っている次第である。
それはそうと、ジムにおける人間関係っていうのもほど良いよね。そのクラスでしか会わない。ちょっと鬱陶(うっとう)しくなれば、その場から自分が(にこやかな顔をしながら)離れればいい。サンドバッグをたたいたり、マシンを使っていれば、話しかけられることもない。それでいてなんとなく顔なじみができていく。ゆるいつながりの代表のような場所だなーと。そして普段、何をやっているのかまったく想像がつかないのが良いんだよね。職場でも、自宅でもない、いわゆるサードプレイス的な空間の面白さってことだよね。