薄井シンシアさんインタビュー 最終回

「専業主婦をやめた時は解雇に近い気分だった」 “給食のおばちゃん”から起業家になるまで

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「専業主婦をやめた時は解雇に近い気分だった」 “給食のおばちゃん”から起業家になるまで

17年の専業主婦生活を経て、娘の大学入学を機にキャリアを再スタート。現在は起業家という異色の経歴を持つ、薄井シンシア(うすい・しんしあ)さん。

薄井さんに、「キャリアの小休止」が本当に人生のデメリットになってしまうのか、話を聞いたこの企画。最終回となる今回は、専業主婦をやめた時のことやウートピ読者へのメッセージをお届けします。

薄井さま追加用2

第1回:自ら専業主婦になると決めたけど、働く友人に嫉妬…
第2回:パート仕事も無理。両立はあえて「しない」と決めた
第3回:今思い描く未来に縛られずに生きる方法

とりあえずやってみる

——全力でやってきた専業主婦にピリオドを打った時のことも聞かせていただけますか?

薄井シンシアさん(以下、薄井):専業主婦をしていた17年間はとても有意義なものでした。朝起きて朝食を作り、夫と娘を送り出し、娘が帰ってきたらその日あったことをおしゃべりする。でも、娘の大学入学とともにその生活は終わりました。

解雇に近い気分だったかもしれません。これから私は何をすればいいのか。目標を失っている時に、娘が卒業したバンコクのインターナショナルスクールのカフェテリアで、“給食のおばちゃん”をしないかと声をかけてもらったんです。

——給食のおばちゃん?

薄井:子どもに食事指導をする係です。必ずしもやりたいことではありませんでしたが「まずはやってみよう」と引き受けることにしました。そこから、カフェテリア全体のプロデュース、運営という仕事も任されるようになりました。

実績より可能性にチャンスを

——その経験がのちに外資系ホテルへの転職の縁になるそうですね。

薄井:はい。日本で就職活動をした時は、その仕事を評価してもらえず、時給1300円のパートからスタートしましたが、チャンスっていつ巡ってくるのかわかりませんね。バンコクのカフェテリアでの働きを知っていたホテルの総支配人が声をかけてくれたんです。

——縁って不思議ですね。

薄井:そう。だから常に種まきをしておくことは本当に大事だと思います。種まきというのはくるものは拒まないでやってみるということ。実は、『専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと』(KADOKAWA)を出した時に勤めていた、ラグジュアリーホテルはもう辞めて、今、起業しようとしているんです。

——え!?

薄井:それで、正社員というポジションが邪魔になってしまったんです。

女性の活躍の中に「専業主婦」があっていい

——夢が見つかったということですか?

薄井:いいえ。夢、やりたいことというよりも、オポチュニティ(機会)と巡り合った。それに対応しているだけです。私の人生で一番大きな仕事は、娘を育てることでした。それをやり遂げた今、あとはもう何でもやりましょうという感じなんです。

——薄井さんならではの感覚ですね。私たちはまだ何かを成し遂げたとは言い切れません。

薄井:そうですね。58歳で、いろんな経験を自分のものにしたから言えることだと思います。多分みなさん、あまりにもオプション(選択肢)が多いから悩んでいるんですよね。でも、それが一番いけない。何でもいいから決めちゃう。そして決めたことで成功する。そこで成功すれば、自信がつきます。その自信が次のステップへ導いてくれます。それが、専業主婦という選択でもいいと思うんですよ。

——というのは?

薄井:今はワーキングマザーが一般的になっていますが、私には30年前の「専業主婦当たり前」とマジョリティが逆転しているだけのように感じるんです。多様性と言いながら、専業主婦という選択肢が選びにくくなっている。それって変じゃないですか?

それに私、ワークライフバランスという言葉が大嫌いなんです。バランスっていうと、細い平均台の上を歩いているみたいでしょう。体操のプロだって落ちちゃう時があるじゃないですか。自分の人生がずーっと平均台の上なんて嫌ですよ。私はもっと広いところで歩きたい。

両立を無視してどちらかに集中したっていい

——「広いところ」で歩くにはどうしたらいいですか?

薄井:自分で決めたことなら偏っていてもいいということです。私は17年間専業主婦をしていて子どもしか見ませんでした。じゃあ今ワークライフバランスが取れているかというと、全然ないですよ。仕事をしているか事務作業をしているかという感じで、家の中でご飯なんて作っていないし、作ったとしても自分一人で食べる簡単なもの。時々、「あなたは仕事ばかりで趣味がない」と言われるけど、刺繍はコンペに出せるくらいやったし、折り紙だって専門家に負けないくらいやりましたよ(笑)。

なんでもずっと続けなきゃいけないなんてことはないでしょう。自分の人生で100年同じことを続けるなんて退屈でしょうがないと思いません?

——確かに。最後に、いろいろなオプションの前で悩んでしまうウートピ読者に向けてメッセージをいただけますか?

薄井:読者のみなさんはうちの娘と同じ世代なんですよね。私、娘にはつねに逃げ道を用意することを意識していました。彼女はすごく頑張りやで、自分にプレッシャーをかける人だから。「そこから降りてもあなたは大丈夫よ」と。

今の20代、30代の人たちってかわいそうだなって思ってしまうんです。というのも、社会も企業も口を開けば、「結婚して子どもを産んで復職しなさい」ばかりでしょう。いかにもそれだけが選択肢であるかのように。

私は専業主婦(夫)というオプションは、男性にもあっていいと思うんです。17年間子育てに専念して私は本当に幸せだったし、夫にもその幸せを感じて欲しかったから。

もちろん仕事が好きで頑張っている人はそのままでいい。今やめたら復職できないんじゃないかという不安でなんとなく働き続けている人。そういう人たちに対して私は言いたい。「大丈夫ですよ」と。元の仕事には戻れないかもしれないけれど、世の中にはいろんな仕事がある。ゼロからのスタートは失うものが何もありませんから、開き直って最初の1歩を踏み出す勇気を持てたらいいと思います。

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【薄井シンシアさんの著書はこちら】

専業主婦が就職するまでにやっておくべき8つのこと(KADOKAWA)

(取材・文:安次富陽子、写真:青木勇太)

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