今、大きな社会問題になっている、ブラック企業。アディーレ法律事務所の篠田恵里香(しのだ・えりか)先生いわく「働く側もブラック企業かどうかを見きわめられるようにすることが大事!」とのこと。
そこで今回は転職を考えているアラサー女性の皆さんへ、うっかりブラック企業に入らないためにチェックしてほしいポイントを伝授!
<今回のポイント>
【1】入社を考える前に必ずチェック! 残業・異動・休暇
【2】女性が働きやすい企業の見分けかたを教えて!
【登場人物】
サチ(30)
激務な広告代理店で営業をしている30歳独身、彼氏なし。Facebookで数年前に結婚報告をしていた友人たちが、最近続々と出産報告を始めてモヤっとしている。将来のことも考えて、転職をしようか考え中。
過労で倒れた金なし彼なしOL、反省する
目を覚ますと、お昼過ぎだった。連日のオーバーワークのため昨日とうとう過労で倒れ、病院に運ばれたのだった。田舎から母が来てくれたのか、ベッドの横の椅子には私の着替えや新品のタオルが置いてあった。窓から射す光がまぶしく、まだぼんやりする頭で、「そういえば今朝方やたら転職を勧める妖精の夢を見たなぁ」と思う。はあ……本当に疲れているみたいだ。この年で親にこんな心配かけるのも終わりにしたい……。真剣に転職考えなきゃ……。
転職前に必ずチェックしたい残業・異動・休暇!
「調子はどう?」
「……えっ? お母さん!?」
「あなたも慣れないわね。私よ、私。エリカちゃん! あなたの足元にいるわ!」
「うわっ……痛たっ……」
「あまり動かない方がいいわ。腰のあたりも打ち身になってるって」
「ゆ、夢じゃなかったんだ……。あ、もしかして私、まだ眠ってるのかな……」
「まあ、この際どっちでもいいわよ。今朝の話の続きに来たわ」
「はあ……」
「ねえ、サチちゃん、ちょっと前から転職については考えてたんでしょ? 具体的には動いてるの?」
「ううん……。何を基準に会社を選んだらいいかわからなくて。一応今やってることが生かせるように、同じ業界でって思ってるけど」
「そうねえ。働き方にもいろいろあるし必ずしも正解があるわけではないけれど、こうやって倒れた以上、なるべくブラックな体質の会社は避けてほしいわね」
「うん……」
「会社に入る前に最低限チェックして欲しいポイントがあるわ。残業・異動・休暇! この3つよ」
「……なんか、意外と普通」
「あのねぇ! あなた今の会社入る時にこのへんちゃんと調べたの!? あなたの会社、みなし残業よね?」
「みなし……残業……?」
「ほら、わかってない! みなし残業制度っていうのは、実際の労働時間の長い短いにかかわらず、あらかじめ取り決められた時間分の残業代を支払うっていう制度よ。一般的に多いのは、残業代が給与に含まれてるってケースね」
「……それって、実際働いてなくても残業代もらえるってこと?」
「ほーんとお気楽な人ね! そもそも定時で退社できる会社がみなし残業制なんて取り入れないでしょ。実際のところは、みなし残業分以上働いたのに残業代がもらえないとか、休日出勤の手当てなど本来は別に支払わなきゃいけないものも一緒くたにされてしまうとか、トラブルが多いの」
「な、なるほど」
「だからもし気になる会社がみなし残業制の場合、何時間みなし残業時間を設けているかはマストチェックよ! それにみなし残業代を除いた給与が最低賃金を下回っていないかも確認したいわね」
「勉強になります……」
「その他に、入社してみたらいきなりとんでもないところに飛ばされた、なんてトラブルもあるわ。異動や転勤の有無についても前もってきちんと調べておくのよ」
「そっか。つい都内で働くものだと思い込んでたけど、気をつけなきゃ」
「それに休暇も大切。有給休暇はもちろん、産休や育休の制度もきちんと定められているかチェックするのよ」
女性が働きやすい企業の見分け方って?
「一応うちの会社も産休や育休の制度はあるんだけどね……」
「あのね、今どき産休・育休の規定がない会社なんてマジでやばいとこよ! 問題なのはそれがちゃんと使われてるかってところ。利用しにくい雰囲気があったら意味ないでしょ」
「う、うう……」
「実際にどれだけの数の人がそういう制度を利用したか実績がわかればベストね。他にも事業所内に保育所があるかどうかもチェックした方がいいわ。長く勤めたいと思うなら、万が一あなたが結婚して子どもを産むことがあった時のことまで考えるべきね」
「万が一……」
「最近では『イクボス宣言』しているかも働きやすさの目安になるわよ」
「『イクボス宣言』って何???」
「イクボスっていうのは、男性の従業員や部下の子育てに理解のある経営者や上司のこと。そういう人たちが「自分はイクボスです」って宣言すれば、イクメンも、もちろん女性も産休・育休を取りやすくなるでしょう」
「確かに! 産休・育休はもちろん、子育てに興味もなかったからそんな言葉があることも知らなかったよ」
「単純に女性の従業員数も参考になるわよ。一定年齢以上の人が少ないとか、そもそもほとんどいないとかになってくると、女性が働きにくい原因があるのかもしれないわ」
「そっか……なんだかホラー……」
「セクハラ窓口がきちんとあるかも大切。これはちゃんと対策をしなきゃいけないって会社に義務付けられてるの。もしなかったらそれこそホラーよ! その企業に行くのはオススメできないわ」
「ふむふむ。でもこういうのってどこで調べればいいの?」
「コンプライアンスについては企業のホームページで公開しているところが多いわ。もし勤めることになったら、最終的に就業規則や「セクハラ防止指針」といった内部文書でもきちんと確認するべきね」
「入社するときは自分に関係ないって思ってたことが、年を取ると他人事じゃなくなってくるね……」
「ふう……しゃべりすぎて疲れちゃった! 今日はこのへんにしときましょうか。もうすぐあなたのお母さんも戻って来るわ」
「あ、うん! 知り合いでもない私のために……ありがとう」
「これが仕事なの! まあ、これに懲りたらちゃんと転職活動することね。また機会があったらお尻を叩きに来るわ」
「うん。待ってる!」
そうしてエリカちゃんは私のベッドの上をトコトコと歩いて、端まで来ると窓へふわっと飛び移った。そして窓を開けると、チラリとこちらを振り返りお大事にとウインクしてそのまま去っていった。と、飛んだのだろうか……。そういえば羽、生えてたな……。何はともあれ、ちょっと寝たほうがいいみたいだ。これから忙しくなりそうだし。
【1】入社を考える前に必ずチェック! 残業・異動・休暇
これから入ろうと思っている会社があるなら、最低限、残業・異動・休暇についての規則はチェックすべし! 特に残業は、みなし残業制度の場合トラブルに結びつきやすいから気をつけて。
【2】女性が働きやすい企業の見分け方を知って!
育休・産休が実際に使われているか、事業所内に保育所があるかはチェックしておきたいわね。女性従業員数や年齢を見ても、そこが女性にとって長く働ける会社なのかわかるわよ。
エリカちゃん(永遠の30歳)
「六法全書」の妖精。本名はオピストコエリカウディア・スカルジュンスキィ。辛口で正論をバシバシ言うが、困っている人は放っておけない姉さんキャラ。神様から派遣され、困っている女性のリーガルマインドを鍛え直している。