犬山紙子さんインタビュー 前編

「もう離婚!」と言う前に。パートナーと味方同士でいるヒント【犬山紙子】

「もう離婚!」と言う前に。パートナーと味方同士でいるヒント【犬山紙子】

自分たちで結婚や付き合うことを決めたはずなのに、いつの間にか関係をこじらせて「敵同士」になってしまっている夫婦やカップル。心当たりはないでしょうか? その背景には、二人の間で起こった問題に効果的な対策を打たず、放置してしまったというケースが少なくありません。

コラムニストの犬山紙子さんは、どれだけ円満に見える夫婦にも問題があり、関係構築に欠かせないのは「問題を解決するためのリカバリー力」だと言います。ではそのリカバリー力を、私たちはどうすれば手に入れることができるのでしょうか。

2020年3月に新刊『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』(扶桑社)が発売された犬山さんに、パートナーと味方同士でいるためのヒントを聞きました。

「パートナーと離婚したい」と聞いて考えたこと

——本書は「週刊SPA!」での連載「他人円満」がベースとなっていて、取材期間は3年に及んだと伺いました。そもそも、連載を始めようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか。

犬山紙子さん(以下、犬山):知人から「結婚前は大好きだったパートナーのことが、出産などをきっかけに離婚したいほど嫌いになってしまった」という話を頻繁に聞くようになったことです。私自身はそこまで考えたことはなかったものの、この先夫婦の間に全く問題が起きないなんてあり得ないし、私が嫌われること含め他人事ではない。対処法を知らないと……と思い始めて。

問題を乗り越えた経験者夫婦の声を集めることで、そこで得た知識がワクチンの役割を果たしてくれるのではないかと思ったんです。「備えあれば憂いなし」という感じですね。

——知識が問題の重症化を防ぐ、と。目次を見るだけでも、「夫婦のコミュニケーション編」「不倫・浮気編」や「家事の分担編」、「育児編」「不妊治療・セックスレス編」「パートナーの精神疾患編」と、リアルな夫婦問題の“あるある”が詰まっているなと感じます。

犬山:私たち夫婦の抱える問題も含め、周りの声を拾っていくうちにテーマがぎゅっと絞られて行って全部でこの6章になりました。そのテーマをもとに、「週刊SPA!」の誌面で「こんな夫婦問題にぶち当たったけれど、解決したという夫婦はいませんか?」と募集をかけて。回答をいただいた何組もの夫婦に取材をすると、さまざまなエピソードがどんどん出てくるんですよ。

つくづく世の中には、まさに「夫婦の数だけ問題があり、解決のためのメソッドがある」のだなあと思いましたね。とはいえ、離婚したほうがいいケースもあるので、それについても本書で触れています。

——聞き手である犬山さんの素直なリアクションに、一読者として共感を覚えました。

犬山:私自身も悩める妻の一人だったので(苦笑)、その立場をあえて前面に出すスタイルにしたんです。読者の方にも「もしこの問題が自分の身に降りかかったらどうするのか」というように、自分ごととして捉えてもらいたくて。いざ問題が起こる前に知識を得て、シミュレーションしてもらうことに意味があると思いました。

いい人間であろうとすることで、いい夫婦になれる

——パートナーとの関係改善のヒントって「男女脳で考えよう」とか、「そんな彼なんて捨てちゃえばいい」「離婚も選択肢のひとつ!」といった、メッセージが多かったような気がするんです。その中であえて「リカバリー力」をテーマに書かれたことがすごくいいな、と感じました。

犬山:夫婦にとってリカバリー力って、とても大切だと思うんですよ。何か問題が起こった時に、別々の方向を向いてしまうのではなく、互いに「味方同士である」と認識した上で解決に向かえる力。パートナー同士であろうと、ちょっとしたすれ違いで孤立してしまうものですよね。だからこそこそ自分は必ず相手の味方でいるし、相手も自分の味方でいてくれるという認識のすり合わせってすごく大事だと感じます。この本の中でも、そのメッセージが軸になっています。

——たくさんの夫婦に取材をしたことで、犬山さんご夫婦も関係が強固になったと感じますか?

犬山:そうですね。この取材を始めた頃、私は理不尽な怒りや過剰に甘えたいという感情をコントロールできなくて、カウンセリングに通っていたんです。夫婦関係にも当然不安がありました。でもみなさんのお話を聞いているうちに、「一度問題にぶつかっても、味方同士として乗り越えられた夫婦は、その後何があってもきっと大丈夫」と確信することができて、すごく生きやすくなりました。取材で得られたいくつものヒントが、私たちが夫婦として広い海に漕ぎ出すにあたっての“灯台”みたいに感じられました。

——本に書かれているヒントの多くは、夫婦関係に限らず広く人間関係を築く上で参考になりそうですよね。「いい妻になろう」ではなく、「いい人間になろう」というメッセージが込められているというか。

犬山:そうなんです。どの夫婦を見ていても、「自分がいい人間であろう」とすることで、関係性が結果的にいいものになっているケースがすごく多くて。結局は夫婦だって、あくまで人間関係の一つですもんね。おっしゃる通り、恋人や親友、同僚といったあらゆる相手とのコミュニケーションに応用できるヒントが多いのではないかな、と思います。実際に読者の方からそう言っていただくことも多くて、すごく嬉しかったですね。

「円満じゃないから不倫する」とは限らない

——人間関係の築き方って、実は学ぶ機会ってほとんどありませんよね。何の知識もヒントもないまま、ポンと社会に放り込まれてしまう。パートナーシップなんて最たるもので、いざ問題が起きた時に初めて右往左往してしまうというケースも多い。

犬山:本当にそうですね。私もこの本をつくるにあたり、パートナーシップやコミュニケーションについての専門書を何冊も読んだのですが、そこで初めて「なるほどな」と気づくことが多かったです。例えば不倫って、夫婦関係に綻びがあるから起きてしまうのだとずっと思い込んでいたけれど、実はそうとも限らないと知って。

——本の中でも、「人が不倫の中に発見する最も魅力的なものは、新しい相手ではなく、新しい自分自身である」と専門家の言葉を引用されていましたよね。衝撃的でした。

犬山:夫婦円満かどうかだけが問題じゃなくて、何か自身のアイデンティティを揺るがすような出来事が原因となって、それを埋めるために不倫に走ってしまう人もいる、と。もしかすると、仕事上で大きな壁にぶつかったことだって不倫の要因になるかもしれないわけですよね。そんな分析を読むと、確かに腑に落ちるところもあって。芸能活動をしている人や政治家など、失うものが大きな人たちが、単純に性欲に突き動かされて不倫を重ねるというのも、強引な解釈な気がしますし。

——確かに。知識って大事ですよね。

犬山:今は関係ないと思っていても、もしかすると自分の身に降りかかる日が訪れるかもしれないですしね。専門書を読むまで、「私や夫にいつか好きな相手ができてしまう可能性はゼロではない、その時はどうすればよいのか」という漠然とした焦りがありました。でも関係修復方法や自尊心の回復方法など、さまざまな知識を得ることで、問題が起こってから慌てて間違った対処をするのを回避できるのではないかと。知っていることでダメージを減らすことや先に対策することってできる気がします。恋愛以外で新たな自分を感じることだっていくらでもできますし。

*このインタビューはオンラインで行われました。
*後編は5月26日(火)公開予定です。
(聞き手:安次富陽子、構成:波多野友子)

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